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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-13 いざ、夏季休暇の遠征
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蠢く肉塊の変貌

「さてさて、気持ち悪い光景が眼下にあるワケだけどさ?」

「そうだな」

「どう動くか分かりませんなぁ?」

「だよなぁ……動くんだろうとは思うけど、どうなんだろう?」


 深く窪んだ地形のど真ん中に、触手の生えた肉塊が蠢いている。

 遠目で見てもかなり大きい部類のコレが、一番小さなものだと言うのなら、最大サイズはどれ程大きいと言うのだろうか?


「魔素と瘴気は此処まで上がって来てないけど、恐らく何処から漏れ出てる結果が、フラクタルや幽結晶の森の異常の正体だろうし、とりあえず威力偵察しとくか……」


 異空間収納から魔導銃を取り出し構える。

 目標から放たれる攻撃の範囲や動きが分からない以上、迂闊に近寄るのは得策では無いが、このまま膠着状態になっても埒が明かない。


「━━詠唱省略【創作(クリエイト) 水晶人形(クリスタルゴーレム)】」


 魔導銃に装填した弾に、ゴーレム作成の魔術付与を行い放つ。

 目算で50m程度の位置に有った紫水晶に弾は穿たれ、魔術が発動する。

 水晶の塊から変化させていく姿は、俺が思い浮かべた通りに徐々に人の姿へ形を変えながら、そのまま肉塊へと近付いて行く。

 そして、肉塊の手前まで近付いた所で停止した。


「よし、━━【視界共有】」


 水晶人形の頭部に眼を模した物を想像して作ったからか、自作魔術の1つ視界共有の効果が現れると、その位置に視点がリンクした。

 さながらロボットアニメのモニターの様ではあるが、これで間接的に肉塊を視認しながら調査出来る筈だ。


「……此処まで近寄っても反応は無いか? 創世の時代から残された遺物とは言え、何かしら反応があっても可笑しくは無いんだがなぁ?」


 ゴーレムの手だから触れても感覚は分からないが、かなり粘着質な体液らしき物が腕に纏わり付く。

 可能であれば、そのまま身体の一部を採取して置きたい所だが、先ずは強度やどういった動きをするのかを確かめなければ話にならない。

 ゴーレムの右腕部を思いっ切り振りかぶり、肉塊に打撃を叩き込む。


「━━ッ!! 試しに手加減無しで叩き込んだけど、全く駄目っぽいな?」

「打撃音は聞こえたが、多少位置がズレた位か?」

「……それだけじゃ無いっぽい。どうやら眠れる獅子を起こしたかも知れない」


 一見して、ゴーレムの腕が肉塊を抉る様に貫いた様に見える。

 だが、変化は直ぐに訪れた。

 肉塊は、その穿たれた穴を広げながら無数の触手を吐き出す様に蠢き、粘液と共に新たな触手が溢れ出す。

 そして、ゴーレムを呑み込もうとするかの様に蠢きながら触手を絡め始めていた。


「動きは素早く無いみたいだけど、結構……力が強い、なっ!!」


 咄嗟にゴーレムの腕を切り離しながら、蹴りを入れてその場を離れる。

 流石に本体自体が直接の移動は出来ないらしいが、そのデメリットを触手の腕がカバーしているのだろう。

 見る見るうちに肉塊を中心として、触手が蠢きながら姿形を変えていく。


「━━あぁ、そう来たか? 全くもって度し難い。とは言え、英雄の伝承には総じて良くある話でもあるか」

「竜狩りの伝承で御座いますなぁ……然しながら異形の竜とは、ルーク様はどうされるのでしょうか?」


 カミナとルーカスは手を出す気は無い様子からは、酒でもあれば見世物として肴になりそうな雰囲気だ。

 本来の対魔物戦とかならば、錬成したゴーレム用の武器なり早期殲滅を行う所ではあるのだが、此方としては、情報も無い過去の遺物だからこそ少しでも情報が欲しい。

 複合解析を掛けたものの、【Unknown】と言う結果しか目の前に表示され無いのであれば尚の事だ。


「とは言え、じっくり調べる時間は無いみたいだよなぁ……危ない! あークソっ!! もう駄目か」


 距離を離した途端に肉塊だった物は行動に変化が生じる。

 頭部らしき肉塊が、胸部位置の触手から生え出て来たかと思えば、その位置が変わり双頭の状態へ姿を変える。更に全身から薄靄を吐き出し、周囲の空間にある物を溶かし始めていく。

 恐らくは腐食毒か、それに準ずる毒薬液が霧状で散布さたのだろう。

 ゴーレムの身体が、コントロールを受付無くなり動かなくなった感じから、恐らく魔力阻害か、魔素毒のどちらか含まれている可能性が高いが、どちらにせよ生身の状態で近寄るのは無理がある様に感じられる。


「仕方無いか……明鏡止水━━天叢雲」


 流石にこのままでは埒が明かない。

 明鏡止水を引き抜き、そこから天叢雲へと昇華させる。


「━━ヤッ!」


【多重結界】【空脚】のスキルを使い、一気に下層に降りる。


「……腐食毒と魔力阻害は違うみたいだな? 別の毒やらは無い様だが……かなり濃い魔素毒か」


 ゴーレムのコントロールが効かなくなったのは、高濃度の魔素が魔力パスを拡散、霧散させて阻害していた様だ。

 離れれば離れる程に、魔力パスは長く薄くなりやすい為、ある種当然の結果だとも言えるが。


「取りあえず、此処までは何とか大丈夫そうだけど、見た事が無い双頭の竜を狩らなきゃいけないのは……随分と、骨が折れそうだ」


 多重結界を限り無く薄く張り、暗殺術の初歩、足掛かりになるスキル【隠形】コレで気配を消して、双頭竜に近寄る。

 威圧感が凄いが、此方の方には気付いていない様子だ。

「暗殺術を学んでおいて良かった」と内心思っている反面、近づくだけで声を出す事も相手の急激な動きに対応する事も出来ない状態と言うのは、かなりキツイ。


 ズルズルと重たい躰を引き摺り、双頭竜は攻撃した何かを探す様に、首や尾を身近な水晶塊にぶつけては片っ端から体内に取り込み始めた。

 どうやら視覚が無い様だが、それでも水晶塊を取り込んだ分だけ大きさと強度が増している様に感じられる。


(此処まで近寄っても、気付いた様な反応が無い……目は無いから、視覚じゃ無く魔力か神力の流れを読んでると思ったんだけど、そういう訳でも無いのか?)


 膠着状態の続くまま、肉塊の双頭竜の動きが止まった。

 流石にこのまま待っていても、解決しないのは目に見えて明らかだ。

 俺は、直ぐに体制を立て直す為に水晶ゴーレムを再起動させる為、一気にゴーレムの位置まで離脱を行う。


「やっぱりか……となると、触手が邪魔だな━━一気に消し飛ばすしかないか……」


 水晶ゴーレムの位置まで戻ったが、手を触れた途端に理解できてしまった。

 ゴーレムが動作を停止したのは、魔力阻害でも何でも無かったのだ。

 触れたゴーレムには、“()()()()()()()()()()()()”ただ、それだけの事だった。





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