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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-10 国賊排除と学院生活の始まり
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門でのトラブル

「何コレ!?」


 外壁から門に向けて歩いていくと、そこには無数の人だかりがダムシアンに向かって出来ていた。

 沢山の荷馬車と、荷物を持った人々を眺めながら、俺は貴族用のゲートに向かうと人だかりの理由が分かった。


「規則として通せません!!」

「てめぇ、のされてぇのか!? あぁ?」

「アタシ達のペットだって言ってるじゃない!! ……首輪は失くなったのよ!!」


 一頭の痩せ細った黒い有角馬を連れた人族の男女が、門兵と言い争っている様だ。

 有角馬は首輪も無く、傷だらけだが人に危害を加える様子は見られない。

 ━━つまり、人に馴れているのだろう。だが、一体でも従魔登録しているのなら、従魔師名の確認が出来れば通される筈だ。


 その様子を眺めていると、俺の番になった。


「あの人達はどうしたの? 従魔師名の確認出来ないのか?」

「申し訳ありません。問い合わせをしたのですが、従魔師の登録名確認が出来ないので、規則として入国を拒否させてもらったのです。説明をしても全く聞き入れてもらえない物でして……」


 受付の熊人族兵士に訪ねて分かったが、面倒なのが来ているようだ。


「ルーク子爵、お待たせ致しました。どうぞお通り下さい」


 入国手続きが終わり、ゲートを抜ける。


「クイィーーーン!!」

「コラッ!! 暴れんじゃねぇ!!」


 いきなりの咆哮に振り返ると、メキメキと音を立ててゲートが揺れ始めた!?


 俺は急ぎゲートに向かうと【鑑定】【解析】を重ねて使用し確認したのだが、やはりと言うべきかロクでもない情報が出てきた。


【ネクロ・ホース】【霊獣種】【未契約 洗脳状態】


『死霊を率いる事もある珍しい馬型の霊獣。瞳が青い通常時はおとなしいが、主や仲間と認めた者以外の命令は一切聞かない上、一度暴れ始めると瞳が紅くなり、手当たり次第の物を破壊しない限り収まることは無い』


 鑑定結果から、未契約の段階で察しがついた。

 恐らく希少な魔獣を手に入れた彼等は、売買目的でダムシアンを経由して帝国(ドーラン)の魔獣市に連れて行くつもりだったのだろう。


「魔獣が暴れだしたぞ!! 逃げるんだ!!」

「嫌、助けて━━」


 叫び、押し合い逃げ出す人々が、門から逆走を始めていく。

 それに合わせてか、更に瞳が紅くなり興奮したネクロ・ホースの周囲には死霊らしき者達が現れ、更に悪化した状況から逃げ惑う人々の姿は━━正に阿鼻叫喚の地獄絵図と言うべき物だった。


 宥めようかと思ったが、乗馬は父様と竜馬(ドラグホース)で行う程度しかしていないので、他の馬のに乗った事は全く無い。


「仕方無いな━━『招来、ベリト ゴーム ノルド』」


 俺1人で討伐しても良いが、万が一逃げられたら不味い。

 そこで、周囲の安全を守る為にベリト達を呼び出したのだが、「大将、俺に任せちゃくれねぇか?」説明をして直ぐにゴームから言われたのはその一言だった。


「警戒をしながら、突入するぞ」

「了解」

「問題ねぇ、大将は待っててくれや」


 ベリトはネグロスを構え、ノルドとゴームは各々が霊やネクロ・ホースが逃げ出す隙間を塞いでいく。俺は結界を張り巡らせて、死霊とネクロ・ホースの行動範囲を狭めて誘導しているが、中々厄介なものだ。


