最初の授業の終わり
「父がバルバドス伯爵家の現当主だからどうしたの? そんなものは関係無いのよ。私は自分から家を抜けたんだから……まぁ良いわ、ルーク君達の出鱈目具合が良く理解できましたから授業に戻りますよ」
サディア先生は、他の生徒の使い魔契約に向かう。俺達はその間に、行われるレースについての話や、餌の確保をどうしようかといった内容を話して、次の行動を待つことにした。
「さて、皆さんの使い魔契約は無事終わりましたが、アーサー君とルーク君の使い魔は此方の想定外でしたので、もう一度呼び出しを行います。種族数を制限した術式用紙ですから、竜種や大型の魔鳥類が出てくる事はありません。基礎授業では二回目に呼び出した子を使う事とします宜しいですね?」
最後の子が契約を終えた様で、そのままサディア先生が戻ってきたのだが、どうやら能力的な問題の解決策が決まった様だ。
「何でだよ、俺の使い魔の何処が悪いんだ?」
「まぁまぁ、落ち着けよアーサー。回りの使い魔を見てよ、殆ど大きくても中型の魔獣だ。さっきから怯えてる子ばかりだよ。それに竜種のそれも、フレアドレイクの攻撃を受けたら、他の子の訓練にならないでしょ? カルネージバードも闇と風の上位属性がMaxレベルになってるし、変異上位種だから変更は仕方無いよ」
「そうなのか? ルークの使い魔も俺と同じ扱いだけど、お前はそれでいいのか?」
「まぁ、使い魔契約したけど、要は従魔契約の召喚者版な訳で、俺なんかは従魔契約の他に、三騎士とかもいるからね。寧ろもう一枚用紙を貰えるって考えたら?」
「もう一枚貰える……そうだな、そうだよな! ならいいか。クエストとかはボルクと回って、授業は二体目の呼び出しで出た奴と訓練すれば、他の奴に迷惑かけねぇもんな!」
ボルクとは恐らくフレアドレイクの事だと思うが、それでいいと思っている内にサディア先生は、再度使い魔契約の用紙をアーサーに渡した。
まぁ、術式自体は召喚者の初歩術式を改良した物だったし、覚えてしまえば用紙も必要は無いのだが言わない方が良いだろう。
「それじゃ、始めますよ。ルーク君も」
サディア先生の言葉に従い、俺も用紙を貰う。再度魔力を流し始めたのだが、先程とは違い一気に流し込み術式を輝かせる事にした。
先程よりも時間は短く、対象を意識して呼び出す。
回りで一番多いのは、【小鳥型】【角兎種】等の小型魔獣・魔物の類い。中型は【蜥蜴種】【狼種】【鹿種】がちらほら見える程度だ。
流石に大型種は、さっきのフレアドレイクとカルネージバード以外は居そうに無い。
「「『ファミリア』」」
ほぼ同様タイミングで、俺とアーサーは2度目の召喚を行う事に成った。
2度目に現れたシルエットは狼型のようにも見える。恐らくアーサーは中型サイズの魔獣だろう。
俺の方も想定より若干大きいが、何とか小型のサイズを引き当てた様だ。
シルエットから見れば、一見スライムっぽいのだが、想像したものが来ただろうか?
「アーサー君の使い魔は【ブレイズウルフ】ですね。フレアドレイクと比べると、若干おとなしいので、授業に支障は無いでしょう……問題はルーク君の方ですね」
「……スライムですか?」
「オーレルカ先生、とんでもない魔力を込めて種族制限した使い魔が、ただのスライムな訳無いですよ……私も図鑑でしか見たこと無いですが、あれは【ジュエルスライム】別名【生きた宝石】【魔術師殺し】ですね」
俺が欲したスライムは、レア中のレア。餌を吸収して成長するのではなく、魔力のみを吸収するスライムだ。
体色は、見る角度により様々な色に変化するマジョーラカラーとでも呼べば良いのだろうか?そんな不思議な進化を遂げたスライム。
とはいえ、魔素の塊を吸収出来る程では無いため、フラクタルの問題解決にはならないのだが、原初の魔導書の魔物素材の項目に、コイツの吐き出す素材は色々と使える事が書いてあったので、ついでだからと喚んでみた。
「ルーク君は、ジュエルスライムを使い魔契約するのですね? と言うか自分で喚びましたね? まぁ魔術が効かないだけで、他のスライムとあまり変わらない能力値ですから貴方がそれで良いなら構いませんが」
「そうですね、回りに合わせてスライムに固定して喚びました。まぁ戦闘訓練になっても問題ないと思いますから」
「わかりました。そのジュエルスライムを授業では使って下さい。それと、最初の使い魔達は、中期末で行う2度目の召喚術を君達は受けない代わりに、戦闘試験から扱う様に変更したから必ず受けるように!!」
サディア先生はそう言うと、杖をかざして何かの魔術を発動させた。
やがて辺り一面には結界の様な物が張り巡らされていく。
「さて、使い魔の契約が先に行いましたが、ここからが本番です。使い魔と魔力を循環させて魔力コントロールを行いながら、最終的に的を破壊して貰います。今日は行いませんが、残りの時間は、使い魔と仲良くなる為の時間にしますので、自由にしてください」
サディア先生の言葉に、皆ぽかんとした顔をしていたが、使い魔との戯れを通して使い魔の事を知るという事だろう。
ジュエルスライムの名前も考えなくてはいけないから、個人的には丁度良かった。
【名前】【種族】ジュエルスライム
【体力】700/700
【魔力】1,000/1,000
【筋力】E
【知力】B
【器用】B
【対魔力】SSS
【スキル】
魔力喰い 糸吐き 分裂・結合 魔力塊排出 魔術吸収 魔術反射
やはり魔術師殺しの名前は、スキルによる物の様だ。
「ジュエルスライム……宝石。変色、んー何にしようかねぇ?」
ジュエルスライムはポヨポヨと弾みながら、名付けを待つように俺の側を移動している。
ネーヴェが見たら追いかけ回しそうな気もするが、ただの猫では無い彼女が聞いたら怒りそうだな。
そんな風にボンヤリ考えながらジュエルスライムを眺めていると、いつの間にか一人になっていた。
どうやら、似た使い魔を持つ者同士で集まっているようだ。
これは名前を考えていたら回りの動きを見損ねたみたいだな。……まぁ仕方無い。
「リトスってのはどうだろう?」
ジュエルスライムに名前を聞いてみると、気に入ったのか回りをコロコロと転がりながらすり寄って来た。こうしてみると、中々スライムも可愛く思えてくる。
「よろしくな、リトス?」
新しい家族が増えたと同時に、どうやって戦うかの戦術を組み立てるのが今後の課題になりそうだが、色々と楽しくなりそうだと感じた授業だった━━。




