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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-9 家族
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大公爵家長男ガイルと貰った品物

「あぁ、ソドム様達の邪魔にならないように、退室して歩いてたんだよリーフィア。ソフィアも偶然だね?」

「そうですねぇ~、私としてはルーク君の後ろに控えている女の子(ひと)に興味があるんですけどねぇ? どなたかしら?」


 笑顔で答えるソフィアの視線は、俺の後ろに注視していた。━━━ドス黒い魔力を全身に纏わせながら……。


「あら、そう言えばソフィア宛の手紙が、私の手紙入れに入ってましたわね。ソフィア読みました?」

「いえ、リーフィアが着替えている間に、ルーク君の魔力と知らない魔力を感知してましたから、そちらに気をとられて読んで無いですよぉ……あら?」


 リーフィアの一言で、ソフィアの視線が手紙に向き、俺から逸れた瞬間、ルーチェは気配を消し去り、俺の側から離れて行く。

 緋緋色金の首輪が無い状態では、流石に分かりにくいが、近過ぎず遠過ぎずといった距離には居るようだ。


「新しいメイドで、護衛ですか? ルーク君の?」

「いや、正確に言えば、俺以外に付く護衛が、正しいのかな? ほら、俺の専属は渚だろう? でも1人じゃ大人数の対応が難しいかもって、メアとエリーゼが言ってたからさ」

「そうですわよね、普段の家事を含めてお一人で行っている訳ですから、清掃しなくても勝手に魔術で住むところは綺麗になるとは言え、食事に洗濯は渚さんのお仕事ですものね」


 現在の屋敷には、『清潔』の魔術を常時発動する様に、魔導回路を仕込んでいるため、定期的な魔石投入を怠らなければ、半永久的に清掃要らずな建物と化していた。

 お陰で埃1つ落ちてはいないが、渚は少し不満な顔をしていたけど。


「おや、これは珍しいね? リーフィアが男の子と仲良くしているとは……あぁ、君がリーフィアの婚約者に成ったルーク君だね?」


 二人と会話をしていると、後ろから声をかけられた。


「あら、お兄様? もう手入れは済みましたの?」

「うん、やっと一段落ついたよ。リーフィア紹介してくれるかな?」


 先程、温室で作業していた男性が、優しく微笑む。


「こちらは、(わたくし)のお兄様で、長男のガイルお兄様ですわ。お兄様、彼が婚約者(フィアンセ)のルーク子爵ですわ」

「リーフィアの兄で、ガイル・ヴァン・ダムシアンだ。一応、農作物や樹木の医者をしているよ。気軽に呼んでくれ」

「初めまして。ルーク・フォン・アマルガム子爵と申します。ガイルさんとお呼びしても?」

「あぁ、構わないよ。何だか弟が出来たみたいで、嬉しいなぁ」


 ガイルさんは、笑いながら答えていた。

 見た目は金髪で瞳が碧色をしている爽やか系なイケメンだが、良く見れば腕や足の筋肉が細いながら引き締まっている。

 どうやら、ソドム様と同じ様な筋肉の付け方をしているようだ。


「そうだ!! 良いのが出来たからあげるよ。錬金術の触媒にもなるんだよね……成長すると抜くときに五月蝿いけどさ」


 そう言ってガイルさんは、温室の隣にある小屋から、青々と生い茂った、子供でも持てる位の鉢植えを持ってきた。


「マンドレイクの鉢植えだよ。普通のやつの使い方は分かるかな?」

「「「えっ?」」」

「お兄様、今マンドレイクと言いました? 言いましたよね?」

「うん、そうだよ。いやぁ、苦労して漸く人工栽培に至ったんだ」

「「……」」


 俺とソフィアは、驚きの余り声が出なかった。

 マンドレイクは植物系統の魔物で、戦闘力は無いが、引き抜く際に強烈な叫びと共に、周囲に幻覚と幻聴を引き起こす為、有る意味で危険な魔物として認識されている。

 錬金術師や薬師の方では、薬や毒薬様々な使い方をすることが出来る素材として見られるが、採取が難しい為、かなり高価な品物として有名だ。……それを人工栽培したとガイルさんは言っていたから驚かない筈がない。


「これさえあれば、独り身の男性が哀しむ事も無くなる筈なんだよ。これは売れるし犯罪も減る筈だ」

「また魔改造したのですね?」

「あぁ、マンドレイクの素材としての効力を、全て葉に集まるように組織を改変させて、叫び声を少なくして、素材を大量採取する事が可能にしてある。その上、更に大きく進化を促すため、魔力の吸収効率を引き上げた取って置きの一品だ」

「その結果は?」


 マンドレイクを魔改造した結果が気になったので、一応聞いておこうと思った矢先、帰ってきた言葉に、またもや絶句した。


「何故か魔力を吸収し過ぎると、根っこから上が、人の姿そっくりな身体に成る個体が出来ました。しかも美女や美少女が多くて、男の個体はトレントっぽくって笑えるよ。でも、かなり柔らかいから、好き者には売れるかな? なんて思ってる」

「因みにこれはどちらですか?」


 持っている鉢植えの中身はどちらかわからないので尋ねたが、ガイルさんはニッコリと微笑むと。


「ゴメン、それだけは分からないんだ。他の個体は成長してるんだけど、それだけ葉っぱばかりで大きく成らないから、多分そういう品種なのかも知れない。でも効力は違いないからさ」


 まぁ、人型に成らないなら貰っておいても……良いよね?

 そんな合図を二人に送るが、ソフィアは頭を抱えて居るし、リーフィアに至っては、何とも言えない表情で悩んでいた。


「そうだ、二人に話があったんだよ」

「「?」」


 話の向きを本来の目的、ラーゼリア領に戻る事を二人に伝える。


「「行きます(わ)」」

「それじゃ、今日、ラーゼリアに向かうけど、二人とも準備してもらうから、一度解散ね」


 返事は早かったので、その場で解散すると、二人とも準備の為に部屋へと走って行ってしまった。


「それじゃ、僕はこれで戻るよ。また会おう」

「はい、ガイルさんも、鉢植えありがとうございました」


 話終えると、ガイルさんも他の作業に戻っていき、俺は1人婚約者達の準備が終わるのを待つのだった。


 暫くすると、鞄を持った二人がやって来た。


「さぁ、ルーク君のお父様達とお兄様達にご挨拶しなければ」

「そう言えば、兄様達に会うのは初めてだっけ?」

「ですね。確かラーハス家の学園都市に行かれていたのでしたわね? 時期的にお会いする機会はありませんでしたわ」

「私は、遠くから見たことありますけど、ルーク君を大事にしている良いお兄様達だと思いましたよ?」


 二人とも初めて会う様だが、ソフィアは何処かで見たことが有るようだ。

 兄様達の事を褒めてくれるのは嬉しいが、どこで見たのだろうか?

 少し疑問を残しつつ、俺は二人と共に、ラーゼリア領に転移をするのだった。

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