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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-10 国賊排除と学院生活の始まり
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ローレン・フォン・ヴィルムート

 ローレン君の槍は、雲水先生の姿を貫く様な勢いで刺突を繰り出し、同時に氷の刃が飛び散る。


「「!?」」


 しかし、雲水先生は避ける事もなく、鎌と鎖の部分を回し、氷の刃と槍自体を滑らせながら受け流してしまった。

 しかも両腕を槍ごと鎖で絡め捕られるオマケ付だ。

 流石にローレン君も、そこまでされて懐に潜られると、他の行動が出来ないみたいだ。必死に鎖を外そうとしているが、外れる気配すら無い。


「ローレン・フォン・ヴィルムート君」

「何だよ……クソッ!!」

「魔槍は━━特に、姿を変える性質を持つ物ならば、尚更取り扱いが難しい。特に君の持つ物は中級程度の能力を持った本物だ。元々、某の適正武器も魔槍でしてね、ついでに本当の使い方を見せてあげましょう!」


 雲水先生は、巻き付けた槍を上に跳ね上げると、空中に弾かれた槍は弧を描く様に落ちていく。━━そして、槍を掴み魔力を込め始めた。


「魔槍の姿を変えるだけが、使い方ではないんですよ……こんな風にね?」


 魔力を解放した槍の穂は、ローレン君の時とは違い、氷の大鎌と呼ぶに相応しい姿に変貌を遂げる。

 それだけの変化に留まらず、周辺の地面が氷に覆われ始めていた。


「魔槍の真価は、これ自体が魔導具としての能力を有している点にあります」

「……何処から話しかけている?」


 俺はすかさず雲水先生のスキルを見定める為、【鑑定】と【解析】のスキルを行使したのだが、それも意味を成さなかった。


 ……雲水先生のスキルには、【槍師】【糸師】【鎌師】のスキル以外変わったスキルが存在しなかった。寧ろ、スキルではなく技として繰り出した物だという事実が、目の前で繰り広げられていた。


 俺の場所からは、雲水先生の姿が見えるのだが、ローレン君の目には見えて居ないのか、周囲を闇雲に警戒して、雲水先生を探す様な素振り迄していたのだ。

 原理は不明だが、正面になれば成る程に見えなくなる。若しくは、痕跡が消えていると云った所だろうか?


「魔槍はその種類の多さから、適した物を見付けるのが難しく、この手の特殊変化をする物は魔力操作によって形を変える事が出来ます。ローレン君の場合、形を変える迄は出来ているみたいですが、魔力を込める量が多過ぎて無駄な変化に成りすぎています。名門貴族としてはお粗末な程にね」

「……フンッ! 黙れ!」

「魔槍の真価は、『いかにして相手の攻撃を出される前に潰せるか』が基本だと、お父様かお爺様から聞いてませんか?」


 声のした方に殴り掛かるローレン君だが、その先に雲水先生の姿は無く、ただ空を切るだけで終わる。


「俺はあんな古臭い教えや稽古なんてしたくもないし、強くさえあれば負けない! 家の皆は俺の力に敵わなかったんだ!!」


 どうやらキレて本性が出てるようだが、ローレン君は典型的な自信家なのか、魔力に物を言わせる事で、大人に勝って来たようだな。


「うわぁ……ダセェなあいつ。自分の家の武術が嫌だってか? 贅沢な奴だぜ、なぁ、ルーク」

「合う合わないってのがあるだろうけど、基本的な槍の型とかは覚えるべきでだよな?」


 アーサーが隣にやって来たのは、ローレン君の叫びが聞こえたからだろう。


「今回は武器の適正を調べるから、全力っても、魔術攻撃無しだろ? 俺もルークも下手な魔術攻撃でセンセを攻撃したらヤベェだろうしよ。身体強化とスキル以外使わないなら、素手喧嘩(ステゴロ)で捕まえる位はしねぇと、あのセンセ認めねぇぜ?」

「あはは……そうだな、うん」


 全くの禁止という事では無いので、魔術攻撃をする生徒は居たけど、武器の扱いや流れで魔術やスキルが必要だからってのが多い。

 下手な魔力調整をしても、咄嗟に抑える事が難しいと思ったからこそ、俺は純粋に身体強化のみに留めていたのはあるけどね。


「ならば、某が君の家の武術を持って、対応しよう。ほらっ!」

「民兵如きが護りの技で、しかも古臭い家の技で敵うわけ無いだろ! 絶対に負かす!!」


 魔槍を返されたローレン君と、鎌を練習の槍に持ち変えた雲水先生。

 激しい打ち込みが始まり、俺達は雲水先生がただ捌くだけかと思っていた。

 しかし、予想とは大きく違う光景が始まっていく。

 確かに打ち込んでいるのはローレン君の方なのに、ローレン君は()()()()()()()()()()()()()()()


「えげつねぇな、ローレン君の家」

「何でだ? ローレンの奴が下がってんのと関係あんのか?」


 雲水先生の行動は、酷く単調だが、最も厭らしい攻撃だった。

 ローレン君刺突が繰り出される瞬間に、その穂先を打ち軌道を変え、足下を払う。

 払った足が後ろに下がるか浮いた瞬間に距離を詰めて、短く持ち直した槍で刺突。


 ひたすらにその動作を繰り返している。

 ただそれだけなのだが、それ故に行動がどんどんと制限されていく。

 ローレン君は、攻撃の度に下がり続けた結果、壁に追い込まれてしまう。


「何でだよ! クソッ!! 」

「護りの技が弱いのではなく、扱う人の技術が君の魔力量に負けただけです。某の様に魔力量もある者が扱えば、魔力中和で単なる技術勝負と成るのです。技術を磨くのは、今からでも遅くありません。家の武術が嫌ならば、ここの先生から習うのも手ですから」


 槍を掴まれ、ローレン君の負けが決まった。

 槍を扱う者としては、確かにお粗末な結果だが、槍の適正はあるのだろう。

 程なくして適性検査が終わり、武器を変更した生徒と現状維持の生徒が各々武器を仕舞っていた。


「これで適性検査は終わりですが、武器の変更をした生徒は、新しい武器を学院の保有するダンジョンに潜り、獲得してくださいね。その為の武器の貸し出しをしていますから」

「若しくは、武器を変えていない生徒と潜るのも1つの手です。某は此方もオススメしますよ。安い品がある武器屋では在りますが、腕は確かです故」


 とりあえず、俺は問題なかったが、他の生徒を確認していくと、ソフィアとリーフィア、エリーゼの三人は問題なかったが、エルザは武器の交換をする組に入っていたのを見つけるのだった。

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