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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-10 国賊排除と学院生活の始まり
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武器適正

「仮にクラーケンを討伐するんなら、ランクが必要か……若しくはカミナに頼るかだな」


 魔物や魔獣のランクは、冒険者ギルドが決めているが、あくまで目安として出しているものだ。

 クラーケンはAランクの水棲魔獣として依頼が出されるが、基本的に複数のチームか大討伐を想定した軍が相手をするのが最良とされている。


(ここで考えても仕方無いし、後でドレアムさん所に行くか?)


「ルーク様、教室に着きましたが……何か?」

「いや、渚とソフィア達が、随分と仲が良くて嬉しいなぁとね?」

「左様でございますか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。其では失礼しますルーク様」


 渚はそう告げると、教室の前から離れて行った。

 どうやら渚もグルの様だが、言葉に嘘は無い。

 しかし、俺の為とはどういう事か?

 渚も時折だが、俺の事が絡むと暴走する事があるからなぁ。


 一抹の不安とまでは行かないが、少しばかりの気をつけて置くほうが良いだろうと考えながら、午後の部の準備に取り掛かるのだった。


「さて、皆さん初めまして。(それがし)はこの学院で、近接武器戦闘の授業を担当する雲水と申す」

「遠距離武器の担当。シスイです」


 午後の部が始まり、教室には二人の先生がやって来た。

 侍を彷彿とさせる様な姿をした、若い男性の雲水先生と、狩人の様な姿をした女性のシスイ先生。

 二人は、各々が違う武器の担当をするらしい。


「先ず、この授業の説明からするわ。簡単に言えば、武器のみを使用する授業よ。ダルガイア先生とは違い、狭い洞窟やその他、従魔や使い魔が喚べない場所での動きや魔物討伐を想定した内容でするから、基本的にフィールドワークになります」

「今日は、皆さんの武器の相性適正を調べます故、今から戦闘場で某等に全てをぶつけて下され。適正外の場合は、合った武器を選びますので、心配は無用━━宜しいかな?」

「先生、武器の相性適正を調べると仰いましたが、殆どの生徒は既に手に馴染んだものを使っているのですけど?」


 他の生徒から声が上がる。

 確かにその通りだと、他の生徒も話し出していたが、先生はニコッと微笑みを浮かべる。


「適正と扱えるのは別物です。例えるなら、鍛冶屋と騎士に同じ条件の剣を与えて、その剣の手入れの出来を競べるのと同じです。扱えるのは良いですが、適正武器を知ることは、自分の安全に繋がりますからね」

「それに、意外なものが自分に合っていた……なんて話はどこにでも有る。某は元々刀を扱っていましたが、本当の適正武器では無かった故、今の得物を手にするまで、何度も死にかけたものです」

「皆さんには産まれた時に、スキルに武器Lvが出ている者、訓練でスキルが追加された者がいますが、後から追加された者は途中で頭打ちに成ります。そこで、動きに応じて武器を選ぶ事で伸びやすい物を選び生存率を高めるのですよ」


 なるほどねぇ……確かにその通りだ。

 俺の場合は、殆どが神様達から貰ったスキルだが、今迄の勉強過程や魔導具使用で習得したスキルはモノにするのに、かなり時間が必要だった。

 それは武器スキルも同じなのだろう。


 武器のスキルLvは高くなる程、武器を持った時の重さや身体の運びが楽になるものだ。

 ウェポンマスターのスキルだと、それが身体に無理が掛かるギリギリの動きが可能となる。

 流石に富嶽と殺り合った時の動きは二度としたくはないが……。


「魔導弓ねぇ? 随分と珍しい物を扱うのね、しかもカスタムしているみたいだし……でも、これならこの折り畳みの機軸を少し変えれば、展開速度が速くなるわよ?」

「それを弄るのは、一度考えましたけど術式を弄り難く成りますから、わざとこの機軸を使ってます」

「あぁ、なるほどねぇ」


 どうやら、エリーゼの番まで来ていたようだ。

 シスイ先生が、魔導弓を見てエリーゼと話をしていた。


「魔力の矢と弦は、使用者に依存するとは聞いていましたが、まさかこんな改修型を見ることになるとは」


 話を聞く限り魔導弓は、一癖も二癖もあるようだ。あの筒が何をどうしたら弓に成るのかも知りたい所だし、魔導具の1つとして作り方を覚えれば、何か役立つ事もあるかもしれない。

 エリーゼも学院が終われば教えてくれる様だから、その辺もしっかり聞いておこう。


「ではルーク君。準備をお願い出来ますかな?」


 ……どうやら、俺の番が来たようだ。先生の向こう側でアーサーが、剣を鞘に戻していた合格したのか安堵の表情を浮かべている。


「一応の保持スキル確認だが、【剣】【双剣】【刀】が近接スキル【糸】【弓】の中間~遠距離のスキル持ちで良かったね?」

「はい、そうです。何か問題がありますか?」

「いや、某も似た様なものでな。武家の出は何処も変わらぬものだなと……さぁ、最も得意な得物で掛かって来なさい」


 雲水先生は、武器を構える。━━鎌だ。

 元々は農民の農具だが、武器として扱われていた経歴は前世の世界にもあった。

 かなり特殊な武器ではあるが、飾り等1つも無い長柄の代物だ。

 そして、雲水先生の構えは特に無い。ただ俺に対して刃先を構えているだけだ。


 対して俺は、刀を構えていた。

 魔剣を構える訳にもいかないし、ジュエルスライムの糸は、多少の加工をしていないと心許ない。

 必然的に【鏡花水月】か【黒獅子 富嶽】の二択だが、大太刀を扱うのは身体の体格から難しく、鏡花水月を使うことにしたのだが、得体の知れない緊張がある。


「綺麗な構えです。しかし、実戦で鍛えられ者と変わり無い芯が有りますねぇ……大丈夫です。この学院内では死ぬことは有りません。まぁ、痛みは有りますがね」


 雲水先生の言葉で、緊張の正体が分かった。

 どうにも身体が強張ると思ったが、どうやら無意識の内に、『先生を殺してしまうのではないか?』と思っていた様だ。


「ふぅ、━━行きます」


 心を落ち着かせるために、深呼吸と内心で祝詞を唱え、改めて構えた。

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