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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-12 領地開拓の為の準備
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霊薬師の授業と精霊の指輪

「……僕、受けたいです!!」


 霊薬師の授業を受けるか否か、その考えを纏めている最中、(ティルマン)のハッキリとした意思が告げられた。


「ほぅ。ティルマン君はどうして受けたいのか、理由はあるのかね?」

「僕、じい……祖父の様な薬師になりたいんです。誰かを助ける人に!! ……でも、今のままじゃ叶いません。知識も腕も鍛えなければ」

「薬品学のままでも、知識は手に入るが? 本気かの?」

「薬品学のままでも知識は手に入ります。けど、霊薬が作れるか分かりません。だから、目標に近づく為にも、霊薬の事を勉強して、他の薬の知識や作用を知って、だからっ!!」


 全力で伝えようとしている事は伝わってくるが、アル爺様の反応は特に無く、ウンウンと頷くだけだ。

 俺としては、霊薬のレシピは何種類か原初の魔導書(ゼロ・グリモワール)にもあるので、受けるつもりは無くは無い。

 だが、作成過程にどれも同じ特殊な魔導具が記載されていた。


「俺から1つ質問ですが、霊薬師の授業は、專門的な道具がいるんじゃ無いですか? 指輪の形をした」

「ほぅ、確かに、薬品学の授業では使わぬ魔導具がある。霊薬師の必須魔導具じゃな」

「それは、個人でも()()()()()()()()()?()

()()()()()()()()()()()


精霊契約の指輪(エレメンタルリング)】読んで字の如く、精霊と契約して力を借りる為の指輪であり、精霊を使役して戦う精霊術師や、薬品を作る霊薬師が身に着ける装飾品型の魔導具。作成した事はまだ無いが、レシピは原初の魔導書と頭の中にある品物だ。


 素材自体は珍しくは無いが、安い物でも加工の過程でミスリルを大量に使う為、確かフューネさんの所でも、金貨8枚で取り扱われていたな。


「スキップで入った子には漏れなくワシからのプレゼントとして、低級精霊と契約した指輪を与えておる。勿論、自前で用意しても構わんが、精霊と契約するのは精霊術師を呼ばんと難しい。何せ、中級以上の精霊は、神力を持つ者としか契約せんからな。魔力でやって来るのは、低級か余程の悪食な精霊くらいじゃ」

「その指輪は、僕にも扱えますか?」

「問題無い。低級精霊は、魔力さえ与えられれば力を貸してくれるからのぉ。中級以上は意思を持つから、より強力な力を借りる事が出来るが、契約するのが難しい。呼び出しは簡単じゃがな」


 呼び出しが簡単で契約が難しいとはどう言う事だろうか?


「ふむ、流石に精霊術の勉強はしておらんか。使えねば仕方の無いものじゃからのぉ。簡単には言えば、精霊の属性に合わせた触媒を通じて呼び寄せるのじゃ。例えば、火精霊(サラマンダー)なら炎、水精霊(ナーイアス)なら澄んだ泉や川の水。風精霊(エアリエル)ならば、森、特に人の手が入っていない場所となる」

「場所や物によって、呼び出せる精霊が違うんですか?」

「まぁ、そうなるのぉ。例えばじゃ、イフリートの月に冷水に入るのは躊躇わんじゃろうが、ウンディーネの月に冷水に入るのは躊躇うじゃろ?」

「「あぁ〜」」

「そういう事じゃな」


 個人的には擬人式神……紙や藁、草木で出来た人形に霊力を込め創られた式神で、意思を持たせたものは上位式神、持たせなかったものは下位式神とされる物だが、それの作り方に似ていた。


 花の精を式にするには、その香りで場を満たして霊力を

 込めるといった工程があり、使役しやすい場を整える事はしていたからだ。


「さて、話がだいぶ逸れたが、聞きたい事は他にないかの?」

「あの、アル爺様。僕に精霊の指輪は扱えるのでしょうか? 魔力量が他の人より少し低いですが」

「それも心配要らん。大本はワシが契約した精霊じゃから、その力を学院内に居る間、指輪の持ち主に授業の際にのみ貸すという事でしてあるから、外で扱う事も出来んじゃろうし、同時に何人もの生徒に力を貸すから、必然的に消費魔力は少なくなる。ルーク君はどうする?」


