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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-13 いざ、夏季休暇の遠征
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神の炉2

【カミナ視点】


「アグニシュカ、アナタ試練はどうするつもりよ?」

「ンぁ? どうするも何もねぇよ」

「ハァ……やっぱり莫迦だわ」

「ハッ!! レヴィアスも見ただろう? あそこまで神力で固められた魂何て、生まれて此の方見たことが無ぇ」

「それはそうだけれど……」

「試練なんて結局の所、俺達が認める為の線引きでしか無かっただろうが? 一々試練を用意するのも面倒だしな!」

「ねぇねぇ、アグ兄、レヴィアス姉。僕も加護あげても良いかなぁ?」


 世界の外殻へと移動し、大分時間が経つ様にも感じたが、実際には幾ばくの時間も過ぎていない。

 そんな不思議な空間で、ルークが神力炉で作業をしている最中、シャガールを除いた3龍は、何やら話をしている様だ。

 良からぬ事では無さそうだが、()()()として話を聞く事はしなければな。

 私はルークを見ている紫龍を一瞥し離れることにした。


「魔神狼よ、側に居なくて良いのか?」

「一応ルークと約束をしたからな、貴様に任せる」


 正直な所、あの紫龍は気に喰わないが、態度や言葉から此方を害する事は無い様子は十二分に確認出来た。

 寧ろ自身の落ちていない鱗を剥ぎ取った行為は、流石に引いたが……。


「さて、魔神狼さんは、この一件どう考えているのかしら?」

「水龍、お前には私がどう考えている様に見える?」

「私としては、反転したとは言え、元が神狼(フェンリル)ですから、()()として同じ事を考えていると思っているわよ? 勿論、シャガールもね」

「神の生み出した者同士変わらねぇからな! 前神か現神の差はあるだろうけどよ。だから、俺はまどろっこしい事は抜きに、お前さんが守護しているルークに力をやったんだがな?」

「僕的には、後の事を考えると彼の恩恵が欲しいなぁ~。破壊神様に成ったら、側に置いてもらえないかな? 絶対上物の神力を与えて貰えそうだもん」


 3龍の考えは、試練を与えてから加護を与えるか、最早それすらせずに加護を与えるかで分かれていた。

 ……ユグドラシルに関しては、何やら打算的な所がある様だが、私からは何も言えない。だが、言える事は言っても問題ないだろう。


「そうさな……加護は好きにすると良い。ルークが危険な目に遭っても、死ぬ事が無い程度であれば、目を瞑る事にする」

「そこは安心してもらえると思うわ。問題無いとは言え無いけれど、命の保証は約束出来る」

「死なせないことに関しては、僕が一番得意だからねぇ~ 身体と魂さえ残ってる状態で、一度だけならって条件だけど」

「そんな事はどうでも良い、そろそろルークが漸く形成作業に入るみてぇだ。俺は戻るぜ!!」


 振り返ると、ルークが魔剣の形を整え始めていた。

 刀を打つ時とは違い、神力のみを操り形を整えいく作業故か、額には玉の汗が滴り、表情からも中々苦戦している事が読み取れる。

 いくら神力や魔力が無尽蔵に有ろうが、操る術を知らず若しくは技量が足りなければ、いくら有ろうとも意味は無い。


 どうやら、玉に変化させるまでは一応出来たようだが、そこから先は知識を有している私から見ても少しばかり難しい工程だった。

 アグニシュカが方法を叫んでいたが、完成形を思い浮かべて形を成す工程は、引き抜く際に神力を核として形を整えるのでは無く、膜として神力をその形状を保つ為だけに使う為、そのまま完成になる訳ではない。

 ただ器を創り出しただけで、中身の方は依然、液体のままなのだ。


 思い浮かべた型に中身を入れて満たしつつ、品質を全て均一になる様に液体を整えていく。

 それだけならば、創造の加護を持つルークが苦戦する事は無い。

 だが、神力を膜の様に張り、中の液体を練り上げながら形を整えつつ、神力の膜を割る事がこの作業で一番辛い所だろうな。

「言うは易し行うは難し」といった所だ。


 既に何度か取り出しかけては、崩れて行く液体を集め直す作業をしているが、それに伴い徐々に液体の量が少なくなっている。

 足元には回収しそこねた物が、液溜まりとなって残されたままだ。


「……次で最後だ!」


 ふぅ、と息を吐き、気合いを入れ直したルークの瞳は先程までとは違い、何かコツを掴んだのだろう。

 躊躇いもなくルークは神力を目の前の球体に張り巡らせると、一気に引き抜く。


 球体はその動きに合わせる様に徐々に量が減っていき、その量に比例する様に、手には鈍色に光る剣の形をした液体だった物が握られていた。


「何とかなったみたいだな? 後はこちらの仕事だ。暫く休むと良い」

「それなりの加護を与えたつもりだが、やっぱり時間がかかるか……神力の浸透率張り巡らせは悪かねぇ。確かに受け取った」

「何とか出来たぁ……疲れたや」


 出来たばかりの剣をアグニシュカに渡した後、ルークはそのまま仰向けになり、呼気を整えているようだったが、その呼吸が徐々に落ち着いた物に変わる。

 近づくと呑気な事に寝息を立て始めていた。


「仕方の無いヤツだ」


 私はそっとルークの身体を浮かべてから、その小さな頭を膝に載せる。

 転生した故に顔立ちには前世(むかし)の面影は無いが、確かに変わらない物はある。

 それは、暗部とも呼ばれる世界に生きた頃から変らない根っこの部分なのだろう。

「誰かに愛されたい」いつの日だったか向こうで言っていた事だが、それはこちらの世界で叶った筈だ。


 私は何故にルークを護ろうとしているのだろうか? 

 呑気に眠るルークを撫でながら、自身の魂に問い掛ける。


『ワタシハ、オモウ。この先ナニが有ろうとカナラズ護る!! 助けらレタカラ! デモ、キズつけてしまった! チカライル! 護るチカラガ!!』

『私は癒やしてあげたい、幾重の人生を経て未だに愛される事の無いこの魂が救われる様に』

『妾の力を持ってしても、魂を護り抜く事は出来なんだ。ならば、来世はせめて穏やかに過ごせる様にせねば……』


 ルークの魂と混ざり合ったが故の様々な情報が、流れてゆく。

 犬として生きた反転した時の私の魂の記憶、神界へと誘われ刀夜の魂の記憶を見た私と、天照の会話。


「愛おしきこの想い、果たしてどの様に表せば良いのだろうなぁ?」


 カミナは、擽ったく顔を背けるルークを見ながら、ふと呟く。

 その顔に、優しげな表情を浮かべている事を他の者は、知る由もない。

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