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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
1章 -2 呪術人形と勲章と
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消えた黒幕と近づくの季節

【謁見の間】

「皆の者待たせたな、今より式典を再開する」


 陛下の再開をする一言で、勲章授与式が再開された。


「ルーク・フォン・ラーゼリア前へ」

「はい」


 名前を呼ばれ、玉座の前に出てから、片膝を突き頭を下げる、最上位の礼を行う。


「此度の働きに対し、三国の最高勲章『白龍』『黒龍』『碧龍』の授与を行うと共に、男爵の爵位、王都に屋敷を与える。又、王都の学院に入った際に学費の免除を行う事にする。そして最後に我らが娘達の希望に添い、ルークを婚約者とする事になった。」


 陛下の言葉に、貴族達の一部がざわついた。

「陛下は男爵風情に、王女様を降嫁させるおつもりですか?でしたら、私の息子に…ヒィッ!」

「あら、貴方達は国の決めた事に何か問題でも?」


「今のルーク君以上の好条件を用意出来るのなら、獣公国は撤回しますが?」


「そうね、帝国領内も通達してますが、帝国領内はむしろ、お祝いムードになっているくらいですから、好条件以上でも無い限り、撤回は無いですわ」


 三国の王妃達が、不服そうな貴族に睨みを効かせる。


「ルーク・フォン・ラーゼリアに問う、我らが娘の婚約者となる事、異論はないか?」


「はい、ルーク・フォン・ラーゼリアは、男爵の爵位と婚約者の件、恐悦至極にございます。謹んで承ります」


「ウム、それでは勲章授与を行う。娘達よ前に」


 静かになった所で、三国の王女達が俺の前に横一列に並んだ。

「この度は、ルーク様のお陰で助かりました。」

「此方が、贈られる勲章になります」

「私達から、着けて差し上げますわ、立ってくださいまし」


 エルザ、ソフィア、リーフィアの順に左胸の位置へ、勲章がつけられる。

 西洋の、翼を開いたドラゴンを、横から見た様な形で、上から白・黒・碧色の順に勲章が並んだ。


 勲章をつけた後、カーテシーを行い玉座の後ろに王女達は戻って行った。


「これにて、全ての式典を終える」


「ただいまより、三国の王達が退室なさいます。各貴族はそのまま、案内について行ってください」


 これで全ての式典が終わった。


 この日から俺が前世で出来なかった事を、そしてこの世界に転生してから、やってみたかったことを始める日々が動き出した。


 ━━━━━━━━━━━━━

【???】

「やはり、この王国では駄目だな、早く墜神様においで頂かなくては……」


 暗い地下室で、小肥り気味な男は下卑た笑いで呟いたと同時に、魔方陣に横たわる、二人の男の子と女性に血を指から数滴、魔術陣に落とし詠唱を始める。

「我が盟約に従い、汝の在るべき姿を、贄の命を持って顕したまえ、墜神よ…『召喚(サモン)』」


 空間が歪み陣に亀裂が走る。黒い魔力の塊が徐々に大きく膨らみ弾けた。

 魔力が行き場を無くし渦巻く中に、召喚をした男の身体が浮かんでいた。

「━ッ!!バカな!!グヮァァァ!!」

 ━━メキメキ!!…ゴキ!!


 宙に浮いた身体は、異様な音を出しながら、形を変えていく。

 音がしなくなった後に、残っていたのは、黒い人の形をした靄と男が来ていた服と装飾品だけだった。

 靄はしばらくの間周囲を漂うと、そのまま地下室から「あははっ!!」と笑い声を残して消えて行った。


 消えた男の名はポルコ・トーン・デイビス、王都の財務大臣の地位にいた男であった。


 この失踪は当初、事件に巻き込まれたのかを確める捜査がされたが地下室から出てきたのは、邪教の魔術陣やポルコ婦人と息子の遺体、違法奴隷、裏金等と一緒にブラン領の重要人物の排除とその周辺に展開される予定の、人為的なスタンピード用召喚陣の図面が出てきた。


 一番厄介だったのは、この召喚陣が4年前に起きたリッツバーグ領内のスタンピードでダンジョンの近くで見つかった陣に瓜二つの物だった事だろう。


 国は第一級犯罪者として、ポルコの指名手配を行い、関係の深い取り巻きの貴族に話を聞き、必要な場合には制裁を行った。


 又、ポルコ自身は財務大臣の仕事を殆どを副大臣のダングイズ・アードと言う、痩せた体に眼鏡をかけた青髪中年の男にさせていた為、ダングイズを財務大臣に置き換える形で問題無く治まった。


「陛下、ポルコの足取りは未だ不明ですが、屋敷に囚われていた違法奴隷の詳細と、解放の準備が整いました。大半の奴隷は南東の貧しい村や孤児院からのものでした。」


「わかった、ダングイズ・アード財務大臣、君も軟禁状態が長かったのだから、無理はしないでくれ」


「我が身の心配をして頂き恐悦至極、大丈夫でございます。ポルコの下で働かされた時より、眠れておりますので、それでは失礼致します」


 ダングイズは一礼して、執務室に戻って行った。


 一人になった所で、「ふぅ」と一息つき、手元にある一枚の資料を確める。


「来年の入学は荒れるかも知れんなあ、これは胃が痛くなりそうだな」


 手元の資料にはこう書かれていた。


『神霊暦1896年度 ノームの一月 入学受験者リスト』


【最重要者】


 エルザ・ウルムンド・レシアス(レシアス王家第三王女)


 ソフィア・ロードス・ドーラン(交換留学 ドーラン帝国第二皇女)


 リーフィア・ヴァン・ダムシアン(ダムシアン獣公国第三公女)


 オリビア・セム・レスティオ(龍神皇国レスティオ第六皇女)


 アーサー・セム・レスティオ(龍神皇国レスティオ第二皇子)


 ルーク・フォン・ラーゼリア(ラーゼリア伯爵家三男、男爵)


 と記載された、学院の資料であった。


 今の季節が、シルフの二月に入ったばかり、約半年後の話であった。



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