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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-12 領地開拓の為の準備
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ルーカスとの出会い

「へぇ〜、つまり別世界の魔物か、聖獣なのか」

「あぁ、この世界の種類では無い事は確かだ。後、何と言うべきか……もう一つ? いやもう一人と言うべきか? まぁ、使役をエウリシアから頼まれたのを今、思い出した」


 カンテボの依頼を済ませて返ってきたカミナのお土産は、この世界とは違う世界の魔物か神獣の類と、一人と言い直した所から察するに、人型の何者かだろう。

 街での依頼や神界までの内容を聞きながら、カミナから預かった手紙を懐に仕舞う。

 夕暮れを示す鐘が空に鳴り渡り、同時に夜の訪れを報せていた。


「流石に遅いし、その使役を頼まれた人? には明日会う事にしようよ。取り敢えずはこの子をなんとかしないと!」


 毛布の中では、毛玉のモフモフの大部分が傷んでいたり

 塊になっていた。流石にこのままだと、病気や目が見えなかったりする可能性も高い。

 そう考えた俺は、温泉のお湯を調整しながら予備のブラシを取り出してモフモフの毛づくろいを始める事にした。


 神力を併用して、復元(レスト)の魔術を使いながら体力の回復を促す過程で、話に聞いた通り額に聖結晶が生成され始めた。その見た目は昔見たカーバンクルの様なものでは無く、ユニコーンの角にも見える形状だ。


「神力が安定して来たようだな? 先程より毛の艶が良くなっているようだ」

「でも、復元をかけても、抜けてる毛やら傷んだ箇所の類は治りにくいみたいだね? ブラッシングして正解だよ。触っただけでもかなりの毛が抜けるし」

「別世界の存在だからだろうな。お前の神力に適応し始めているようだが、1日2日では無理だろうな。とは言え、衰弱も無いし、問題はなかろう」

「だね、取り敢えず長い所とか整えておくよ。カミナもお疲れ様、後でマッサージとブラッシングする?」

「いや、今日は要らない。取り敢えず今日は夕食を早めにして、明日の早朝に森の方へ向う」


 カミナはそう言い残し、自室の方へ向った。食事は取るだろうが、何か疲れを感じてあるのだろうか? 若しくは何か思う事でも在るのだろう。

 俺も作業が長かったからだろうか、少しだけ疲れが出てきた様で、肩周りが重くなっていた。


「……出来れば早めに連絡をしていただけてれば、もう少し手の込んだ料理を用意も出来たのですケド?」

「悪かった! そう無い相手に私も疲れたんだよ。やはり五月蠅い者は、ニガテだ」

「……アハハ。お疲れ様、カミナ」


 夕食の時間を早目にした為、渚は満足のいかない仕上がりになったと不満を顕にしていたが、時間の掛かる煮込み料理等が無いだけで、刺身の盛り合わせや味噌汁と言った和食中心だから、俺からすれば、感謝はしても不満も無い。

 特に嬉しいのは、やはり生魚が食べられる事だろう。

 こっちの世界では保存方法が限られている為、貴族の出す料理でも魚の刺身は滅多にしない。特に料理として出せる程新鮮な物は殆ど漁村でしか食べられ無いのが現状だ。

 今日の魚は、カミナ宛の依頼で時々ある遠出の依頼を受けた際に、異空間収納で保存していた物を出したらしい。

 食事と風呂を終えた所で、寝る為に部屋に戻ったがカミナのお土産となった魔獣?の身体に変化はなかった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「貴方様の配下に是非加えて頂きたい!!」


翌朝、カミナが案内した森ヘ到着して早々に、何も無い場所から聞こえた声がその一言だとは思わなかった。


「オイ、ルーカス」

「おや? 駄目でしたか?」

「先ずは姿を現してから声を掛けろ」


声のハリ弱く無いが、若い感じはしないと思ってしまった。実際に彼の姿を見て、納得してしまったのは仕方の無い事だろう。

僅かに残った水分の無い肌が、骨の輪郭を一部覆う様に張り付いた頭部と、司祭か神官の着るような衣服とロザリオを身に着けたリッチがそこに居た。


「紛う事なき力の波動を感じます。あぁ、主神様の力と近い神力の波動を!! そして数多の神力が混ざり合う中に護られる様に位置する純白の魂とは……何と、美しきか!」

「……カミナ、この人……大丈夫?」

「スマン……私も不安になってきた」


正直な所、リッチが仲間になるのに異論は無いし、エウリシアから使役する様に言われて此処に来た彼を受け入れないのは、流石にどうなんだろうとは思う。……思うが、リッチの割にキャラが濃くないですか?


知っているリッチと言えば、学院長(グリムガルト様)のメナードさんだけしか居ないとは言え、彼女と比べても少しばかり異質に思える。


「さて、ルーカス・イーフと申します。元は枢機卿の位に居た神職者ではありますが、見ての通りにリッチとなりましたので、神聖魔術は扱えません。神界で記憶を戻していただけましたので、ルーク様に対して今のわたしに出来る事は、今の時代で古代魔術と呼ばれる術式を教える程度でございます」

「例えば?」

「そうですねぇ……『煉獄魔弾(アグニ)』」


ルーカスは空に向かい魔術陣を展開したかと思えば、そのまま術が発動するでもなく、ただそこに展開しているだけの状態で留まっていた。


「発動はしないのか?」

「発動させても良いのですが、この辺り一面が焦土と化しますぞ? まぁ、この術を放てる程の魔力と神力が備わって初めて発動する術ですから。……わたしは今の姿に成ってから神力が無いの状態。まぁ、出来るのはこの術式と魔術陣を展開するだけですなぁ」

「あぁ、……だから、教える程度なのか?」

「えぇ、中々難しい魔術も在りますが、古代魔術は魔力と神力を同時に扱う物が大半だという事は、先に話しておきます」

「なるほど」


魔力と神力を同時に扱う術式。

間違い無く、今の時代では失われた技法の物だろう。

古代魔術は難解な文字の組合せだけでは無く、意味が通る物や全く関係ない文脈が見られる場合が多く、どの国も解読に時間を有していると云うのは、授業で習った範囲なので、おそらく殆どの魔術や神力を扱う者なら知っている事だ。

とは言え、今、目の前にある陣も誰か解読が出来るのかと聞かれても無理だろうな。


ルーカスの創り出した魔術式は、総じて解読出来る者が居ない程に古い文字ばかりで構築されている代物だった━━。

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