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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-8 無名の地
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エルザと帰還

「(翼は隠したから、ワタシん事は言わんでな~)」


 ファナンさんが念話で話してきたが、既にジークリッド陛下にには報告済みだ。とは言え殊更騒いでも仕方無いので、指で丸を作り了承しておく。


「あのすみませんが貴女は?」

「エルっちの友達のファナンで~す!とりま、よろ~」

「えっと、ワタシを助けてくれた人の1人だよ?」

「何故に疑問形?」

「だって、ねぇ?」


 住む所はティアさんの邸宅だし、料理も渚が今はしているが、それまではティアさんが作っていたけど手伝いをしているところを見たことがないんだよなぁ。


「何やら騒がしいですね?ファナン今日の偵察はどうしました?」

「ティアっち、そんな場合じゃ無いんよ~。エルっちのお姉さん達が、ルー君と来てるんよ」

「そうですか……」


(ヤバい、これは本気で怒ってる)

 ティアさんの表情は微笑んでいるが、明らかに目が笑ってない。

 本能的に、危険を感じたのか三姉妹は仲良く隅に逃げていった。


「ルーク君、良いですか?」

「どうしました?」

「先程アーカムから、『近くに居るのなら、メアと共に伝言を聞いた3日後以降に集落来い。出来れば5日後位が丁度良い』と伝言を預かりました」

「確かフラクタルでしたね、ティアさんありがとうございます」

「フラクタルまでの道は、ある程度整地されてますから、そのまま道なりに行けば着きます」


 森の中を駆け抜ける必要が無いのなら、多少は移動が楽になる。

 藪のなかを草刈りしながら歩かなくて良さそうだ。けっこうキツイからね。


「それとこの指輪を差し上げます」


 そう言って、今の俺には大きな指輪を取り出した。

 特に珍しい細工がされたわけでもないが、何か変な感じがする指輪だ。


「これは?」

「神力を含むメギウス鉱石で造られ、私の祝福を与えた指輪です。貴方の神性を抑える効果と回復治癒の魔術を強化する祝福が有ります」

「俺の神性ですか?」

「(貴方の身体が、他の人と違う事は知っていますが、少し神性が強すぎる様です。神に至る程では無いですが、一応の保険です)」

「(ありがとうございます)」


 墜神ベルフォートを復活させない為にかは知らないが、俺の身体を転生させる際にベルフォートの身体を潤滑剤として使ったと、カミナから聞かされていた事を思い出した。


「取り敢えず、エルザ達を王城に送ってか後日この集落からフラクタルに移動かな?」

「そうですね、今から歩いても夕暮れ時に到着しますから、その方が良いと思います。それに例の集落が中間に在りますから」


(近場の集落なら久しぶりに、ラーゼリアの方に戻るとしよう)


 王都の生活に慣れる為に、親元を離れ自分の屋敷で生活する事に成ったが、転移のお陰で王都とラーゼリア領を互いに往き来出来る為、たまに帰ったり逆に屋敷に泊まって貰うこともある、そんな状況なので、そこまで離れているとは感じてはいない。

 それに、『そろそろ兄様達の長期休暇が始まるから明日か明後日にでも帰って来なさい』と父様から手紙が来ていたので、丁度良いタイミングだった。


「それではエルザ達を王城に送ってから、一度親の所に戻ります。明々後日にティアさんに挨拶してから、フラクタルに向かうので何か欲しい物があったら言ってくださいね?」

「分かりました。その時は指輪の祝福を利用させて貰います」


 色々と準備をして、王城のエルザの部屋に戻ったところで、時間は夕方になろうかと言った所だった。

 そして、不貞腐れた顔で頬を膨らませた婚約者に、気になった事を尋ねた。


「結局何が原因で、エルザは帰らないって言ってたの?」

「パパが、開拓に失敗したら婚約を破棄するって言ってたの」

「そうだね、褒美とはいえ爵位が上がれば相応のリスクや責任が問われるから、今回の開拓を失敗した時には、当然失う物もある」

「でも……!!」

「それじゃ、逆に考えてみて? 確かに俺は無理や無茶は……するけども、この開拓は失敗すると思う? 四国の王達と連絡を取りながら、素材の確保や人員の選抜もして貰っているし、期間だって長い。その上こっちにはカミナや渚、ベリト達も居るんだ。そう簡単に失敗はしないさ」


 頭を撫でながら、不貞腐れたエルザの肩を抱き寄せる。

 そんな様子を、アデリアとサイネリアの二人は部屋の外から見ているとは知らずに。


「やっぱり歳の割に落ち着き過ぎな気もする」

「あら、それを言うなら、クリスだってそうだし、宮廷魔術師にも1人、息子が産まれたけれど、その子も天才だと言われてるじゃない?」

「あぁ、バーゼルシュタイン家の所だな?」

「雷と闇の申し子、ヴリトラール・フォン・バーゼルシュタイン君ね」

「でも、錬金術師の勉強が好き過ぎてそっちに特化してるらしいぞ」

「そうなの?」

「何でも、パーティーで錬金術師の薬品玉を身につけた女の子に、一目惚れしたらしくてな」

「まさか!!」

「あぁ、クリスに一目惚れしてるらしいぞ」


 乙女達の話は、目の前の光景よりもこの場にいる三姉妹以外の残念娘。クリスの話題で盛り上がりその場から離れて行くのだった。


「それじゃあエルザ、またね」

「うん、ゴメンね。ルーク君」


 別れ際に、頬に軽くキスを行い離れた。

 俺はそのまま報告に向かう為、一度自分の屋敷に着替えるために戻る。


(報告の後で、兄様達に渡すお土産と父様達へのお土産を買っていこう)


 内心そう思いながら、王城前に転移を行い城門を抜けた。


「ルーク子爵、此方へどうぞ。陛下がお待ちです」


 アナハイムさんとは違う執事に連れられて、応接間に通されたのだが、そこには陛下達と共に、もう2人居た。


「ホッホッ、久しぶりじゃなルーク君」

「まぁその椅子に座りなさい」


 何故か、ソドム大公とレイ皇帝陛下も同席していた。

(これは一体どうしたんだ?)

 心当たりが無いので、不思議に思っていると


「さて、揃ったところで会議を開きたいと思う」


 ジークリッド陛下が会議を行うと言い出した。

 気を引き締めようとして、レイ皇帝陛下とソドム大公を見ると、片や真剣な顔立ちで臨んでいるが、もう方は面倒臭いと言いそうな顔をしている。


「それでは、第36回『妻と娘の機嫌を治す方法を考える会』を始める」


 ━━━━━えっ?

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