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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-12 領地開拓の為の準備
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魔力の質

「さて、小僧。少しばかり話をしようかのぉ」

「わかりました。俺も聞いておきたい事がいくつか有りますから、構いませんね?」

「ワシの話ばかりでは不公平というものだろう。その辺は問題無い。……では、参ろう」


 どうやら山本さんも、俺と話したいことがある様で、話に誘ってきた。

 俺の方も色々確認しておきたい事があるから丁度良い。


「サンモト様、マノンはどうなさいますか?」

「今回件は不問には出来ぬからのぉ……可哀想じゃが、1ヶ月分のオヤツを無しかのぉ」

「相変わらずサンモトさんは子供に甘いですネェ。まぁ俺チャンもその辺で手を打ちたい所なんですがネェ?」

「行動規範の無視と、暴走。サンモトのお爺ちゃんには悪いけど、彼女の候補生には異議を唱えさせてもらいたいかな?」


 割と御し易い相手だったけど、矢張り規律があるのだろう。

 此方としては、大した相手では無かったので、不問でも良い気がするんだけどねぇ?


「グリッドとオルレアはどうなんじゃ?」

「候補生として残すのを是か非かなら非だが、実際に魔力を浴びていない身からして、と言う事を念頭にしてだな。戦わずとも、全力の魔力を浴びれば、どれ程の物か判断がつく。暴走する程に魔王位の魔力を浴びたとして、幹部候補生には、SSS級の魔力を浴びても問題無い程度には過酷な訓練をしている。マノンは特にその特質から抑え込むのに行っていたのは知っているからな」

「ワタクシは残してあげたいケド、今日の暴走は類を見ないレベルでしたから、ワタクシも、彼の本気の魔力がどうなのか気になりますわ」


 まぁ、魔力量が無制限に成っているから、問題ない程度には制限してあるけど、やっぱり全力全開って訳には行かない。

 何せ無制限故に、制御しなければ膨大な魔力を垂れ流ししている状態になる訳で、下手な事をすれば初級魔術がトンデモ魔術に変わりかねないからだ。


「魔力を感じてどうするよ? 恐らく無駄な事に成るだろうよ。テメェら、力量が理解らねぇ訳じゃ無ぇだろう? それとも、感が鈍っちまったか? ん?」


 にこやかな笑みを浮かべてはいるものの、山本さんの口調は荒く、その放たれる緋色の魔力と圧力は、まるで魔王状態のフォロンさんと変わらない物だった。


「この程度の圧で怯むなら、尚更お前達じゃこの小僧の相手は無理じゃな。マノンは必死に堪えていたぞ? ワシの眼では見えぬ小僧の深淵を覗いた瞬間から、己の命を護ろうとな」

「防衛本能ってやつですかい? 俺チャンも予期していなかった答えですネェ?」

「仕方無ェ……小僧、この四人に魔力を放って貰えねぇか? ワシとしては、マノンは頑張った方だと思うんだよなぁ」


 まぁ、マノンさんの行動が単調と云うべきか、御し易い相手だったけども、本来の力を出していないのであれば仕方ないのかも知れない。

 流石に完全制限した魔力を放っても、恐らく意味が無いだろうから、ほんの少しだけ開放した魔力を放つとしよう。


「わかりました。一回だけで良いですよね? ━━ふぅ、こんなもんか?」


 一点集中で周囲に魔力を溜め、深呼吸の吐くと同時に魔力放出を行う。

 2割程度の開放をした魔力波が、目視出来る程度の濃藍色を揺らめかせ、訓練場に拡散されて行く。


「━━ッ⁉」

「━━コレは⁉」

「……」

「離れてもこの濃度って……」


 濃度的には山本さんの魔力と余り変わらない。

 魔力色も水属性の魔力が強めに出ているからこその青系統だが、実際には他の属性で発動する事も出来る。

 ━━とはいえ、どの色も俺個人の本来の色では無いが。


「中々な魔力濃度よな。ワシと殆ど変わり無いが、まだ余裕がある。そして、まだ子供の内に此処までの魔力量を持つのはセレーナ伯爵以来じゃ、残念ながら彼女は冒険者では無いからのぉ」

「そうですね、セレーナ様も魔力量は桁違いな方ですね、結構知り合いにも人並外れた方々が多いので、『驕れる者は久しからず』とも言いますし、常に自分の能力を過信し過ぎない様にはしますよ」

「ほんに、年臭い小僧よな?」

「無難に生きたいだけですよ。独立して貴族に成るとは思ってませんでしたケド。本当ならスローライフ的な事がしたかったんですけどね、老後に取って置きますよ」

「やはり、小僧と言うよりも爺相手に話しておる感じがするのぉ。で、小僧の件はもう良いか? これを基準にしたら流石に候補生程度じゃ無理であろう?」


 訓練場に充満した魔力が、周囲の結界に留まりドーム状に形を変えていく中、山本さんとのんびり話をしていたのだが、流石にやり過ぎでは無いのだろう。

 グリッドさんとオルレアさんも、出しているのが俺だと言う事を確認しているだけだ。


「水属性の濃藍色! ……ここまで濃い藍色では、魔王の系譜と勘違いしても、おかしくは無いな」

「そうね、サンモト様と同格の濃度でこの量を放出する事が出来るのなら、片鱗を味わったのなら暴走もする訳ですわ」

「「流石に同意ですね(ネェ)」」

「それじゃ、マノンにはオヤツ抜きを伝えて、それぞれ持ち場に向かうぞ。これ以上の時間は流石に業務に支障をきたすからな、素早く破片等を片付けるぞ」


 グリッドさんの掛け声が訓練場に響き渡ると、そのまま待機していた者や、目を覚まして残っていた人達で訓練場の片付けを始めていた。


 そんな最中に、俺は山本さんと二人で休息場に向かうのだった。


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