【ウサ耳】従魔登録と冒険者ギルド【受付嬢】
授与式まで後3日となり、俺は王都の冒険者ギルドの前に、犬形態のカミナと来ていた。
父様から、ラーゼリアの領を出た際に、『従魔登録をする必要があるから王都の冒険者ギルドで登録をしておきなさい』と言われていたからだ。
基本的に、魔獣や魔物は討伐する必要がある為、危険なものが多い。
だが、卵から孵化させたり、召喚して契約した場合は別で、契約者の持ち物として扱われる。
その為、従魔のトラブルが起きた際の対応をするのに登録をしておく事で、従魔に対する窃盗や制御失敗時の討伐などを円滑に解決する仕組みが作られていた。
因みに、魔獣と魔物の区別は、生まれかたで分別される。
魔獣は、動物が魔素を吸収し続け、体内に魔石を内包し変化したもので、中には意思疎通が可能なものも少なくない。
魔物は、魔素溜まりが生み出すもの達で、ダンジョンや戦争後の荒野など魔素の高い地で生まれるが、意思疎通出来るものは少ない。
といった具合である。
ギルドの登録は、最低年齢が5歳からで上限は無いが、登録料が銀貨5枚かかる仕組みになっていた。
理由は簡単で、素材の買い取り(植物や鉱石類)を子供でも出来る様にしているからで、上限が無いのは、ハイリスク&ハイリターンな依頼もある為、冒険者のランクをある程度維持する為でもある。
冒険者のランクは、このようなランクに分けられる。
初心者の位置付けであるE~D
普通の冒険者C~B
上位の冒険者A〜S
最上位の冒険者SS
現在SSランクの冒険者は、3名しか居ないが、定住していない為、ダンジョンの救助や、スタンピードに参加していたりと自由な人達らしい。
扉を開けてカウンターの前に立つと、綺麗な白髪とウサギの耳をしたお姉さんが声をかけて来た。
「あら…いらっしゃい、僕君、どうかしたのかな?お父さんかお母さんは居ないのかな?依頼なら向こうのカウンターで出来るわよ、こっちは従魔登録のカウンターだよ」
「はい、この子と来ましたから、居ません」
ウサ耳の受付嬢にカミナを見せた。
「これは失礼しました。冒険者ギルドの登録ですね、じゃあこの紙に君の名前と従魔の名前を書いてから、手をこの水晶に当てて、魔力を流して下さい」
紙を受け取り、名前を書いてから水晶に魔力を流す。
「ウサ耳のお姉ちゃん、これはどれくらい流せば良いですか?」
「水晶が光ったら止めて良いよ(かなりの魔力量みたいね、何者なのかしら?この子)」
水晶が光を放つと同時に、魔力を止めた。
「はい、これで終わりです、次はルーク君とカミナちゃんの実技テストに移りますね、こちらにどうぞ」
ウサ耳受付嬢の案内で、ギルドホールからコロッセオの様な場所に、移動した。
「ルルナ、お前……とうとう頭イカれたか…こんな小さい子を連れてナニをする気だ?」
そこにいた茶髪ポニーテールの女性剣士から声がかけられた。
「ニア…まぁ貴女で良いか、ルーク君は登録に来た子よ、それと子供に手は出さないから、私を何だと思ってるの?」
仲の良さそうな二人を見ていると後ろから渋い男性の声がし、スキンヘッドで隻眼の大男が居た。
「ニア、ルルナ、お前らまたサボりか?ボーナス差っ引くぞ、ルルナに至ってはまた小さいガキ引き連れてるし……5歳か6歳位だろう…ショタコンウサギ」
「ギルドマスターがこんな所に居るのもどうかと思いますが?…後、今回のは違います。登録する子なので、実技テストをするんです……そうだ、ニアとドレアムさんで見てください、多分この子良い所までいけそうですよ」
「へぇ、お前が言うのは珍しいな」
「安全策でこっちに来たのか、秘匿するのに来たのかどっちだ?」
「ドレアムさん、両方です」
「久々の上物か、小さいのに侮れんな」
ドレアムと呼ばれたギルドマスターは、大剣の木剣を担ぎ構える。
「ルーク君、カミナちゃんと全力でやって下さい、この場所死んだりする事は無いので安心して下さいね」
カミナに念話で話しかけるとカミナは嬉しそうに
「(うむ、大したものだな、かなり強いアーティファクトで防音と永続回復が掛けられているな。これなら全力を出しても大丈夫だな、1回だけなら)」
「(2回目出したらどうなる?)」
「(辺り一面吹き飛ぶだろうな)」
カミナの全力を1回でも防げると聞いて驚いたが、今はテストに集中しないといけないので、双剣と刀を剣置場から取り出した。
「何してるの?ニアも行くのよ」
「はぁ?ドレアムだけで大丈夫だろ」
「なら準備だけしてて、多分直ぐに終わるから」
「ルーク君だったな、俺はドレアムだ一応王都のギルドマスターをやってるんだが、武器はそれで良いのか?双剣使いは時々居るが、刀は東の連中が使うぐらいだぞ」
「はい、大丈夫です。両方使えますから」
右の片刃長剣と左の片刃短剣を握り、左腰に差した木刀を落ちないか確認して構えた。
「久しぶりのデスクワーク以外の仕事だ、まずは打って来い」
「行きます……」
足元に風魔術で空気の層を作り出し、ホバリング状態になると同時に、前に飛び込んで切る。
「ほぅ、だが甘い………な!?」
ドレアムは大剣を使い、斬りかかった左手を弾くが、ルークは剣を弾かれた勢いに跳ばされる事もなく、回転の力に変えて上から叩きつける。
ドレアムは後ろに飛び、回避を行うがルークの連撃が続く、足や急所をガードの隙間を狙い斬られる為、迂闊な攻撃や回避が取りにくい。
しかもルークのみならば何とかなったかも知れないが、後ろからカミナが今か今かと待ち構えて居る状態だった。
初撃は、通れば一撃、防がれれば連撃に移る為の囮攻撃で、本来の攻撃であれば魔力刃で各部位が落ちるか、絶命している光景が繰り広げられていった。
「参った、止め」
ドレアムの声が聞こえたと同時にルークは攻撃を止めた。
「おー痛ぇ、結界が追い付いてねぇぞ、ルルナお前あの子、〝視た〟んだろ……どうなってたんだ? 既にAランクかSランク下位の力量だぞ、元Sの俺が防御に専念して回避が出来んかった。……後ろの狼は神獣かなにかだな、昔味わった嫌な感じは無かったが、圧が比じゃない、まだ上のやつだった」
「……視えませんでした、何かに弾かれた様な感じでした。恐らくカミナちゃんがしたんだと思います」
「今から私が戦うあの狼か?見た目は只のホワイトハウンドにしか見えないけどな」
「あれは…恐らく……SSSランクに当たります」
「………帰って良いか?」
ニアは、顔を青ざめさせていたが逃げる事は出来なかった。




