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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-12 領地開拓の為の準備
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神珠

【ドラムシアス学院長室】


「全く、珍しく人の頼み事を聞いたと思えば、矢張りか。碌な事をせん奴だのぉ。中身をすり替えて置いて正解だったわぃ」


 この学院の主である一人の老人は、ぽつりと呟き見ていた水晶を棚に戻した。


「神珠の欠片を持っておったのは知っていたが、まさかルーク君に渡すとは……」

「面白そうでは無いか? (あるじ)よ、あの御仁が肌見放さず持ち歩いていた宝を、あの童に渡したのであろう?」

「アルファード、主も見ていたであろう? あの子は特別なんじゃよ。()()()()()()()

(やつがれ)からすれば、一度手合わせ願いたいと感じるが、駄目なのであろう?」


 グリムガルトの側には、アルファードと呼ばれた漆黒の鎧を纏った男が控えていた。


「かなり高ランクの魔物や魔族を従えている、実力は見た通り。流石にお主でも勝てんじゃろう? いくらデュラハンロードの()()()()()()だとしてもな?」

(やつがれ)は、好きでこの身体に成った訳では無い、が、この身体に成ったからこその意味が有ると主が教えてくれた故、従うのだ。そこに、種族なぞ関係無い」

「そうか、ならヴェストリを回収してルーク君にあの欠片についての説明をしに行くぞ?」

「仰せのままに」


 傅く黒騎士は、その身体を黒い霧へと転じ、姿を消した。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「カミナ、さっきの神珠の成り損ないってどういう意味?」

「知識に有るが、神珠を作製するのに必要な素材と云うだけだ。賢者の石然り、霊草が使われるのとさほど変わらん」

「つまり、完全な神珠でもないし、初代ドヴェルグの神珠でも無いんだな?」

「そういう事だ。現状残っている採掘出来る場所も、この時代の技術では無理だな。岩盤がかなり硬い地層を掘り進めなければならんし、そもそもマグマの溜りの更に真下だ」


 どうやら、ただの素材なだけで、俺が求める神珠とは別物らしい。


「因みにだが、現存する同サイズは無いだろうな。かなり貴重な物になる。魔力に神力を取り込むが、霊力も取り込める様だ。半神の力を全力で籠めても、恐らく問題ない筈だぞ。()()()()?()

「やっぱり知ってたか」

「ん? 一人旅をする様な事はあまり無いが、遠出する際に、神界経由で行った方が何かと便利だからな。その時に、エウリシアからのアマテラスに対しての愚痴を聞いた時に知っただけだ」

「……さいですか」


 前世の時は、イタズラ好きな犬だと思っていたカミナも、この世界で自身を取り戻したというべきなのか?

 色々ツッコミたいが、遠出で神界を使うというのは自由過ぎやしないだろうか?


(エウリシアは、頭を下げている神様の話を、カミナにするのは辞めたほうが良いと思うぞ。完全に玩具を見つけた時の顔をしているから……)


 恍惚とした表情を浮かべるカミナを余所に、最後の仕上げを行う。

 中途半端に混ざった魔力を抜いた後は、纏わせた神力を馴染ませ安定させていくのだが、どうやら神力が少しばかり足りないらしい。


「どうしたもんかなぁ? ……あっ! アレ使えるか?」


 思い出したのは、あの不気味な人形の身体だ。黒曜から貰い、今は神力の塊と化したソレを、急ぎ取り出して足り無い分を補充していく。


「何ぞ、妙な物を取り出したかと思えば、随分と濃い神力の塊だな? 高位の悪魔か何かを斃した後に反転させたか?」

「いや、実は…」


 カミナに拾った時の経緯を話したのだが、どうやら、その話までは聞いていなかったらしく、天を睨みつけ、眼光も鋭いモノに変わっていた。


「で? 悪魔が不死性を持ったか、人が不死性を持ったまま魔族化したのかは、解からぬと?」

「スサノオ様曰く、不死性が有ったから地獄の苦しみが有るみたいな話はしていたけどな」

「学院行事だから、と高を括ったのが不味かったか。暫くは緊急クエスト以外は受けない様にして、……あぁ、一応ギルドには話を通しておくか」

「些か心配し過ぎじゃないか? 無事なんだから、もう少し気楽に行こうぜ?」


 心配をされるのは、まぁ、悪くない気分だが、そう過保護にされても困る。


「戯け、気楽にするのは構わんが、その考えで死なれては、せっかく転生した意味が無いではないか!」

「えぇ!? 何でカミナが怒ってるのさ」

「相棒が、知らない間に死にかけて、向こうの神が助けてくれた。……そんな巫山戯た話は聞きたくなかった。お前を護るのは、私の仕事だ! 今後は学園行事全て影から付いて行く。もう決めたからな!!」


 カミナは凄い剣幕で捲し立てるが、どうしたと言うのだろうか?


「まぁ、今回みたいな事は、もう無いと思うけどねぇ?」

「トラブル体質が何を言うか。危なくなったら私を喚べば良かっただろうに、何故呼ばなかった?」

「だって、あの日はランク更新の依頼で出てたでしょ? 後は、妙な力で召喚術も招来も使えなかったのもあるケドさ」

「良いか、私にとってはランク何ぞ、どうでも良い。お前が、いや、お前以外はどうでも良いんだ。護りたいと願うから、護るだけでな。今後は何か有れば直ぐに喚べ」


 言いたい事を全て言い終えたのか、カミナは身を翻すと窓から外へと出て行った。

 それと同時に扉がノックされ、扉が開かれたのだが、そこに居たのは、漆黒の騎士鎧を身に纏った大男と、グリムガルト学院長の姿。


「すまんのぉ、そこの莫迦を引き取りに来た。仕事中に、酒を呑む莫迦をな?」

「学院長が、わざわざヴェストリ先生を引き取りに来たんですか?」

「其奴の酒瓶に魔術を施しておいたからのぉ。流石に家で呑むと思って無かったが、学院内で貰ったその日に呑むとはのぉ。……矢張りドワーフと云うべきか」


 グリムガルト学院長は、呆れた様に呟きながら、回収作業に入っていた。


「そうじゃ、ルーク君。ヴェストリが渡した欠片、あれは神力の欠片じゃから、大事にするとええ。行くぞ、アルファード」

「御意。……黒き不幸の刃は新たな主を得たか。(やつがれ)と再び(まみ)える時、今一度、お相手願おう」


 欠片の処理を終えて、再び異空間収納に仕舞うと、今度は問題なく神力と魔力が循環している様だった。

 片付けを終えて教室から出る時、以前富嶽が言っていた黒騎士について思い出した。


 そして、アルファードと呼ばれた黒騎士は、最後に気になる一言を言っていたが、まさかね?


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