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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-14 無名の村の総大将
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玉藻の復調

 今、俺は霊力を玉藻様に移し、予後を確認しているのだが、どうにも霊力が合わないのか尻尾の色がおかしな事に成っていた。

 何故かは分からないが、身体と尻尾にそれぞれ呪印が浮かび上がり、肉体年齢は山本さんと同じ位に若返り、更に霊力以外に魔力を取り込み始めていたのだ。

 見た目は中性的な男性であるが、面長顔で整っている。

 髪は残念ながら傷んでいるようだが、整えればそれこそ薄命の貴公子と言っても、差し支えないだろう。


「すみません。ちょっと状態の確認をしたいので、そのままでお願いします」


 複合解析(マルチアナライズ)を使い状態の項目のみ確認を行うと、何とも言えない結果が目の前に表示された。


【名前】玉藻楊堅(ようけん) 【種族】稲荷空狐・破壊神の使徒の眷属 【状態】正常


(いやいや、眷属って何? 待て待て。何故かは知らんが余分な項目が付いた原因は何?)


 正直な所、どうしてこうなったのか分からない。

 普通に人助けの感覚で霊力を分け与えただけで、式神にする気もなければ、何かしようとも考えていなかった。


「成程……意外と眷属に成るのは、コチラ側に意思があれば容易に行えるのですね? コレは予想外でしたが、御恩が返せるというものです」

「いやいや、此方としては眷属化って予想外のものなんですけど、玉藻様? 今、コチラ側に意思とか言いました?」

「ハッハッ、主殿、私の事はこれから楊堅とお呼びください。それと、質問の答えですが、確かにそう言いました」


 式神としての契約はまだ分かるが、眷属にするのは全く理解出来ない。

 一体どういう仕組みでこうなったのだろうか?


「ふむ、どうやら主殿は我々の在り方をご存知無い? となれば、説明を簡単に致しましょう。信奉者とでも言えば良いでしょうか……主殿を私の神として崇め、奉る事を誓い霊力を受け入れたのですよ。元々霊力が高い事もあってか、本来なら三千年生きなければ至れぬ境地にあった空狐に千年程度で到れたのですが、油断して怪我で倒れた所を十兵衛様に拾われました。その後この場所を護る為に色々調整したりして、主殿と巡り合った訳ですな!! 死にかけの身体を辛うじて繋ぎ留めて正解でしたハッハッハ!」


 普通なら笑い事じゃないんだが、この楊堅もかなりぶっ飛んでる様だ。

 まぁ、今考えても仕方が無い。エウリシア神を連れてカミナが戻ってくれば、多分だけど眷属化もどうにかなるだろう。……なるよな?


「まぁ、良いです。眷属云々は一度置いておいて、先ずは自己紹介を含め、ここに来た経緯を話します。手紙に記していた通り私は、この村を含む土地を領地とする事に成ったルーク・ラーズ・アマルガムです。今回、私の式と成った五郎左衛門がこの村の出身であり、里帰りしたい事と統治するに当たり話をつけると言ってくれたので、この村に来ました。問題はこの村には霊魂が多すぎますから、何とかしたいのでその事を山本家に頼み、ちょっとした厄介事が出た際の抑止力としてここに来た次第です」

「手紙に事細かく書いてありましたので、城主様として考えて理解できましたが、()()()()()()実に面白い御方だ。改めまして、私の名は玉藻楊堅。見ての通り九尾の狐ではありますが、主殿のお陰で稲荷空狐という別の種族に成った者です。お陰様で魔力とやらを体内に取り込める様に成り身体が軽く成りましたよ」


 ニコッと笑う楊堅さんは、足や手を動かし感覚を取り戻そうと動いていた。寝たきりが長いので褥瘡が出来てないか気になる所ではあるが、どうにもそういった感じが無い。その上、どことなくだが、生身の身体とは思えない節がある。


 普通なら肉体が衰える事はあっても、消えかけたりする事は有り得ないと言っても良い。

 体ごと霊魂化しているのであれば、姿が見えていようがそこにいるのは幽体という事になるのだが、目の前の布団が盛り上がっている。つまり実体があるのだ。


 スケルトン等の取り憑く形で実態があるもの以外で、実体のある霊体など聞いたことがない。近しいもので言えば、精霊が似た状態ではあるが人から精霊に転じた現象は聞いたこともない。

 とは言え、ここの住民全て霊魂として彷徨って居る事を考えると、何かしらの地理的、若しくは環境的要因による影響があるのかもしれないが……。


「主殿が何か考えているようだが、稲荷空狐とは神狐と呼ばれる種族です。肉体を解き放てばこの様に……どうですかな?」


 そう言って楊堅さんは、右手を翳すと少しずつ透け始め最後には全く見えなく成っていた。


「凄いな……」

「フフッ、稲荷空狐はそもそもが肉体を持たない……この世界で言うところの精霊に近い存在です。どこにでも現れ、姿を消す事も容易に行える上、膨大な霊力を携えた存在というものですが、村の統治には十二分な力でしょう。とは言え、元々護り専門ですから結界術や治癒術しか扱えないのが情け無い所ではありますねぇ」


 確かにこの村を護るだけに留まらず、その気になれば領地を丸ごと囲えそうな力の奔流が楊堅さんの身体から溢れている。

 仮に、結界術と治癒術専門であったとしても、衰弱しきった状態で維持していた結界は山本さんの力で漸く破れた程だ。防衛に関して言えば、恐らく破られる事はそう無いだろう。


「そろそろ動きますか? 表が随分と騒がしくなっていますよ主殿? 一体何をなさるおつもりで?」

「ん? あぁ、村中に伝達が済んだようですね。今まで魔素を取り込めなかった人達を救済する手段があったのでね、亡くなった人を含めて霊魂で留まっている皆さんに可能な限り、第二の人生を歩んで貰おうと思ってます」



 ━━出立前にカミナにした願い事。


 それは、ある意味で世界のあり方を覆す方法だが、()()()()この世界に生まれ、若しくは転移した人に当て嵌まらない抜け穴を使った方法だ。

 こちらの世界に意図せず迷い込み、魔力循環や転生の輪に乗る事の出来ない霊魂として彷徨う者に、救いの手を差し伸べるのは、当然の事だが創造神の力で無ければならない。


 となれば、転移や転生の事に関してはエウリシア神のお仕事なのだから、彼女にしてもらわなければどうにもならない。例外として死霊術師(ネクロマンサー)や式神化といった方法もあるが、前者は子を成すことが出来ず、後者は術者の場合は本来なら、子を成すことが出来無い筈なのだが、ツクヨミ様の加護として貰ったスキルだからか、自立している場合に限りどうやら子を成すことが出来るらしい。とは言え、其れだけの数と式神契約しても扱いきれない。


 だからこそ、エウリシア神に丸投げする事にした。

 村の中に入って感じた気配は、全て霊魂の存在で成仏も出来無いのだから、完全に破壊するか手を加え転生させるしかない。だったら、もう一度生きるチャンスがあっても問題ないはずだ。


「そろそろ動き出す。転移しますから、空間が繋がったら向こう側に行きましょう」


 俺と楊堅さんは転移を使用し山本家に移動を行った。

 奇しくもタイミングが合ったのか、カミナとエウリシア神の力が空間を抜けた際に感じられた。

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