プレア王妃の王様裁きと式の再開
【王の控え室】
「ソドムのタヌキジジイ、なに爆弾発言してんだよ」
「おおぅ、おっかないのぅ、そも年は4つしか違わんのじゃから、儂が爺さんならお主も爺さんになるぞ、因みに儂はキツネじゃレイ殿?…クックッ」
「はぁ…ソドム殿…リーフィア嬢を嫁に出すとは………本気ですね…」
「儂は最初から本気じゃが?どこに行くのが子のためか考えればわかるじゃろ?しかも、自分から言って来たのだ。親としては寂しいが、今まで見合い相手を言葉だけで、再起不能にした娘が嫁ぎ相手を見つけて安心して居るよ」
王達の控え室に連れて来られた俺と父様は、入り口にただ立つだけで、どうしたものかと考えていた。
すると短いノックが聞こえた後、扉が開き各国の王妃様と王女達が入って来た。
「お父様、良く言ってくださいましたわ」
リーフィアは喜びながら尻尾を振り
「ふふふっ……御父様……モタモタしてるから……リーフィアに……先を越されてシマイマシタワ…フフフ」
ソフィアは精気が消えた目をして怖い顔で
「バカ、パパなんて知らない、リー姉様とソフィア姉様と一緒に考えた作戦が台無しだよ」
エルザは作戦?とやらを台無しにしたと素の状態の口調で怒りながら
三人の王女様はそれぞれの父親に詰め寄り思い思いに話す。
すると、一人の護衛騎士が近いてグランツに話しかけた。
「此度の陞爵、おめでとうございます。グランツ伯爵」
「ありがとうございます。しかし、この場に居ますのはルークの功績があればこそです。セラス大公妃様」
「あら、簡単にバレてしまいました?」
近いて来た騎士が、兜を外すとエルザと同じ蒼い髪と、柔和なタレ目の金色の瞳が現れた。
「ですから私は言いましたでしょう、セラス様」
聞き覚えのある女性の声が、大公妃の横から聞こえ、そこには淡いターコイズブルーのアフタヌーンドレスに身を包んだ童顔の女性が居た。
「あら、クーニャやっぱりドレスが似合うわね、私にはもう着られ無いから貴女にあげようと思って残しておいたのよ、クーニャもそろそろ結婚したら良いのに」
「全く…セラス様は今の立場をわかっていらっしゃいますか?昔とはお互い立場が違うと…ムグッ!!」
クーニャと呼ばれた女性がセラス様に説教をしようとする瞬間、口の中にセラス様が何かを入れた。
「また始まったわ、お母様のクーニャ弄りが」
呆れた顔で、リーフィアが呟いた。
「クーニャさんって帝国の女騎士さんだよね?あんなに弄られているんですか?」
「私達の護衛…と言うかソフィアの護衛騎士なんですけれど、私のお母様はレシアス王の話が好きなのと同じ位の可愛い物が好きなのですわ」
「あぁ、うん、わかりました」
弄られて涙目になっている姿と、鎧を着て怪我をしていた姿が重なり…小動物みたいに、可愛いと思ってしまった。
━━━パンパンッ
突然手を叩く音が、響いた。
「セラスは遊ばないの、グレミアも、もう少し声を出しなさい。ほら、エルザ達はルーク君から離れて。貴方達も、王と呼ばれる者なのだから早く座りなさい。話が進まないでしょ!!」
声の主を見るとそこにはセラス様と同じ蒼髪と金色の瞳をした。エルザと同じつり目の女性が目を鋭くい抜く様に立って居た。
各王達は一斉に静かになり、まるで蛇に睨まれたカエルの様に、直立不動となった。
そこからは、プレア王妃達の独壇場だった。
「先ず最初にするのは、ルーク君の勲章授与をします。その後に褒美を与える宣言、貴方良いですね?」
「ハイ、わかりました!!」
「次に陞爵ですが、反対した大臣が居ましたね?誰でしたか……ポルコ財務大臣でしたね…あぁ、黒い噂のある大臣か…後で手を回して、失墜させましょう。取り敢えず…ダナンとエイルの二人は、周辺貴族のも合わせて証拠を集めて」
「「ハッ!!」」
王妃の命令に黒いローブの二人が返事と共に消える。
「ルーク君の爵位は…男爵で始めて、そうね…在学中に陞爵を出来たら行う形でいきますよ」
「そうじゃのぅ、それが良かろう」
セラス様の言葉にソドム様は頷く。
「それから、褒美の内容ですが……エルザちゃん、リーフィアちゃん、ソフィアちゃんは決めてるのよね?」
「「「もちろんですわ」」」
グレミア様の言葉に三人の王女様達は嬉しそうに頷く。
「ルーク君はどう?この子達をお嫁さんにしたいと思う?」
三人を見て、考える今の段階でこれ程の美少女なのだから成長をすれば絶世の美女になっている事だろう。
「はい、なって貰う事が出来るなら、お嫁さんになって欲しいとは思います」
「では三人を婚約者とする事を褒美にします。良いですね?」
「「いや、それは」」
「「「何か問題でも?」」」
「「……いえ、…無いです」」
そして、何か言うつもりの陛下と皇帝は、三人の王妃達の圧に屈した。
「では決まりましたね、そもそも勲章を授与してから爵位の話をすれば、纏まるのが早かったとは思いませんでしたの?ア・ナ・タ?」
「反対する勢力をついでに叩こうかなと思った次第でして、はい、スミマセン」
「後は、学費と住む屋敷の準備にブラン領の魔鉱石でしたか?」
「はい、奥様。ルーク様は武芸、魔術、錬金術と多岐に渡る才能を御持ちで御座います。屋敷は学院とは離れますが、南西区の屋敷跡などがよろしいかと」
「あの辺りなら陞爵しても建て増し出来るわね、でも今は屋敷も無いし、あの臭いは大丈夫なの?熱湯が噴き出して屋敷自体を壊したじゃない」
「その辺はお任せくださいませ、恐らくですが、噴き出した熱湯は、ルーク様からの要望に添うものではないかと思われますので」
「デービルがそう言うなら任せます。さて、話も纏まりましたし、そろそろ式典を再開するとしましょうか」
プレア王妃様は、そう言って柔らかい視線で微笑み告げた。
俺は何も話すことなく、ただ思ったことは女性はどの世界でも強い人が多いんだなと思った。
父様に関しては、苦笑いを浮かべて頭を抱えていたが「これも血かな」と小さな声で呟いていた。
そうして、勲章授与式が再開された。




