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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-9 家族
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神力トレーニング

【ルークの屋敷】


「これは難しいなぁ……」


 俺はシャガール様から出された試練である神力のコントロールを行う特訓を行っていたのだが、思っていたよりも難しい。


「ルーク君、魔術の無詠唱と同じ様にとは言っても、扱い方が違いますから。其では魔力しか出ていませんよ」

「言葉に乗せれば出来るけど、素の状態でやると何で、出来ないんですかねぇ? 悔しい? ねぇ、悔しい?」


 ティアさんからは指導が入るが、片方は疑問と言うか煽りながら言ってくるので、正直な所うざったい。


「━━腕立て伏せを200回、繰り返し続けろ」


 言葉に神力を乗せ、煽ってきた方に呟く。


「━━ふへっ!?」

「ファナン、貴女は人を煽る事ばかりしてますけど、いい加減になさいな」


 ファナンは、言霊の通りに腕立て伏せを始める所で、ティアさんの神力によって解除されたのか中途半端な体制に成っていた。

 何故二人が此処に居るのかと言えば、理由が2つある。


 1つは、ティアさんに俺の神力のコントロールを指導して貰う事。

 天使は、神力を扱う事が出来るのでは無いかと思い、フラクタルでの出来事が終わった後、直ぐに相談に向かった。

 ティアさんにシャガール様との事を伝えると暫く頭を抱えていたが、


「はぁ……分かりました。抑えるのではなく、制御する方向に変えましょう。指輪が砕けた時点で抑えるのは無理ですからね」


━━苦笑いしながらも、ティアさんは砕けた指輪を仕舞いつつ、了承してくれたという経緯がある。

 因みに、ファナンに関しては、彼女自身の探求の為にと言う理由で無理矢理ついてきただけだ。


 もう1つの理由は、ティアさん達の知識が、デアドラさんを除き、この世界の現代に追い付いて無い為、王都の様子を見たり、外部知識の擦り合わせをしておく方が良いだろうと言うことになり、代表者として俺の屋敷に滞在する事になったのだ。


「ん~? あぁ、そうです。言葉に乗せる事が出来るのなら、自身に掛けてみるのはどうでしょうか?」

「自己暗示ですか?」

「そう、手に神力を集める様な暗示をして、維持する方法と放出する感覚を覚えれば、もしかしたら、出来るかもしれません」


 ティアさんの言葉に従い、自身の手先に集中して暗示を掛ける様に神力を操る。

 やっぱりと言うべきか、言霊自体は俺に対して発動せず、魔力が集まってしまうのだが、感覚を鋭くし指先に集中を高めると、微弱ながら魔力とは違う感覚が確かにある。

 ……とは言え、持って数秒足らずで感覚が消える為、掴んだと思うと、消失しているのを繰り返すのだが。


「余り詰めすぎても、却って出来なくなる事の方が多いですからね。焦ることは有りませんよ?」

「でも、解決が早い方が魔力疾患の方を増やさずに済むんでしょう?」

「それは確かにそうですが、焦る必要はないのですよ。問題は、魔素の瘴気ですからね。散らせば暫くは持ちます。余程の魔物や魔獣が餌としてなければですが……今のところ、その様な話はどの集落からも聞いていません」


 確かに、時間は有るのだろう。

 しかし実際には、フラクタルに残っていた人達は人の姿をしていたが、最早別の種族に変質していた。


 大半の人達は、魔力疾患の対策としてアーカムさんの血を触媒にした【血の結晶(ブラッドクリスタル)】と名付られた結晶を飲み水に入れ長年摂取していた為、【夜の放浪者(ナイトワンダラー)】という人でも魔族でもない者に変質している。


半不死者?とでも言うべきか、寿命自体を超越している様だが、死なない訳ではないという。

勿論元に戻す術はあるらしいが、魔素の瘴気を取り除かねば、同じことの繰り返しとなる。


その為に周囲の魔素の量を調節し、瘴気を浄化する魔剣?聖剣?の作成にあたり、神力を操る事が必要となったわけだが、神力操作の難しい事この上ない。


「旦那様、ティア様、昼食の準備が整いました。此方に運びましょうか? 他の婚約者の皆様は、既にお部屋で召し上がってますが」

「あぁ、ルーチェ。そのまま食堂に行くから良いよ。一緒に食べるかい?」

「いえ、メイド長からのご指導がありますので、失礼致します。お心遣いありがとうございます。旦那様」


鈴を転がす様な声が、耳に届く。

新しい家族と成ったルーチェの声だ。

身分としては、メイドとしているが暗殺者のスキルを持つ護衛でもある。

今の俺より4歳程年上の彼女は、頭を下げて気配と姿を消すと、渚の所に移動したようだ。


「ルーク君の所は、本当に色んな人材が集まりますね? 朧も気に入ったみたいですし、朧もそろそろ動くらしいですけど?」

「あはは……」


まぁ確かに、個性的なメンバーは集まってるが、この無名の地で会った人達も、かなり個性的だと思う。


「(主よ、礼の品を持ってきたぞ)」


唐突にヴォーパルから念話が届いたのだが、魔竜であるヴォーパルを上空から入れるのは不味い。


「『招来、ヴォーパル』」

「……久方ぶりだな主よ? なんぞ妙な気配がするが、まぁ良い。主に相応しい品が手に入ったぞ」


ヴォーパルの腕には、やたらとデカイ岩が握られていた。


「これは?」

「今の(ワレ)が、塒としている場所の鉱物を塊で持ってきた。吾にとってはたいした価値も無いゴミだが、主には宝の様なものであろう?」


竜種が宝物を溜め込む性質が有るのは、この世界でも共通な事で、何ら不思議なことは無いのだが、ヴォーパルの持ってきた岩は、全体が鮮やかな鳩の血(ピジョン・ブラッド)の塊。


ティアさんは、それを見て目を丸く見開いていたが、それも数秒程度で、次の瞬間には糸の切れた人形の様に、へたり込んでしまった。


「何て物を持ってきたのよ……」


呆れた声が呟かれたのだった━━。

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