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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-14 無名の村の総大将
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楊堅からの話と勾玉

「取敢えずはコレで契約成立だ。後は死んでから魂を依代に移して……というよりもお前達に輪廻転生の概念があるのか?」

「我輩は百足の妖かし故、死んだ後は霊魂に成って彷徨う状態だった。髑髏のは骨が朽ち果てるのみで元から霊魂の様なものだ」

「幾万の骨が身体の構成をしているって事か? てことは、今の身体はどこの骨だ?」

「今の我が身体は、あの山にて朽ち果てた動物や魔物、人の物を使って保った物。コチラに来てからは朽ちるのみ、新たな骨は接いで無い。人骨よりも、魔獣の骨が一番身体に馴染む様だ」


 翌朝、大百足と餓者髑髏との契約を成立させた俺は、2人に話を聞いていたのだが、どうやら大百足は防御力と幾ばくかの毒性を得たらしい。だが、餓者髑髏は変化が顕れず、どうにも骨や爪等を身体に取り込む方でしか能力が上がらないらしい。

 ある意味、黒曜のスキルの下位互換というべきだろうか?


 魔獣の骨程度であれば用意は簡単だし、竜種の牙や爪ならば、数日は遠征するとして確保は出来る。

 問題は、魔獣とした場合ギルドに登録を出さないといけないのだが、そのまま符術として扱う方が使い勝手が良く、登録する手間もかからないと言う五郎左衛門の話で方針は確定した。


「……今の方で終わりかな?」

「そうですね、あの者の名前以降はありませんね」


 そして、正午を過ぎた頃、歩いて来た村人の列が消え、何かしらの犯罪をした者の転生も事無く終わりを迎えた。

 既に、エウリシア神とカミナは民家の訪問に五郎左衛門と彦左衛門さんと共に向かっている。

 俺は庭の道具を片付けを行い楊堅さんに死返玉(まかるかへしのたま)生玉(いくたま)を返す用があったし、俺にはエウリシア神の真似は出来ない為する事がないのだ。


「お疲れ様で御座いました。現人神様、楊堅様からお話が御座います。此方へお願い致します」


 庭の片付けが終わった頃、一人の白狼天狗が呼びに来た。楊堅さんが話があるらしい。

 玉を返すのに丁度良かった為、俺は後ろを歩き目的の部屋に向かう。道中に部屋を覗ける場所を通ったが、そこには楊堅さんと二人の子供の姿があった。

 此方からだと後ろを向いている為、子供の顔が見えないが、一人は腰まである長い金髪と狐耳が有り、見た感じモフモフしている尻尾が九つ生えている。

 もう一人は、同じく金髪だが短髪で腰の位置に小刀を備えていた。二人とも見たことが無いが楊堅さんの顔は微笑んでいる時点で親戚や縁のある者なのだろう。


「楊堅様、現人神様をお連れ致しました。よろしいでしょうか?」

「えぇ、構いません。さぁ主殿、お入りください」

「あぁ、失礼する」


 襖を開き中に入ると、卓座に座る楊堅さんの姿があった。既に子供達の姿は無く、大方この部屋に来る前に別の部屋に行ったのだろう。


「話があると聞きましたが、その前にコレを返します」

「おや、死返玉(まかるかへしのたま)生玉(いくたま)ですね? 此方は現人神様に奉納させていただきます。それに私が持っていても使えませんからね」


 たしかにこの勾玉を扱おうと思えば、霊力は必須になるだろう。

 霊魂の善悪を確認する際に使ったが、本来の使い方は死者を蘇らせる玉と活力を与える玉である。

 この世界には蘇生術自体が無く、神の力として創造神のみが扱える物とされている。……教義上でだが。


 実際には、原初の魔導書(ゼロ・グリモワール)に蘇生魔術が記述されている。蘇生魔術という名だけあり、構築する魔術式が出鱈目な程多く、どれだけ早くても全てを構築するだけでも3日は間違いなく必要な術だった。

 まぁ、コレを扱うのなら死霊術を使ったほうが幾らかマシだ。なんせ術の構築時間を考えても、直接的に魂へ依頼して術を行使するだけだから殆どノータイムで発動出来る。死霊術の中身によるが、契約すれば人としての死は望めなくなるが、ある種の転生に近い物ではあるだろう。


 まぁ、良い。勾玉を貰えるのならば、断る理由は無い。

 だが、恐らく奉納とは言うが、実質依頼報酬と考えておく方が良い筈だ。

 何せ、部屋の中の人数は二人だが、気配は4()()()あるのだから、そう考えなければ話などしないだろう。


「話は聞くが、一体どんな内容だ? 一応だけどこの後は別の国に行って巨大烏賊の討伐とか色々あるから、ここに留まるって話なら断るぞ?」

「おや、それは残念ですね。仕方ありませんが、それは諦めましょう。変わりにこの村の子達を連れて行ってくださいませんか?」


 そう言って渡されたのは二本の小さな煙管(キセル)だった。黒漆塗りの羅宇(胴体)に金細工が施された吸口と雁首というシンプルながら高級品だと分かる一品だ。だが、触れることで分かることもある。


(クダ)ですか? それも産まれたばかりの」

「……えぇ、お願い出来ますでしょうか?」

「……理由を聞いても?」


 渡されたのは、唯の煙管ではなく“管狐(クダギツネ)”と呼ばれる狐の妖かしだった。


「その子達は、前任の飯綱使いが亡くなった後産まれた子達でして、今回の件で蘇りましたが、既に73匹の子達を見ています。時が経てば何れ75匹になりますが、今ならまだ対処が出来ますので、現人神様である主殿にお願いしたいのでございます」


 管狐は増える事でも知られるが、最初は裕福になり最後は喰い潰されるという話がある位に厄介な性質を持っている妖かしだ。

 その変わり、術者の力によってはかなり使い勝手の良い式神と成るので、此方としては悪くない話だった。


「この管に名はありますか?」

「いえ、名は付けておりません。主殿にお預けする為に産まれたばかりの子を貰ったのですから」

「そうか、だが良いのか? そこの二人は」

「「!?」」 

「ほら、言ったでしょう? 貴女達の気配なら感じ取れると」


 楊堅さんが気配がする天井に話し掛けると、板を外して先程見かけた二人が降りてきた。昔小さい頃に沙耶が同じ様な事をして部屋の行き来をしていたことを思い出したが、二人は何故、上に居たのだろうか?



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