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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-12 領地開拓の為の準備
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欠片《かけら》

「……つー理由だ。期待させて済まねぇ」

「はぁ……、まぁ期待はして無かったですし、ある程度考えていましたから大丈夫です。所で、その鉄箱……重く無いですか? 教室まで一緒ですし、異空間収納に入れておきますけど?」

「済まねぇ、頼む。最近は肩凝りが酷くてなァ」


 やたらと大きな鉄箱を抱えたヴェストリ先生の話は、この授業のスキップが出来なかった事とその理由だった。


(まぁ、入って早々にスキップが出来るとも思わなかったし、当然の判断だろう。色々入学してからやらかしてるし、仕方無いって所だろう)


 結界術の授業に関しては、面白そうではあるがスキルに結界術を所持していたから、構築は出来る。その辺はどうしようかと思っていた所だったが、結界術がイカサマ出来ると言う言葉で、だいぶ前に結界でパリィをしていた男が居たなぁと思い出し、少し興味が湧いた。


「到着しましたね、どこに置きますか?」

「あぁ、その辺に置いといてくれや。今日の授業はスキップ出来なかった変わり……つぅもんでもねぇかァ。魔剣の素材をやるから、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 教室に到着した所で、ヴェストリ先生の口からから出た言葉は、今迄していた会話の様に軽いものでは無く、何処か凄みのあるものだった。


「あの魔剣が今の本気ですよ?」

「……ふぅ、俺の鼻を忘れたのか? 今から一度しか言わねぇ! ()()()()()()()()()使()()()最高の一振りを創り出せ!! 俺の知らねぇ技法も含めてだ。今日、この教室には誰一人来ねぇから、存分に全開を出せ。俺は必要ねぇだろうから、外で待ってる」


 かなり魔力の高い袋に保護された鉱石を、机の上に置いたヴェストリ先生は、話し終えると早々に教室から出て行った。


 ━━何故か酒瓶を持っていたが……。


「この中身を使って魔剣を創れって事? しかも、本気で加護と錬成を含めた技術を使ってって事だよな? 話の内容から察するに」


 魔力での保護をされた鉱石と言う事は、魔鉱石の中でも酸化や劣化しやすかったり、性質変化が激しい物の可能性が高い。

 ()()()()()()()()()()()()


(あんまり余計な事はしたくないんだけどなぁ。……仕方無いか)


 流石に授業を受けていた間、目が視えなくとも、俺の近くで作業を觀ていた鍛冶師だ。下手な誤魔化しは無駄だろうし、直ぐに見破られるだろう。

 俺は意を決し、袋の中身を取り出す事にした。

 そこに入っていたのは、琥珀色をした野球ボール位の宝玉の様な品だった。


「何だコレ? ━━『複合解析(マルチアナライズ)』 ……は?」


 確認する為に【複合解析】を行ったのだが、その結果は予期せぬ品物だった。

 と云うよりも、何故コレが()()()()()()()()()といった方が正しいのかも知れない。


 ━━【神珠の欠片】複合解析の結果に表示された文字は、驚愕と云うべきか予想外、想定外と云うべきか。


 ヴェストリ先生が元ドヴェルグの称号を得ていたのは知っていたが、問題なのは、初代ドヴェルグが創り出した神珠と思われる物が、何故か欠片としてこの場に在るという事だ。


 更に詳しく解析してみるが、名前に変化も無ければ、作者の名前すら出て来ない。

 転生前から今迄の経験を鑑みて、こういった事例は大抵が碌でも無い事の方が多かった。


(ヴェストリ先生に話を聞かなきゃ、駄目だろうなぁ)


「……ゔっ」


 そう思って、扉を開こうとした矢先、扉は外から何かに押され開かず、隙間から僅かに漏れて聞こえた低く、呻く様な声と、微かに臭う()()()()が、俺の鼻に突き刺さる。


「ヴェストリ先生!? そこに居ますか!! 大丈夫ですか!?」

「……大丈夫だぁ! 何でもねぇから、とっとと品をさ拵えて、確認させろぉ」


 流石に、異様な匂いをさせて、一人外に居る先生が無事なのか解らないと云うのは不気味だ。


「カルロ! ヴェストリ先生の様子を見てくれ!!」

「……申し上げにくいのだが、残念ながらあの御仁、手遅れだ」

「ヴェストリ先生に何かあったのか、カルロ!?」


 隠密行動をしているカルロに、ヴェストリ先生の様子を見てもらう事にして声を掛けたのだが、帰ってきた返答は、何処か呆れた声で返された。


「既に意識が切れております。……かなり強い酒精の物を呑んで居たのでしょう。酒瓶が散乱しておりましたが、流石はドワーフ、中々の物をお持ちのようだ」

「つまり、寝てるのか?」

「はい、寝て扉に頭をぶつけたのでしょう。少し鼻から出血されているようですが、問題は無いようです」

「なんつー人騒がせな」

「それは子爵にも言える所だと思いますが……」


 最近は特にトラブルは起こしていない筈なのだが、どうやら、カルロからすればそうではないらしい。


「取り敢えず、ヴェストリ先生を中に運んで、ヒール掛けておけば問題無いだろうから」

「御意」


 会話を終えると、直ぐに扉は開き、カルロがヴェストリ先生を運ぶ。

 俺は、欠片を異空間収納に仕舞いヴェストリ先生を治療してから、起きるのを待つ事にしたのだが、恐らくそれが不味かったのだろう。


 目覚めを待つ間に、袋に刻まれた魔術回路を解析して暇を潰そうとしたその時、異空間収納が()()()()()し、中から途轍もない魔力反応が溢れ出してきた。


 咄嗟の事で反応が遅れ、周囲の確認を行うが、魔力の波は収まる気配が無い。


「魔力の波も強いけど、神力も暴走してるのか?」

「何ぞ妙な気配を感じるが、ルーク、今度は何をしでかした?」

「カミナ!? ダンジョン遠征はどうしたの?」

「ダンジョン攻略に飽きたからな、久しぶりにオマエの影で寝ていたのに、不味い魔力と神力の余波が流れて来たから出て来ただけだ。……成り損ないの神珠か? とっとと神力で抑えめば収まる。練習だ」


 人の影から狼形態で出て来たカミナは、そう告げると俺の横に座り人型に姿を変えていた。


「出来るまで見ていてやるから、早う終わらせると良い。原因は過度の魔力が、成り損ないとは言え神珠の魔力を浸食し始めたのが原因だ。後は理解るな?」

「一番面倒な部類の魔力制御を、行う事に成るんですね? 理解ります」


 要は、神力を保護しながら、魔力を纏わせて浸食した魔力を抜き出す制御をしろって事だ。

 カミナ監修の元、魔力と神力の同時使用を行うのだった。

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