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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-11 古の鍛冶師達
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授業後の大仕事

 日本刀の構造は、俺もそこまで詳しくは無いのだが、元々【鏡花水月】の構造が、四方詰めの構造であり、整備する際に知識として憶えさせられたが故に気付いたとも言えるアーサーの剣。


「どうだ? いけそうか? この刀身の色が変わらねぇ方が助かるんだが」

「……正直な所、この剣を打った職人の技術には感服するよ。コイツに細工を施すなら、作った職人と同じ位の腕を持つ細工師じゃないと無理だね。再錬成して()()魔術付与を施すのは出来るかもしれないけど、この色が出るかわからない」


 流石と云うべき技術力、自分に合わせて錬成した物には無い作り込みだ。

 四種の鋼に仕込まれたのは、各々が別種類の魔術刻印を施されて作られた合金。


【切断】【強度】【速度】【重さ】そのどれもが、魔術刻印としては異質なレベルの仕上がりだ。

 複雑な刻印が模様の様に組み込まれ、魔術付与が出来ない魔金属に、付与魔術と同じ効果をもたらす秘技。


 鑑定に魔剣とならないのは、恐らく核となる魔石か魔核が使われていないからだろう。

 しかし、コイツに当て嵌めれる様な魔核も魔石も、あいにく持ち合わせがない。

 ましてや、嵌め込む場所を作る事自体が難しい品だ。


「魔剣として使うのなら、魔力制御をして自分の魔力を喰わせるタイプの奴にしか出来ないかな? 今の所は付与魔術自体、まだ生きてるみたいだし」

「コイツに付与魔術がしてあんのか? でも他の魔剣とかと違って属性付与が無ぇぞ?」

「属性付与の魔術は無いけど、極限まで重さを無くして使用者の剣速を高め、切り裂く事に特化させつつも強度を高い水準で保たせる物だ。しかも魔金属加工で使う刻印魔術が使われてる。恐らく下位の竜の魔核を使って、漸く魔剣に成る位だろうけど、今の俺の技術じゃこの職人の腕には程遠いな」