「霊薬師の授業は受けてみたいですけど、俺は、加工職人の授業をスキップ出来なかったんですが……大丈夫なんですか?」

「その辺は問題無い。霊薬師の授業はワシの方で学院とは別に行って居るからのぉ。駄目ならルーク君はそこで学べば良いのじゃ。とは言え、どのみち帰省休暇後でなければ準備が整わんから、もし受けるのであれば、帰省休暇までに行っている予定範囲の授業内容を二人に渡して置く形になるが」


 受けていない範囲の授業内容が貰えるのなら、対策も取りやすい。新しい知識を得るのは楽しみだから受けない手はないだろう。


「わかりました。ならば俺も、霊薬師の授業を受けます。ただ、気になるのはスキップ出来なかった場合、薬品学の授業はどうなりますか?」


 そう、薬品学の授業はスキップ出来無ければどうなるのかが気になる所だ。下手に他の選択授業と被るのは勘弁したい。


「もし出来んけりゃ、薬品学の授業はそのまま行う流れで、霊薬師の授業は別途選択授業として受け入れる形じゃ。何、時間も他の科目とは被らんよ。ルーク君は特に選択数が少ない事もあるからのぉ」


 確かに絞って授業を受けているから、選択授業のコマは余っている。スキップ出来なかったとはいえ、鍛冶スキルと刻印スキルは手に入っているし、その分だけ余裕が出来たのは間違い無い。


(まぁ、その余裕分、開拓をしようかと思っていたのは間違い無いけど、期限まで時間もあるし、慌てることは無いかな?)


 今の所、開拓はスライム煉瓦を敷き詰めている道路の整備を行っているが、夏休みに入る頃には、霊域の集落まで敷き終えている手筈だ。

 この夏は他の集落にも向かう予定だが、取り敢えずはテストの結果を待つだけだろう。


「何、心配は要らんよ。この科目はワシしか決定権を持つ者が居らん。明日には通しておくし、渡す資料も準備して置く。そろそろ終わるとしよう」


 アル爺様は、にこやかな笑みを浮かべると書類を取り出し、何かの記載を始めだした。

 そのまま居ても仕方がないので、帰ることにした。


「それじゃ、ティルマン君。良い返事を待ってるね」

「あの、ルーク様。ぁ、ありがとう御座いました!!」

「ん? 何が」

「祖父の形見を修復して下さった事です」

「あぁ、大した事はしてないし、後は君が頑張る事だけだろう? 取り敢えず、知り合いの店に話しておくから、決まったら先生を通じて手紙を渡すよ」


 ティルマン君と別れ、そのままフューネさんの店に向かい話をしたら、二つ返事で返答が帰ってきたのは驚いた。


「マァ、渡りに船って事なのヨォ」


 どうやら回復薬関係のスタッフに御目出度い事での一時期な欠員が出たらしく、臨時で俺や知り合いから出来の良い物を買い取る予定だったらしい。


「そんな襤褸でその品を造るナラ、雇い入れるのも吝かではないワネッ」

「ダ・メ。ルークちゃんが既に雇う気でいるらしいわヨォ〜」


 相変わらず二人で並ぶと威圧感が凄いが、感謝しかない。

 ここは多少なりとも余分に手伝うに限るだろう。


「回復薬と解毒薬の普通品質は彼に頼んで、残りの薬品は俺が売りますよ。高品質と最高品質はどうします?」

「その辺は上乗せするワ! 最低でも一瓶銀貨3枚ネ」

「原価割れしてませんか? 店の値段からして普通は1枚が良いところでしょう?」

「普通なら品質が高い物は総じて値段を上げるケド、今回は学生の品物だからネ。ミスリル級の名をつけても仕方が無いもの。それに、貴方の他の商品で儲けが出てるカラ、コレでもまだお釣りが来るワ」


 他愛もない話をしながら話を進め、結果、回復薬と解毒薬を2ダース。中級回復薬を1ダース作る事になった。

 俺は早速、契約書と手紙を書くと、いつの間にか用意された瓶入りのケースを異空間収納に入れ、そのまま帰宅した。

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