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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-10 国賊排除と学院生活の始まり
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敵のアジト

 転移門を抜けた先は、古めかしい洋館が聳え立つ山間部の様な場所だった。

 しかも、雰囲気は魔素が濃い為に不気味で、他の人の存在を感知しにくくしているのかソドム様の気配がやけに薄い。


「中々に魔物と魔獣の気配が濃いな」

「あぁ、下の方から感じるが、扉の前にもかなり濃い魔力を感じる」

「魔力の質からして、上位魔獣の類いか或は竜種か━━此所からじゃ判断しにくいな、どうする?」


 確かに扉の向こう側に、あからさまな魔力反応があるが、目の前の建物の大きさからして小型の竜種なら有り得なくは無い。


「嫌な匂いがする……。ルーク、私が扉ごと斬り伏せてしまおう」

「嫌な匂いって?」

「薬品と呪具。しかも()()()()()

「!?」


 カミナの耳打ちに、俺は聞き間違えたかと思ったが、どうやら違うらしい。

 彼方のモノと伝えたと言うことは、前世の品物が此方で使われていると言うことだろう。


「仕方無い、扉を開いたら直ぐに散開して入口の確保を行う」

「それしかないか……仕方ねぇ」


 どうやらカミナと話している間に、作戦が決まった様だが、その前に事態が動き出した━━。

 扉の向こう側から、バキバキと扉を破る大きな音がしたかと思えば、魔力の持ち主がその姿を現したのだ。


「……何と面倒な奴が出迎えてくれたものだ」

「醜い外見ですわね?」


 見た目はかろうじて、竜にも見えるが大半の肉は腐り、骨が露出している腐竜━━ドラゴンゾンビ。


 カミナもセレーナ伯爵も鼻を塞ぐ様に手を当てているが、それなりに離れている此所からでも、正直な所この腐臭はかなりキツイ。



「「我々で、ドラゴンゾンビの動きを止めます!!」」

「任せたぞ!! どりゃぁぁぁぁ!!」

「フンッ! セイッ!!」

「『火炎の咆哮(フレイム・ロア)』からの『溶発の咆哮(アブレーション・ロア)』!!」


 父様とセレーナさんの魔術拘束で動きを封じた所に、レイさんとジークリッドさんの剣技、ゼルガノンさんの魔術が、ドラゴンゾンビに刺さる。


「グルォォォォォォォォッッッッ!!」


 辛うじて姿を残す頭部から、唸る様な咆哮が響き渡る中、異様な光景を目撃する事になった。

 切り落とされ燃やされた部位━━その全てが蠢いたかと思えば、元の姿へと姿を変えた。


「これは……再生しているのか?」

「これではキリが無いぞ……まさか、ゼルガノン様の魔術で燃え尽きた箇所すら元通りとはな」

「雷魔術を当てても同じかしら?」

「ルーク、肉が残っている場所を調べてみろ。恐らくその近辺に咒具がある筈だ」


 解析と鑑定を頭部の肉塊に使うが、それらしき反応は無い。

 その上、鑑定は何かに防がれたみたいで通らなかった。

 腹部、前足と探りながら視ると反応は無いが、胸部の近くに僅かに薄く膜が張った場所を漸く見つけた。


(もしかしたら、あの膜の中か?)


 一抹の希望にすがる様に膜に対して解析を発動させる。

 焼け爛れた物が一切無い分、やけに新鮮な肉の様にも見えるが、どうやらアタリのようだ。

 解析の結果は、━━【翡翠ノ勾玉】

 まさか、勾玉が出てくるとは思わなかった。

 何らかの咒具として使われているのは間違いないが、解呪するなりして回収するに越した事はない無い筈だ。


 元の竜が何なのか判断がつかないけども、安らかな眠りに就いて貰おう。

 足下に魔力を集中して、一気に加速━━膜に触れ言の葉を紡ぐ。


「ひふみよいむなや こともちろらね

 しきるゆゐつ わぬそをたはくめか

 うおゑにさりへて のますあせえほれけ」


『一二三祝詞』━━前世で嫌に成る程唱えてきた祝詞。浄化や祓い事、魂鎮の為に唱える詞。

 無理に活性化された霊魂ならば、浄化としての効果であれば、この世界でも恐らく効果は有ると思いたい。


 霊力の変わりに神力を流しながら唱える。


「ルーク、危ない!!」

「ルーク君!!」


 父様とセレーナさんの叫びが聞こえる。

 振り向いた瞬間、俺は思い違いをしていると気付いた。


(━━こいつドラゴンゾンビじゃ無い!!)


 見た目は確かにドラゴンゾンビそのものだが、

 間近で見て漸く分かった。

 骨の殆どが別の魔物や人のモノを繋ぎ合わせた贋作。


 そして、一瞬だけ見えた膜の中には、この作り物のモデルとなった竜の亡骸と卵が、勾玉の魔力媒体と成って埋め込まれている様だった。


「オォォォォォォォォッッッッ!!」


 敵の咆哮に合わせるかの様に、肉や骨の隙間から無数の触手が伸び、周囲を包み込む。


 偽物と分かった所で、眼前の攻撃を避ける事は流石に出来ない。

 転移の発動を試みた所で、発動までの隙で当たるだろう。

 影に潜ろうにも、巨体から繰り出された攻撃が

 躱す事の出来ないこの状態では、流石に無理がある。


 迫り来る無数の触手に退路を断たれ俺は、無様にも弾き飛ばされる事になった。

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