【問題は】ザグレブ救出【山積み?】
【???】
(いつから僕は、ここに居るんだろう?)
疑問が浮かんでも、誰も居ないし答えもない。
(何もない、ここは何処だろう)
辺りを見回しても、見えるのはただの暗闇。
(最後に見た景色は、何だったっけ?)
意識しても、ぼんやりとしか思い出せない。
(今は何時?何日?……わからない、わからない)
自分の身体すら見えない暗闇は、考える事を放棄させる。
(もういいや……眠たくなってきた)
深い微睡みに誘われる様に、意識が薄れ行く。
(そう言えば……お父様帰ってきたのかな……)
敬愛する父親が、何かの討伐に向かった事だけは思い出せた。
(たすけて…お父様…)
助けを求める思いだけが、暗闇に飲み込まれて行った。
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【王都東側地区・ザルツ別邸地下牢】
階段を降りると、大理石の床に魔鉄を使った牢が続く部屋に着いた。
一番奥の部屋にザグレブが幽閉されていた。
顔に肉は無く、手足も枯れ木の様になっていて、魔力は、集中して魔力の流れを視なければ、わからない程に薄く、本流は乱れていた。
「ルーク、あやつを鑑定してみよ」
「何故に鑑定?」
「ルークの鑑定は、一般の水準ではないから、恐らく根が見える筈だ」
カミナの言う様に鑑定をザグレブに使った。
【名前】ザグレブ・オムロン・ブラン(5歳)
【体力】20/460
【魔力】2/290
【状態】『衰弱』『魔力枯渇』『憑依』
と表示された。
「カミナ、この状態の項目いままで無かったけど、普通の何でもない時は出ないの?」
「何も異常が無いときは表示されない項目だが、『憑依』と表示されたなら鑑定のスキルを使いこなしたと言う事になる。他にも色々と使えるから試してみるとよい」
「とりあえずは、便利になったと考えておくよ。ここからどうするんだ?」
「先ずは、『ターンアンデット』『サンクチュアリ』の中級魔術で、身体を取り返す。既に身体が限界に近いからな」
カミナはそう言って、『ターンアンデット』と『サンクチュアリ』を無詠唱で並列使用し始めた。
「雑魚が出たら直ぐザグレブに、『ヒール』をかけて体力を維持するんだぞ」
「了解、いつでも良いぞカミナ」
「「3・2・1・0」」
「『サンクチュアリ』『ターンアンデット』」「『ヒール』」
「「「「Gymvmtgmptygm━━」」」」
声にならない声が壁に反響し、ザグレブの身体から黒い靄が抜けて行く。
『サンクチュアリ』によって、守られた身体に戻れない黒靄が、『ターンアンデット』によって消滅した際に魔石に変わる。
足元に落ちた魔石を異空間に収納した。
「さて、ルーク、人形の魔石を外してザグレブの胸の位置に置くのだ」
「カミナ、外して置いたよ」
「では、よく観ておけ、上級魔術だ『復元』」
カミナが放つ光がザグレブを包みこんだ。
10秒程で光は収まり、ザグレブの身体や顔に肉が戻った。
俺はすぐさま、ザグレブを鑑定した。
【名前】ザグレブ・オムロン・ブラン(5歳)
【体力】320/460
【魔力】80/290
【状態】『疲労(大)』『気絶』
に変わっていた。
直ぐにザルツ子爵を呼び、ザグレブを寝室に連れて行ってもらい、陛下達に報告する為トトルを飛ばした。
数分後、トトルが手紙を足に結んで帰ってきた。
手紙には、簡単に書くと以下の様に書いてあった。
〔今回のザグレブの件について〕
邪教徒の罠に嵌まったザルツ子爵の息子を救出するのに成功した報告を受け確認をした。
既に、勲章の授与が決まっているが、功績に対して相応の報奨を与える事になった。
現在、ルークに与える報奨は以下になる。
・三ヶ国からの最高勲章《白龍》《黒龍》《碧龍》勲章
・陞爵と領地、王都内の別邸(場所は決まり次第)
・王都魔術学院の全額免除(8年分)
・藍白魔鉱石のインゴット5本
追伸…式の終了後、迎えを出すからグランツ伯爵と共に来るように。
この手紙を読んだ段階で、俺は二つの考えが浮かんだ。
一つ目は、子供である事を理由に領地を無くす事。
二つ目は、仮に領地をもらう場合に北もしくは西にある未開拓地を貰う事だ。
未開拓地ならば税収が出ないので、村や街になるまで、自分のペースで生活出来ると考えたからだ。
そんな考えをしていたのが悪かったのか、陞爵・勲章式の際に、俺のスローライフがどんどんと遠く離れて行く事になって行くのであった。
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【王城・エルザの部屋】
「さぁ、ルーク君の陞爵と勲章授与式が近付いてきましたねぇ」
「そうですわね、ソフィア様、私も楽しみですわ」
「ソフィア様もリー姉様も準備は大丈夫ですの?わたしは出来てるよ」
ルークがザグレブの救出を終えたと同時刻、三ヶ国の姫達は、集まり何かの準備をしていた。
「でわ、再確認しますわよ、勲章を胸に着けるのは、エルザ、ソフィア様、私の順」
「リーフィアが着けた段階で、一度下がってお父様達の御言葉を聞き、カーテシー後にお礼の言葉を伝える」
「その時の言葉を言い終わったら三人揃って」
「「「ルーク様(君)のお嫁様にしてください」」」
「うふふふ……こうすればぁ誰も文句を言う暇が無いからぁきっと大丈夫よぉ、後はぁ二人共ぉ様を外しましょうねぇ」
「「わかりました(わ)ソフィア」」
「わたし達の夢が叶えられるのはルーク様だけだよね」
「あんな目に、二度もなりたくはありませんもの、正に王子様でしたわ」
「白狼を駆る騎士様の方が素敵よねぇ」
三人の姫はうっとりとしながら、ルークの姿を思い出していた。
「これは面白い事になるでしょうなぁ、ルーク様がどうなるか楽しみにしますかなダリウス殿」
「えぇ、まったくですなぁ、ルーク様がどう対処されるか、年甲斐も無くワクワクしてますよ、デービル殿」
二人の執事は、敬愛する主の為に、黙っておくと言う行動でサポートするのであった。