「━━死霊を操る魔剣よ、迷える魂を今一度鎮めたまえ」

「ゴーム、一気に行きますよ」

「応ッ!!」


 ベリトがネグロスを使い、死霊の制御を奪いながら鎮めていく。

 その間、ノルド達が駆け抜けゴームが此方の入口を塞いでいた。


「ゴーム、行きましたよ!!」


 ノルドの叫びが聞こえ、ほんの僅な差でネクロ・ホースが飛び出しゴームを弾き飛ばそうとしたのか、速度を上げて行く。


「さぁ、来いやぁ!!」


 構えるゴームにネクロ・ホースは、突撃の動作(モーション)を解く事無く、ゴームはそれを受け止めた。


 固められた地面にゴームの踵がめり込むが、勢いは衰える事無く、引き摺られた後が延びていく。


「ヌオォォォッ!!」


 しかし、ゴームも力を入れて更に抵抗しているみたいで、徐々にだが速度が落ちて来ているようだ。


「大丈夫だ、お前に危害を加えるヤツは居ねぇよ……なっ?」

「ヒュン……ヒューン」


 甲高い鳴き声が繰り返されながら、ネクロ・ホースは動きを変えようとしていたが、次第に動きは鈍くなり、結界の範囲ギリギリの所で動く事を止めた。


「よーし良し、もう大丈夫だ。 怖かったなぁ? ん?」

「ヒヒーン!」


 ネクロ・ホースの瞳は、先程の深紅から清んだ青に戻り、それに合わせるかの様にゴームの側に寄り添う。


「ルーク様、確認したところ怪我人は門兵が二人名、骨折と崩れた材木で切り傷を追っています。アレを連れていた男女が各々打撲と骨折が有るみたいで現在、意識を失っています」

「治療するから案内してくれ、死者は?」

「居ません」


 ノルドに案内されて、受付に向かうと先程の男女は俯きながら呻いていた。

 骨折した門兵は、既に添え木を当てている最中だったが、その表情はかなりの痛みがあるのだろう。


「治療します━━『癒しの風(ヒールウィンドウ)』」


 怪我をした門兵二人に、風属性の回復魔術を使い怪我口を治療したのだが、骨折以外にも大きな切り傷があった。恐らくノルドが言っていたものだろう。


「これで治療は終わりました。どこか他に痛みはありますか?」

「ありがとうございます。痛みはありません……情けない限りです。死者が出なかったものの、ウルムンド王国からお越しになった貴族の方に助けてもらうとは」


 熊獣人の門兵は悔しそうな顔をしていたが、今回の件に関しては、仕方がない事だと思う。

 下手に刺激して、他の人達が捲き込まれれば、更に被害が出ていたかもしれないのだ。


「何事もイレギュラーは在りますよ。『ノーブレスオブリージュ』です。貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなければならぬ。ですから、今回の事は私の護衛が出来るからしただけだよ」


 父様やダリウスから、『ラーゼリア家の家訓』として、ノーブレスオブリージュの精神として常に聞かされた言葉。


『貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなければならぬ。領民を護るのは領主の役目であり、良き領地の礎となる。良き領地が集まれば、善き国と成る。故に民は友であり、宝である。例え、異国であっても変わらない』


 と云う物だが、俺は気に入っている。

 様々な人がいれば、軋轢が生まれる事もあるし、逆に言えば強固な結び付きにもなる。


「男の方が目を醒ましました。どうなさいますか?」


 そんな話をしていると、ネクロ・ホースを連れていた男が気を取り戻した報告が入った。


「あぁ、魔獣を放ったのだから、どのみち助からないでしょう? 放って置いて下さい。あぁ、あのネクロ・ホースは俺が引き取りますが、構いませんね?」

「証拠品ですので、終わり次第でも良ければ」

「構いませんよ、俺の護衛に懐いたみたいなので、移動の時は言ってください。」


 都市等の中に野生の魔獣や魔物が、意図的に放たれた場合、それは国に対する攻撃。テロ活動と見なされる。

 その為の従魔登録であり、ギルドが在るのだが、質の悪い魔獣商人は仮契約もしていない魔獣を売買していると聞いた事があった。


 彼等はそんな魔獣商人の一部だったのだろうが、俺の知る由ではない。後の事はソドムさんや、ダムシアンのお偉方が決めることだ。


「やぁ、ルーク君。すまないねぇ、何かトラブルに巻き込んだみたいで」

「ガイルさん! どうしてここに?」


 ちょっとしたトラブルが片付いた所で、想定外の人物が出迎えてくれた。

 リーフィアの兄で、大公爵家の長男、ガイルさんが何故か半裸、土まみれの姿だったが……。

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