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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-14 無名の村の総大将
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蘇るは……

 フラクタルと村の中心で点滅した光は、徐々に収縮していき柱となって消える。

 時間にして、ほんの数分位だが消えた直後から変化が始まっていた。


「おい、どうなってんだ? 俺達の身体に何が起きてる!?」

「確かに身体は朽ち果てた筈なのだがな? 不思議な事も在るものだ……山本の五郎左衛門まで居るとは、思わなんだがな」


 天から響く様な声が聞こえ、その方角を見据える。

 そこには、山を抱え込む様な姿勢で此方を見る巨大な髑髏と、大百足の姿があった。

 俺自身、実物を見るのは初めてだが、この二体には覚えがある。かの有名な餓者髑髏(がしゃどくろ)と大百足で間違い無いだろう。


 餓者髑髏は、瀧夜叉姫が操ったとされる髑髏の妖かしで、戦死者や野垂れ死にした者といった、埋葬や弔われなかった死者たちの骸骨や怨念が集まって巨大な骸骨の姿になったとされる。

 大百足は俵藤太物語に登場する百足の妖かしだ。こちらに関しては、大蛇に助けを求められた俵藤太(藤原秀郷)が退治したとされる物であるが、何方も共通するのが、平将門公に関する妖かしだということだろうか。


「おおぅ、テメェ等!! 声がデケェから姿を縮めてコッチ来いや!」

「百足の、行くか?」

「髑髏の、行くか?」

「行こう」

「行こう」


 五郎左衛門の声に反応する様に、互いが頷くと姿は小さくなり、やがて空から牛程の大きさはある百足と髑髏が降ってきた。

 だが、これで終わりでは無かった。

 この二体には、この村に彷徨う霊魂では無い。そもそも反応すらなかったのだから、知りようがないのだが、さっきから知らない反応がそこかしこから感じられるのだ。

 更に厄介なのが、俺の手に握っていた死返玉(まかるかへしのたま)生玉(いくたま)が、餓者髑髏達の現れた時に、光を放っていたのも気になる。急いてエウリシア神に確認することにした。


「エウリシア神? 何がどうしてこうなったのか分かりますか?」

「……っ…い…しま…た」

「え?」

「失敗しました! ちょっと鼻が痒くってクシャミしたら、込めてた力を失敗しました!! だから細かい作業とか苦手なんですよ!!」


(まさかの神様逆ギレかよ!!……駄目だ、落ち着け。良し、良し)


 いきなりの大声で吃驚したが、心を落ち着かせて対応しないと、この後更に被害がでないとも限らない。先ずは此方が落ち着くことが大事だ。


「エウリシア神、餓者髑髏と大百足は恐らくですが、フラクタルに向かった光の線上に本体と霊魂があったと考えられます。あの飛んでいった光にも、輪廻の輪に乗るための物と魔力を扱う為の力があるんですね?」

「……えぇ、そうです。多分関係ない魂まで一気に蘇生か転生してる筈です」

「仕方無い、私が偵察してきてやろう。エウリシア、ふくれっ面も良い加減にしておけよ? 自分のミスは自分で片付けるのが大人だ。 お前は神なのだから、尚更そうせねばいけないだろう?」

「……うぅ…だって、せっかくのチャンスなのに……」


 何だかカミナと、エウリシア神を見ていると手の掛かる妹を見る姉の様に見えるのは、見た目年齢の差もあるんだろうなぁ。と思いつつも、カミナと、エウリシア神を庭から屋内に移動させた。

 流石に大百足と餓者髑髏を見た者達は驚き腰を抜かす者も居た為、一度落ち着いてもらう必要がある。このままでは他の人達の転生も難しいので、楊堅さんに後を任せると、俺は大百足達の方へ近付いた。


「何とも言えぬ力だが、悪くは無い」

「うむ、寧ろ向こうの世界で力を振るっていた時よりも良いかもしれぬ」

「であろう? だから、主等も仕えてみねぇか? 現人神で一国の王に成りそうな面白ぇヤツに」

「そうだな……髑髏の?」

「悪く無いな……百足の?」

「「面白そうだ。一口乗ろう」」


 大百足達の所に辿り着くと、何やら盛り上がっていたが、俺に聞こえたのは「一口乗ろう」という部分だけだった。一体何をするつもりなのだろうか?

 大きさが規格外な妖かし二体と魔王の談合なんてのは、とんでもない話になりそうで怖いのだが……。


「カッカッカ!! 愉快、実に愉快なものよなァ? そうは思わぬか、主よ?」

「いや、何をしてるのかと思って来てみたら、本当に何やってるんですか、山本さん? 今来たばっかでわからないんですが……」

「ンンッ、五郎左衛門で良いぞ、儂のほうが立場が下なんじゃから。それと1つ忠告しておくとじゃな、家臣に敬語やら謙る態度は、他の奴からナメられる事になるぞ? 特に、爵位が上がる程に周りから色々な方面で、漬け込まれる事になりかねん。今は年も幼い故、常に毅然としろとは言わぬが、大勢に見られる場での立ち振る舞いは、しっかり覚えておくとえぇ」

「……分かった。なら、これからは五郎左衛門で通すよ。それと、一応の形だけど外での立ち振る舞いは身に付けてある。まぁ俺には結構向かなくてね、駄目な所は指導してくれ」


 敬語はやめて五郎左衛門に話しかけると、その顔には何処か嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 その表情は、何処かマノンを見ているときに近い気がするが、同じくらいの見た目だからだろうか?


「化けの皮が剥がれん位には、化けさせてやろう。戦闘技術も合わせてのぉ」

「变化が使える妖かしだけにってか?」


 まぁ、他国に出向いた際に、今の所問題になってない所作であっても。子供だから許されている範囲があるかも知れないし、当然扱えなければ馬鹿にされるのは俺だけじゃないのは目に見えている。学院でもマナーの授業が必修科目にあるくらいだから、グランドマスター時代の本場仕込みとなれば、それなりに誤魔化しが利くだろう。


(っと、そうじゃない。今はこの妖かしの事をどうにかするのに来たんだ)


「五郎左衛門の、あまり話を取らんでほしい。この者が(あるじ)なのだな?」

「随分と小さいな? それに中身がチグハグだ。まるで山本を小さくしたみたいだぞ?」


 所で餓者髑髏と大百足は俺を見ながら何か考えているようだが、一体何の話をしているのだろうか?

 というよりも、中身がチグハグって言った大百足は随分と勘が鋭い様だ。


「山本を式神にしたのなら我等を式神にするのも容易に出来るのだろう? 力を維持出来ずに地下に潜り朽ち果てたが、同じ様に力を得た山本が、此処まで力の差が出たのは式神となったからと言うた」

「ならば、我等も五郎左衛門の主と契約を行えば、過去の力より強い力を得られるのだろう?」

「確かに、式神として契約は結んだが、双方に利益があるからこそ結んだようなものだ。他の式も力は上がるが、思業式神と擬人式神を改良した形で、本人の意志があれば人の姿を取ることも出来るし、力は俺の能力を本来の持つ力に追加する様な物にしているから、そちらでも良いなら契約しても良い。五郎左衛門は調伏してからの式神化だったから、殆どが俺の魔力と霊力で作り直した形に近いし、それまでの鍛錬も式神化した時の力に影響されてるんだと思う」


 正直な所、山本五郎左衛門という魔王を式神として使役することになるとは思いもしなかったが……。

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