ガイルさんの親友
明けましておめでとうございます。
中々仕事の関係と、遅筆の為更新が遅いですが、今年もどうぞよろしくお願い致します。
「いやぁ、ついさっきまで腐葉土を運んでいてね、ルーク君が来る前に着替えるつもりだったんだけど、作業に集中し過ぎてて時間ギリギリだったから……さてと、厄介事の犯人は?」
ハハハと笑いながら鼻を掻いてガイルさんは話していたが、騒動の犯人を門兵に聞いている時の瞳は、戦闘時のソドムさん以上に鋭い物だった……土汚れと半裸でなければ様になっている程には。
「ガイル殿下、犯人は既に捕縛済みで、何時でも取り調べが出来ます」
「グリント、今は殿下呼びじゃ無くて良い。次の大公は俺じゃないかもしれないんだよ」
「しかし、そちらにルーク子爵が居ますので、公式の場と同じと考えるのが……あーもうっ、わかった。悪かった。だからその目をやめろ」
「それで良いんだよ、全く……ルーク君は初めてだな、俺の親友で護衛騎士のグリント・アルクトスだ」
「初めまして、グリント・アルクトスと申します。ガイル殿下とは学生時代からの付き合いになります。見ての通り、熊人族の混合型亜人でございます」
ガイルさんから紹介されたグリントさんは、熊人族の男性だったのだが、胴体以外が熊の珍しい混合型亜人だった。
人族の身体がベースで獣耳や尻尾のある姿。人型亜人。
二足歩行を行う全身が獣形態である獣型亜人。
身体の面積が丁度、半人半獣の混合型亜人。
同じ親を持つ獣人でも、この三種類に分けられる事があるのだが、どうしてそうなるのかは不明とされている。
「ルーク・フォン・アマルガムです。今はただのルークでお願いしますね」
「ガイルと同じ部類のヤツか……わかった。ハァ……付き合う友を間違えちまったかなぁ」
グリントさんの溜め息と表情からして、かなり長い付き合いと苦労をしているのだろう。
ガイルさんもその一言を聞いて目が泳いでいた。
軽く自己紹介をしている間に、外壁の近くにある兵舎へたどり着き扉を開いた。中は門兵以外にも身なりの良い騎士が2名待機していたのか、俺達を見て敬礼した後、グリントさんの方に何かのメモを渡し出ていく。
「……殿下、コイツらからの購入者不味いかもしれません」
「グリント?」
「帝国のガヴェルテス伯爵の方から、先程問い合わせがあった様です。馬の霊獣を連れた二人連れが来てないか? と」
「他には?」
「珍しい霊獣を手に入れた商人から、帝国のガヴェルテス伯爵が購入し、皇帝に献上する予定の霊獣を運ぶルートが、ここの経由だったらしいです」
「そうか、なら話は早いな。ドーラン皇帝陛下に連絡して、返答後至急向かうか」
「は? 殿下、今何と」
「だから、レイさん所に挨拶に行くんだよ。霊獣とルーク君を連れてな。その前に、父さんの所に向かうから、準備しとけよ━━『召喚 フラウロス』」
ガイルさんはそう言うと、窓を開けて何かを呼び出した。聞き間違いでなければ、フラウロスと呼んだ気がするのだが?
召喚の魔術陣が淡い光を放ち、徐々に輪郭が現れる。しかし予想に反して現れたのは、一匹の大きな黒豹。
「フラウロス、ルーク君だよ。俺の新しい家族だ」
「……ゴロゴロ」
「よしよし、ここか? ここが良いのか?」
フラウロスと呼ばれた黒豹は、随分と大人しい。大きいだけの猫にも見えるが、鋭い牙を見せながら喉を鳴らしてガイルさんに撫でられていた。
俺としては、悪魔を思い浮かべたのだが、まぁそんなものだろう。
「コイツはフラウロス。確か【シムーンレパード】だったか、子供の頃に、唯一俺が喚び出せた相棒だよ。それじゃ、父さんの所に向かうから背に乗って。……飛ばすよ!!」
フラウロスの背に乗って俺達は、ソドムさんに会いに向かったのだが、外壁から城までまさか空を走るとは思わなかった。
「いやぁ、相変わらず気持ちが良いなぁ! そう思わないか?」
「中々手触りが良いですね」
ガイルさんは平気そうに話しているが、余程乗り馴れているのだろうなぁ。
速度的には、カミナの下位互換位でしかないのだが、空を駆けるのに馴れてない人には少し厳しい位のスピードだ。
「さぁ着くよ。フラウロス庭先に降りて」
建物をそのまま避ける必要が無いと、あっという間に庭先にに到着したのだが、降りたと同時にソドムさんが駆け付けて来た。
「ガイル……お主はまたフラウロスに乗って空を駆けよったな? おや、ルーク君も一緒か?」
「すみません。ソドム様、少々厄介事に巻き込まれまして」
「よいよい、大方の話は既に得ておる。しかし、ガヴェルテス伯爵の買付をどうするかだのぅ……少し待つがえぇ。━━レイよ少し良いかのぉ?」
ソドムさんは、水晶を手にしてレイさんの名前を呼んだ。
「ソドムのじい様どうした? 何かあったのか?」
「主の所のガヴェルテス伯爵が、ちと厄介な所で買い物をしたようでなぁ。儂ん所の外壁と門、来ていた人らに迷惑を掛けたものでな?」
「ほぅ? なら首を並べて贖罪としようか?」
「ガヴェルテス伯爵は、正直かなりやり手な伯爵だと聞いているが、その辺はどうなんじゃ?」
「優秀なのは先代のガヴェルテス伯爵だ。今の伯爵は……どちらかと言えば残念伯と呼ばれている程でな、ただ、今まで奴の領地を管理出来る者が他に居なかったから仕方無くと言ったところだったのでな。何か不祥事を起こせばそれを証拠にすげ替えてやろうと思っていた所だったのだ」
「ならそちらで任せても良いかのぉ?」
「そうだな、今日はルーク君が来る予定になっているから、書類を片付けに戻る」
ソドムさんとレイさんの話は、時間にして5分も無いくらいで終わった。内容は物騒な物と成っていたのは被害内容からすれば、無理も無い。
「さて、ルーク君。彼等を呼んでもらえるかのぉ?」
「そうですね、それでは『転移』」
俺は目的の為、一度自分の屋敷に跳んだ。
「さぁ行きましょうか。 カルロさん、ルーチェ」
「「……」」
「本当にこの服で行くのか? おかしくないか?」
「アタシもこんなヒラヒラ……まだメイドの格好の方がましだ」
━━━━本日の主役を連れに。




