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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-9 家族
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翼竜 ヴォーパル

「姿が変わる? キメラにでも変質させるのかしら?」


 セレーナ伯爵が呟いているが、既に俺の意識は檻の地竜に集中していた。


「成る程、魔力を補うのではなく、魔石を新たな魔核に昇華させるつもりか?」


 俺の魔力の流れを見ながら、バルバドス伯爵は呟くがそれも違う。

 檻を開き、中に入る……既に生命力の殆どは失われたが、その魂はまだ肉体(そこ)にある。


「(黒曜、お前の使っていない魔物の体組織と、俺の手持ちの素材を混ぜ合わせるぞ)」

「(使わない体組織はどちらに?)」

「(全部ここに)」


 黒曜の使わない魔物や魔獣の体組織を、目の前の素材と俺の異空間収納の素材を使い、魂の箱を造り出す。


 切り取り繋ぐだけならば、ただの『工作』だが

 今から行うのは、『創造』のスキルを極めた状態で行う本気の『再錬成』だ。

 黒曜の様な自己進化を行うのではない。


 本来とは手順が違うが、ベリトの時と近い状態なら、なんとかなる筈だ。

 思い浮かべる姿へと、ディケラプスの身体を魔力で覆い他の素材と馴染ませながら、骨格を変質させていく。


 魂を繋ぎ留めるのも、既に制限時間がギリギリだが、素材との相性も悪く無いのか、だいぶ馴染み、落ち着いているようだ。

 魔力漏れも無く、魔核と魔石に魔力が満ち始める。


 空を駆けたいと願う地竜をそのまま進化させても、ただの上位地竜にしか成らない。

 ならば、全てを創り変える? それも違う。


 同じ魔獣でも、住む地域で異なる進化をする事が確認されている。要は、その進化の可能性を拡げてやれば良い。


 思い浮かべたのは、飛竜(ワイバーン)よりも上位にある風竜(ウインドドラゴン)落雷竜(ケラヴノスドラゴン)の様な、人を乗せて移動を行える翼竜種(ドレイク)


 何度か、討伐された素材を見たことがあるが、卵から孵化させれば、従魔契約する事も出来なくはない為、その外見を選んだ。


(とはいえ、手持ちの素材じゃ能力の会得までは厳しいか?)

 そんな考えが浮かびながら、俺の作業は続いていた。


「ほう、進化の方向を増やしたいのか? 余り物で良ければ、雪と焔のオヤツ代わりに狩ってきたのを別けてやろう」


 カミナの手により、目の前に魔核と魔石が追加され、何かの翼や胴体が置かれる。


「それが終わったら、久しぶりにハンバーグかステーキを焼いてくれ。雪と焔の分も合わせてな?」

「了解、カミナありがとう」


 作業をしながら鑑定すると、魔核はヒポグリフの魔核、魔石はサンダーバードの魔石。そして、翼と胴体は風竜のモノだった。


 オヤツ代わりが、Bランク上位Aランク下位の魔石と言うのに少し笑いが込み上げてきたが、なんとか形になりそうだ。

 そろそろ魂を繋ぎ止めた魔力パスも、限界を迎えそうになっている為、仕上げに取りかかる。


 変質させた身体を、彼が受け入れるかは分からないが、最悪の場合は黒曜に喰わせたらその分も戦力の強化として見れば良いかな?


 全身の魔力を2つの魔核に注ぎ込み、全体を覆っていた魔力も合わせて吸収させていく。

 そして、魔力が満ちたのか、魔力光が徐々に消えていくと、閉じられた瞳がゆっくりと開かれた。


「……」

「目が覚めたか?」

「……」

「俺は黒曜のマスターをしている者だ」

「……そうか、生きているようだな。お主がそのキメラの主人か、よもや地竜ですら無くなるとはな……」


 新しい身体を動かし、翼を広げる目の前の竜は、見た目こそ翼竜(ドレイク)系統の竜族だが黒曜の様なキメラとは違い、強制的なものではあるが、特殊進化の遂げた姿へと促す事が出来た。


 大きさこそ変化は無いが、成体だった地竜とは魔力量も違い、今の方が出来る事が増える筈だ。


「名を寄越せ、契約はしてやる。そこのキメラとの約束は守ってやろう」

「そうだな……ヴォーパルというのは、どうだろう?」

「……ヴォーパルだな?」


 契約が完了した瞬間、魔力が抜ける感覚があったが、同時に回復した感覚はあった。

 とは言うものの、維持魔力で魔力が減っている感じはしない。


「……地竜が翼竜種に!?」

「キメラ……ではないようだが?」


 檻の中に、二人の伯爵も入ってきた。

 檻の中の翼竜と成ったヴォーパルの姿は、確かに別物であるが、キメラではないことを、セレーナ伯達は見抜けた様だ。


「セレーナ様、魔竜ありがとうございました」


 ヴォーパル(鋭いモノ)と名付けた翼竜は、天井を貫き、天空を羽ばたく。


「この竜種は、見たこと無いわね?」

剣竜(ソードドラゴン)? いや、(フィロドレイク)か?」


 飛翔中の翼竜(ヴォーパル)を見ながら、二人の伯爵は予想外の結果に、何とも言えない表情をしている。


「あれは、ジャバウォック。地竜から翼竜への進化を果した魔竜です」

「聞いたこと無いわね? バルバドス伯は?」

「特殊進化なのだとすれば、王都の図書館に記載されている筈だ。……古や伝説のモノでなければな」


 バルバドス伯爵の言葉に少し驚いたが、ジャバウォック自体は、()()()()()は王城の図書館で知っていた。


「さぁ、お食事の御用意が出来ました。中にお入り下さいませ」


 ライザがパーティーの開始を知らせる。

 さぁ、どうなることやら?

 ある意味で特殊なパーティーだが、楽しむことにしよう。

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