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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-8 無名の地
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斬り結ぶ先に見えたもの

 魔力を出し難くする特殊な霧が薄れているからこそ、辛うじて索敵や身体強化の魔術が使えていた。

 とは言え、魔力を出し難い状況は変わらないため未だ攻撃魔術等は使えない。

 一か八かの魔術を使うより、ウェポンマスターのスキル作用と相手の動きに合わせて躱す方がまだ望みがある。

 それでもチャンスは一回のみ、魔術より望みのある賭けに変わり無い。


「━━(つい)が奥義 『千変万化(せんぺんばんか)』」


 振り上げられた腕は、まるで激しい水流の様に押し流される様な太刀筋だった。


「これは不味いな。カミナの言う通り、ステータスなんてのは本当に有って無いような物だな」


 複数の斬撃が身体を斬りつける為に迫るが、躱せるか流せる物を選び、一線の隙間を見つけて行く。

 そして、遂に斬撃を隙間を、その太刀筋の内側に見つけた僅な隙間に踏み込む。

 肩、左の頬、右の瞼の少し上が斬られた感覚が有るが、最早相手の刃が届く事はない。

 振り下ろされる時間を緩やかに感じながら、即座に刃を滑り込ませ、斬り抜ける。

 剣道の様に叩き付けるのではなく、引くように断つ。


「更に踏み込み刃を躱すか。死を恐れぬのか小僧?」

「切り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆけば あとは極楽」

「ハッ! そいつは洒落にならねえな……だが悪く…ねぇ」


 俺がいた場所には、太刀が深く突き刺さり幾重にも見えた太刀筋は、その突きを隠す事と逃げ道を塞ぐ動作だったのだろう。

 言葉はもういらない。

 肉体を得た太刀(イーヴィルウェポン)の首に刃を当てる。


「何か言い残す事はあるか?」

「ちいせぇが、この先が楽しみな小僧と死合えた。最後にお前さんの名が知りてぇ」

「そうか、なら教えてやるよ」


 周囲の霧も消え去り遠慮する事なく魔力を解き放つ。


「俺の名はルーク。ルーク・フォン・アマルガム 貴様の主となる者だ!!」

「ハッ!!お前さんの配下に成れってのか?」

「名も無い貴様に新たな身体を用意してやる。……それに、強い者と闘いたいなら俺より容赦無いのが4人はいるしな」

「何故そんな事が言える? 先程まで殺しにきていた相手に?」

「記憶も少ない上に、ただ斬り結ぶ事だけに生きるのは勿体無いからさ。それに出自が分かれば、記憶もハッキリするだろうし、その姿も本来の物と違うから、本来の(わざ)とは程遠い物と感じたしね」


 最後の奥義を受けた時に、辛うじて見つける事が出来た僅な隙間は、もう少し高い打点か背丈が同じくらいなら、抜ける事は出来なかった。

 そもそも太刀は例外はあるが基本的に騎馬状態で扱われる物を指す。

 それを刀と同じ打ち方で軽々と扱うのだから恐ろしい。

 同時に、魔力の薄い場所や濃い場所が顕現した身体には見られ、首を中心に腕や足首、腰は魔力が濃いのに対し他の部位は全体的に薄く、何とか形を保つだけに留めている様だったからだ。


「お前さんは俺に何を望む?」

「俺が求めるのは2つ、一つ目は、式神として配下になってもらうこと。二つ目は剣術指南役の一人になって貰う事かな」

「は? 何を言うかと思えば、俺に勝ち望むのがそれか?」

「どうだ?」

「もとより敗者の俺に選択肢は無い……好きにしろ」

「じゃあ、一先ず集落に戻るから、そのまま鞘に戻って」


 空の鞘を鏡花水月の下に()き、歩き出すと太刀はその身を鞘に収める。


「名前の希望とかあるかい?」

「特に無い」

「黒曜はどう思う?」

「マスターのお気に召すままで宜しいかと」


 まぁ、転移で戻る程離れているわけでは無いので、ノンビリ歩きながら名前を考える事にしよう。

 しかしこの姿は、他の人には見せられないなと思いながら、傷口の目立つ所のみ治療して帰る事にした。


 ━━━━━━━━━━━━━━━

「討伐完了で、証拠品を持ち帰り中っと」


 メモを取りながら、ファナンはルークの後ろ姿を見ていた。


「いやはや、試練の相手に丁度良いかと思ってたら、悪魔の武器(イーヴィルウェポン)じゃ無いですよ~。報告書これ書くの面倒くさ~い!」


 最初の発見から考えて、進化は無いと睨んで監視を怠ったのだが、目の前で起きた戦いを観察しながら気付いてしまった━━そもそもの相手が違う事に。


「大体、目撃情報からイーヴィルウェポンの可能性しか考えてなかったけどさぁ~。でも報告しないとそっちのが面倒くさいからなぁ~。ティアっち怒ると恐いし」


 呟きながら集落に向かいファナンは飛び立つ。


「馬鹿な子程、可愛いとは良く言いますね。心配せずとも、監視を怠ったお仕置きはしますからね」


 監視する者も、また監視されていたという事実を知らずに。


 ━━━━━━━━━━━━━━


 森を歩き、集落の入り口にたどり着いたのだが、何か様子がおかしい。

 昼間だというのに、霊体の姿を持つ者が普通に見えるし、門番達も居なかった。


「おや、どうかしたのでしょうか? マスター様子を見てきましょうか?」

「いや、広場に集まっているみたいだし、行ってみようか」


 広場には、火が灯った様な明るさと、この集落で知り合った人達が、集まっているみたいだ。

 その中心に何があるのかは分からないが、好奇心で近寄ると。


「ルークちゃんは、あっちに行っておこうかな、子供の見るもんじゃないからさ」


 この集落の雑貨屋のアルケニー族のお姉さんが手を引いて、その場から遠ざける様に移動を始めた。


「何かあったんですか?」

「ファナンちゃんが、お仕事サボったらしくてね、広場でお仕置きされてるの。今回のはティア様かなり怒ってるみたいで、かなりエグいわ」

「ア゛ァ゛ァァァァァァァ……止め、ヤメェェェェェェ」


 直後にファナンさんの悲痛な叫び声が木霊したのだった。

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