「魔剣を修復した奴が無理なら仕方ねぇな、ルークが出来る様になる迄、コイツはそのままにしておくか!」


 アーサーの剣は本当に見事だが、今のスキルや技術じゃ手が出せない品だ。

 鍛冶師のスキルは選択科目に含まれていたが、俺は選んでいない。


 正確には、【魔金属加工職人】のスキルと【魔結晶加工職人】のスキルを得る為に、他の職業系統スキルは選べなかったのだが……。


「あっ!?」

「どうした? なんかあったのか?」

「いや、何でもない。ちょっと別件で思い出した事が有っただけ」


 エルダードワーフの名前で、俺は1つだけだが、心当たりがあった。

【霊域の集落】と【妖精の大樹】その間に在る聖域内の問題集落、それこそがエルダードワーフの住む集落【シュルフェーレ】と呼ばれる場所。


 もしかしたら、この剣を作った職人を知っている人が居るかも知れない。

 とはいえ、次に向こうに行くのは夏期休暇の時になるし、その内の何日間かは帝国の鉱山で緋緋色金の採掘がある。


 とりあえず、シュルフェーレに向かう前にヒューネさん達の所でドワーフ達の好みを聞いてお土産を用意するのが先だろう。

 ……もし、ファンタジーの定番設定なら、酒が好物なんだろうけどさ。


「さて、エルザとリーフィアの武器をどうするかは決まった。アーサーのは、正直な所手が出せない品だから、悪いけど今回はパスさせてもらう」

「構わねぇよ、どうせ長い付き合いになんだ、それくらい大したことじゃねぇよ!」


 ニカッと笑うアーサーの快活な性格は、間違いなくゼノさん譲りなんだなと思いながら、俺は異空間収納内の素材を各々選別し始めた。


 エルザの杖に使う木材と、折れた杖。魔石は在庫が無い訳では無いが、加工する時間も惜しいので、俺の魔力を圧縮して出来た魔核擬きを使う。

 この魔石擬きは、神力の発動訓練の際、魔力をコントロールする時に出る余剰魔力を見やすくするために固めた物だ。


 何より他の魔石よりも、俺自身の魔力を通しやすいから、加工が難しくない魔石と考えばこれが一番になる。

 後は、木材に関しては、各々違う種類のトレントの枝があるし、黒曜の体細胞から、荊花女王(クイ━ンローゼリア)の荊を束ねて用意してもらえば、それでも代用出来る。

 後は、エルザの欲しいデザインを紙に書いてもらえば、完成って所だろうか?


 リーフィアのスモールソードは、軽さを追求するならば、手持ちの材料に在る蒼月(ブルームーン)魔鉱石を使うのが一番だろう。

 材料に余裕は無いが、魔力制御の魔導具をアーサーには作って贈っておけば良いか。


「エルザ、リーフィア、デザインを紙に書くか要望を書いて後でくれ。杖は明日の朝には渡せると思う。剣は……まぁ、内容次第かな?」

「わかりましたわ。エルザ、しっかりと書きますわよ」

「はぁーい。ルーク君、無理はしないでね?」

「まぁ、魔物討伐よりは随分楽な仕事だよ」


 軽く冗談を言って別れたが、まぁ婚約者を守護する物を作ったら、国宝物が出来上がる可能性は否めないだろうけどね。


 ━━そうこうしている内に、午後の授業が終わり帰宅する時間と成った。


 馬車や、迎えに来た執事達の魔導具により移動する者や、寮に向かう者が各々別れていく中、俺はエリーゼと共に自宅に帰った。


「さて、それではルークに魔導弓を見せてあげようじゃないか!!」


 席に着いた途端、エリーゼの武器説明が始まったのだが、いやにテンションが高い。


「おおぅ、ソイツはそんなに興奮しながら語るものなのか?」

「フッフッフッ! この魔導弓ってのはね、貴族が猟をする為に、職人に競い合せて作った弓の派生系の1つで、これは私の前世の頃に作った物よ。この筒が機軸なのだけどね、ここに魔力を流すと籠手の形に魔力形成されるの。この籠手自体が弓の弦の役割を果たすのだけど、構造的には本来の形とは違って、本来は弓の形に魔力形成されるのよ。防御を兼ね備えた物を作ったと思って良いわ」

「結構面白い構造だな。他には?」

「んー、強いて言えば、弓として使うよりは暗器として使う人が多かったかしら? 後は、魔力制御が構造を弄ったせいで難しくなった位?」


 確かに弓には見えないし、近接した所で籠手から飛び道具なんて思い浮かぶ人間が、どれだけいる事やら。


「ただいまぁ……ルーク、エリーゼおかえりなさい?」

「メア、おかえり」

「おぉ、メアおかえり!」

「……エリーゼ、興奮してる」

「ちょっと武器の事でね」


 軽く説明をすると、なんとも言えない顔を浮かべながら、メアはそのままお風呂の方に行ってしまった。


「暗殺者の武器としては、確かに優秀かもしれない。だが、私の暗殺に使われる事の何と多いことだろうか!! そんな為に作ったつもりは無いのよ!!」


 いつの間にか、エリーゼの話は変わっており、逆鱗に触れたかの様に怒りの感情が溢れていた。


 頭を撫でながら話を聞いていたが、流石にカミナの視線が痛い。……何時から居たのだろうか?


「そっか、そうだよな……。エリーゼは便利な道具を作ってただけだもんな」

「そうなんだよぅ。あぁ、言いたいこと言ったらスッキリした。私もお風呂に入るわ」

「行ってらっしゃい」


 エリーゼを見送ると、犬形態のカミナがソファーに伸びていた。


「(早く風呂に行くぞ! しっかりブラッシングを頼む)」


 どうやら今日一番の大仕事は、相棒のブラッシングで決まりのようだ。

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