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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-12 領地開拓の為の準備
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旅の準備

『これにて前期のテストを全科目終了とする!』


 ドラムシアス学院長の言葉が館内放送され、集中していた生徒達の緊張も一気に解かれた。

「テスト点は?」「長期休みどうする?」等の言葉が聞こえる最中、俺達いつものメンバーは俺の机を中心に集まっていた。


「ルークくんどうだった?」

「取り敢えずかな?」

「まぁ、この程度なら大した事はありませんわね?」

「歴史の選択問題、名前がややこしいから、間違え掛けました~」


 エルザ、リーフィア、ソフィアの3名は、テストの出来を話そうとしていたが、俺は、大丈夫だと答えることが出来なかった……。


「……」

「━━無様やなぁ?」

「アーサー……」

「俺、頑張って勉強したんだけどなぁ……」


 紅の坊主頭が、死んだような目をして虚空を見つめている。今回のテストに関して、彼の悲惨さと言ったら無いだろう。

 名前の欄に自身の名前を記載する事を忘れた物や、欄が総て1つ目からズレて記載した為に、消しながら書いていく作業といったミスをした結果、追試若しくは課題の追加どちらかが決定してしまったから……。


「大丈夫だって、名前空白のテストは仕方無いけど、埋め直したのは合格ラインに間に合ったんだろう?」

「合ってれば……な、……自信ねぇ。課題の追加だけなら問題ねぇと思うけど、追試だったらオヤジに……シゴカレル……」

「先に名前だけでも書いてれば良かったのにな」

「最後に名前を書く癖がついてんだから、仕方ねぇだろ?」

「まぁ、ここで言っても仕方無いわな? 取り敢えず家に帰って、休みの準備だけでもしとこう」

「あぁ、最悪の場合は考えておく。そん時は任せたぜ?」

「了解、じゃあな」


 俺は、項垂れながら荷物を纏めているアーサー達と別れ、予定表を取り出した。


 長期休暇の間は無名の地を見て周り、帝国領のクラーケン討伐。序に緋緋色金の採掘といったスケジュールを組んでいるが、当然ながらアーサー達と遊ぶ事も予定に入れている。

 とは言え、単純に遊ぶというよりも、魔術の強化合宿みたいなものだ。


 帰宅後、煉獄魔弾の術式を再度解析をした結果、何とか大まかな術の威力と範囲を割り出せたが、正直な所、使い道が無い。━━正確には、気軽な使い方が出来ないと言うべきだろう。


 見た感じでは、魔力で神力を射出すると言う流れに見えるが実際には全く別物で、【崩牙】の殲滅現象を更に大規模で発現させる物だった。


 相反する力を同質力でぶつけ合い、打ち消した際に発生させる対消滅エネルギーを威力に変換して、一定の範囲を削ぎ落とすのが【崩牙】なのだが、【煉獄魔弾(アグニ)】は魔力と神力を不均一で放ち、互いに吸収し合う力を利用した広域殲滅用の魔術。

 しかも、結界の様な物で範囲を制限するのだが、それは魔術の一部でしか無く、放たれた後は内部を浄化の焰が周囲の熱を奪い、対象に変換する事で融解させていくという非常にグロテスクな光景を見ることになりそうな品物だ。


 ルーカスの話から使用されたのは魔物氾濫(スタンピード)や、災害級とも言われる巨大な魔物等に使われていたらしいが、古い時代には人に対しても使われていたらしいと言われ、暫くは死蔵品扱いにしようかと思っている程に強力な古代魔術だが、それが後5つ残っている可能性があると言うのがなんとも言えない。


「ルーク様? 大丈夫で御座いますよ。他の神殿に秘術として残された龍の詞(古代魔術)は紅の神殿の物より控えめな物ですから。特に、光の神殿に関しては回復術の物ですから。えぇ」

「ソウダネー。デモ、ノコリノバショ、ワカラナイカラネー」


 何かの拍子に覚えてしまうならば、それに越したことはないが、神殿の在ったとされる場所と現在の地図を比較すると、地形の変動が在ったり、魔物氾濫により廃都や地図から消えた場所も在る為、正確に分かる場所は、ローゼンクロイツ騎士国の【光の神殿】 アマツクニの【紫の神殿】だけが確認できている。


 他の神殿に関して詳しく調査するにしても、国境を超えたり、魔素の濃い墓場の様な廃都市を探索しなければならない。

 流石に年内でどうこう出来るものでも無いので、神殿関係は今の所パスする事にした。


「取り敢えずテストの自己採点は良かったし、アル爺様から届いた霊薬師の本も持った。後は……」

「ご主人様、コレ、忘れてる」

「ん……ルーチェ? 何だろう?」

「何かの手紙とカードが入ってる」

「あぁ! ありがと、それが無いと入れないんだよね帝国の国立図書館助かったよ」


 ルーチェが渡してくれた封筒には、俺個人にとっての楽しみが入っていた。

 王都の国立図書館や、王城の書物庫の本を殆ど読み終えた結果、他の国や都市に在る図書館を廻る事も考えていたのだが、俺の読書好きがソフィア経由でレイさんの所に話が行ったようで、帝国図書館のVIPルーム? らしい場所の入館カードを貰う事が出来た。

 レイさんから『緋緋色金の情報に対する礼』と言う事で、このカードさえ有れば、図書館内の秘蔵書を閲覧出来るらしい。


 帝国の図書館といえば、一般向けの販売魔導書数も多く、図書館にその内の4割程が所蔵されているので、帝国の駆け出しの冒険者で魔術がメインの者ならば、必ず立ち寄ると言われる場所でもある。


(とは言え、流石に禁書とかは無い筈だ。最高位の魔導書が秘蔵されてる位だから、魔術の魔導書創作に役立てば良いかな位の感覚ではあるケド)


 魔術の作成に必要な魔力の心配は無くなったが、魔導書を読むのは止められないだろう。

 この世界に娯楽としての読書は殆ど無く、商会のカタログや情報誌程度で、魔導書を読む方が勉強にもなるし、構造や魔力の流れを読み解く事に繋がるのは、楽しいから仕方無い。


 本当なら、長い時間を魔導書に囲まれてのんびりスローライフをしたいところなのだが、そうも言ってられない立場に成ったからどうしようもないのだが……。


 そんなこんなで、旅行では無い旅の準備を終え、前期テストの結果発表の日を待つのだった。

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