【次は】冒険者ギルドの登録【商会へ】
軽鎧を着たニアが、片手剣と盾を装備して戻って来た。
「それでは、ただいまから、従魔カミナの実技テストを始めます」
「ウサ耳小娘、あのハゲ頭も連れて来い、あの小娘だけでは物足りぬ故な」
いつの間にか、獣人形態のカミナがルルナの隣に立っていた。
「あの……貴女は?」
「今から私のテストをするのだろう? 早く終わらせて良いなら、あの娘だけで良いぞ」
いつもの人型に狼の耳と尻尾が生えた姿は、艶やかさの中に荒々しさを入れた感じで、ドレアムさんも鼻の下を伸ばす程の色香を纏わせていた。
肩を見せる様に開いた着崩しかたの着物姿で、木刀を構えるが型は、居合いの構えだった。
「俺はパスだ、ルークのテストで疲れた。なんで姿が変わっとるのかは聞かんが、従魔の狼で良いんだよな?」
「あぁ、あの姿では人の言葉が話しにくいのでな、一人ならば、早く終わらせるとしよう」
ニアさんを無視して、ドレアムさんと話すカミナを見てニアさんは構える。
「さっきの姿からずいぶんと違うけど、どうなってんの? って言うか一応聞くけど、あたし死なないよね?」
「大丈夫だ、小娘、私の攻撃を一太刀受けるだけで良いぞ」
「受けきれなかったら?」
「まぁ、死にはしないだろうが痛みくらいは覚悟しておけ」
「はぁ、あたしがルーク君とやりゃ良かったかな……何時でもどうぞ」
「では……カミナ参る」
ニアが構え、合図を出すとカミナは、居合いの構えから刀を抜いた。
抜いた刀の先から、衝撃波になった斬撃が放たれ、ニアの構えた盾が砕け散る。
「ぐぁっ!!」
衝撃でニアは吹き飛び、壁に叩きつけられた。
「すまぬ、力の入れ具合をちと違えたようだ『ハイヒール』」
詠唱破棄したハイヒールをニアにかけながら、カミナは申し訳なさそうに謝った。
「逝ったかと思ったわ、何あれ、普通の衝撃波じゃないわ、結界が無かったら、あたし細切れになってた……」
壁に叩きつけられたニアは、直ぐに立つと青ざめた顔でカミナに詰め寄った。
「何も難しいものじゃ無い、只の魔力刃を飛ばしただけだ」
カミナは、刃に魔力を乗せる魔力刃の魔力を、そのまま残して、相手に飛ばしたらしい。
ルークも同じく飛ばせるが、カミナ程の威力は出せてはいない、恐らく飛ばす際の仕方が悪いのだとは理解しているが、どうすれば上手くいくのかカミナは教えてくれないのだ。
「まぁいい、二人とも合格だ。…ランクだが特別枠で、Cランクからスタートする事が出来るがランクはCで良いか?C以降は昇級試験を受けて貰わんといかんのでな」
ドレアムさんが、右手にカードとタグを持って聞いてきた。
「いや、ルークはDランクで私がCランクで良かろう」
「それは何故?」
「ルークと違い、私は時間があるがルークは忙しい、来年から学校にも行かなければならんからな。学校の授業で、私が必要無い時に冒険者として活動する条件でどうだ?」
「あぁ、そうだな……だったらチーム登録をしてカミナだけ活動をすれば良い。ギルドに登録したら、Sランク以外は何処かのギルドで月に数件は依頼を受けてもらうんだが、受けない理由が正当な理由が無い場合、降格や剥奪もあるからな。チームオーダーで動きがあれば、その辺は問題ないそれで良いかルーク?」
「うん、その辺はカミナに任せるよ」
あくまでも、カミナは従魔となって居るので、ドレアムは俺に返答を求めた。
「なら決まりだな、こっちの書類にもサインをくれ、チーム名は来週までに記載してルルナにでも渡してくれれば大丈夫だ」
こうして、従魔登録は問題も無く終わり、俺とカミナは、それぞれギルドカードとタグを貰い王城の客室に帰った。
途中デービルさんに遭遇した為、誰でも使えるライトもとい【ハンドライト】の試作品と説明書を渡し、感想を書いてもらう事にした。
「畏まりました、『ハンドライト』は本日から、試してみます。あぁ、そうでした。ルーク様の『ソース』を売り出す商会が準備出来ましたので、明日良ければ見に行きませんか?」
「もう準備が終わったんですか?」
「はい、食品自体を扱う商会より、総合商会の方が良さそうだったので、中央商業区の知り合いの商会に依頼をしたら、今日の昼に返答が来ましたよ」
「中央商業区ですか?それは何処にありますか?」
「説明していませんでしたな、申し訳ありませんでした。中央商業区は王城と外壁門の中間にある、女神像の噴水が設置されている広場でございます。本日登録に行かれました冒険者ギルドの裏手側になります」
「あぁ、わかりました。あの銀貨やらが入っていた噴水ですね」
デービルさんの説明で、ローマのトレヴィの泉に似ている噴水を思い出した。
「因みに、中央商業区の女神像正面から右にある大きな館が、私が依頼した商会ですね。名前は『フューネラルデ・サンバリュー』と言って二人のだ…ンンッ失礼、女性が開いた商会です…はい」
「二人の女性が開いたと言ってましたけど、どんな物を扱う商会ですか?」
デービルさんが、後半に詰まりかけたが、冬の一月目だから、喉が痛くなる事もある為、気にせずに商品について尋ねた。
「はい、総合商会と言う形態なのですが、各階で扱う商品が違うのが特徴になります。一階などが食品、二階が生活雑貨や小物、三階が服や宝石などを扱い、隣の別館では奴隷や化粧品に魔導具を取り扱いしていますよ」
手紙を俺に渡して、説明をしてくれた。
フューネラルデさんと、サンバリューさんも早ければ明日にでも一度会って、売り上げの分配などの話し合いがしたいと書いてあった為、デービルさんに明日会って、話し合いをする事を伝えてもらう事にした。
「(すみません、ルーク様、必ず御礼は致します)」
客室に戻って行くルークに、デービルは頭を下げた
翌日、ルークはデービルが詰まりかけた原因をその目で、嫌というほどに理解する事になった。
勲章授与式まで後2日となった。




