【真犯人は】ブラン伯爵の処罰と呪術人形【別に居る】
ブックマークがまた少し増えて、感想もいただきました。ありがとうございます。
今後とも読んでいただければ嬉しいです。
【レシアス城・謁見の間廊下】
「ザルツ・オムロン・ブラン伯爵、謁見の間にお入り下さい」
「あぁ」
4日前の迎賓館にて息子の起こした一件、でザルツは王城に来ていた。
謁見の間に入り、王達に対し跪く。
「ザルツ、面を上げよ、お前とザグレブについての件だが、良いな」
「どの様な結末になっても、謹んでお受けいたします」
「わかった、まずザグレブだが、すまなかった。私が邪教討伐隊にお前を入れなければ、この様な事にならなかったかもしれない」
「……それは何故ですか?」
王の謝罪、本来ならば不敬を働いた者の家族にはしないものをレシアス王は行った。
「ザルツ、お前程の男が理解出来ぬ筈が無かろう、ザグレブは呪術に犯されている、しかもあの糞爺の遺骨を使った禁呪だ」
「……陛下は何処まで…ご存知で?」
「調べ終えたのは昨日だ、あまりにも南大陸の訛りが似すぎていたのでな、解呪は試したのか?」
「解呪を行いましたが…担当者が死にました……」
知られたくなかった事実、暗く苦笑いしながらザルツは結果を答えた。
「あの糞爺は死んだ後も害悪であったか、レナン・オムロン・ブランめ」
同席していたドーラン皇帝は忌々しく呟いた。
続けて獣公国大公ダムシアンが続きを話す。
「まぁ良い、結論を言えばザグレブは助かる見込みが無い。呪術師が言うには元のザグレブの魔力は、糞爺の魔力に飲まれて、既に消えている状態らしい。ただし、中途半端に解呪された為に記憶が封じられた形で成長している。今の内に始末をせねば、また悲劇が繰り返される。といった所じゃわい」
「今回の件は全て、過去に討伐した邪教徒の残党が引き起こした事であった事や、その証拠も確保してある事。それをザグレブ処刑時に宣言する。帝国との中間にあるブラン領を落とす計画が有った結果とは言え、ザルツに対して、処罰を何もせん訳にもいかん、ザルツ伯爵の爵位を子爵に降格とし、以降は陞爵したラーゼリア伯爵の補佐に当たってもらうぞ」
これで王達の裁きは終わりザルツが思っていた物より実に軽い物だった。
だが、それは王達が、怒りを向ける相手が違うだけであった。
「やはり南のか、儂ら縁が、良くある様だのぅ」
「あぁ、あの時の邪教どもだろうか、別の奴等か」
「どちらにせよ、我等が取るのは一つしかなし。」
「「「墜神崇拝の討伐」」」
「ザグレブの呪術に使われた魔導具が見つかったのは良かったが、何処から来たのかが分からんな」
「呪いの効果は完全に無いからのぅ、この人形に残っている魔力をアイネ殿に調べて貰うか、出所はトリアナ殿だな」
「トリアナ殿はラーゼリア子爵の奥方であったな、よし今から向かう事にしよう。この城に居るのだろう?」
こうして三ヶ国の王達は、『魔導具の大図書館』の異名を持つトリアナ・フォン・ラーゼリアの元に向かうのであった。
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【王城・客室】
ルーク達は二人の陞爵や 勲章授与の為、王城の客室にて過ごしていた。
ルークはトリアナと魔導具の作成に取り掛かっていた。
「ルークちゃん、このエーテリア鉱石は、魔力を溜めて必要な時に、溜めた魔力を使う事が出来るのよ」
「考え方からすると、溜め池の魔力版みたいなものですか?」
「えぇ、ただし池と違って魔力だから、暴発するまで溜めては駄目よ」
「分かりましたお母様」
「ルークちゃんは、飲み込み早いし調整も丁寧だから、教えるのが無くなりそうね」
今回俺が作る魔導具は、地球にいた頃、夜間の巡回に使われていたペンライトを作る事にした。
デービルさんに『ソース』の販売や報酬を任せる話をしていたら、夜間の巡回に遭遇したのだが、一人は『ライト』の魔術を使っていたが、もう一人は使っておらず、カンテラに火を入れていた。
詳しくデービルさんに聞くと、
「魔術においても、得意不得意がございまして光の魔術が苦手な者はカンテラを使っております。ただカンテラですと大きさの割に遠くが見えませんので、室内の担当者になりがちです」
と言っていたのだ、つまり遠くを照せるライトを誰でも使えれば、売れると考えた。
だが、なんと無くで形にすると作れる人が居なくなるので、お母様に協力を頼んだ。
格安の材料で作る為に、相談するとお母様は、
「わかったわ、お母さんが言われてる『魔導具の大図書館』の異名が伊達じゃない所、ルークちゃんに見せてあげる」
と張り切り、城のメイドさんにいくつかの素材を頼んだ。
以下が内容だ
【魔銅のインゴット】
【エーテリア鉱石】
【光蟲の魔石】
【レンズ】
【低級魔力糸】
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まず魔力糸を、均等に魔力が流れる様に整える。
魔銅で作った筒に魔力糸を螺旋状に張り付けた物を作り、筒の中にエーテリア鉱石を固定する。
エーテリア鉱石を固定した筒より少し大きい筒に、レンズと光蟲の魔石を固定し、魔石に魔力糸を錬金術で融合させる。
最後にレンズの付いた筒に、エーテリア鉱石の付いた筒を入れて、キャップを閉めて完成させた。
「うん、魔力伝導に問題ないようね」
「早速試してみてもいいかな、お母様」
「どう動くか早く試してみたいのね、でも試すのは少し待って」
「何故ですか、お母様?」
「そろそろアイネが、戻って来るみたいだから、皆でお茶にしましょう」
「アイネ様ですか?」
「えぇ、『グランツとルークちゃんの陞爵とぉ勲章のお祝いを探って来るわぁ』って出ていったから、楽しみにして待ちましょう」
「では、この間作ったクッキーとデービルさんが教えてくれた店の紅茶を出しますね」
「香りが良いから、落ち着くのよねぇ」
トリアナが思い出しているとドアから声が聞こえた。
「トリアナぁ、帰ったわよぉ、扉を開けて貰え無いかしらぁ」
扉を開けると、アイネ様が疲れた顔で立っていた。
「お祝いのプレゼント、持ってきたわよぉ、疲れたから、少し…寝かせ………て」
そう言いながら、テーブルに袋を置き、フラフラとソファーに向かい、もたれ掛かると直ぐに寝息が聞こえてきた。
「だいぶ疲れたみたいね、でも流石はアイネね、良いものを持って来たわ」
トリアナは袋を確認して、アイネにブランケットをかけ、穏やかな顔で親友の寝顔を見ていた。
その数時間後、この部屋で起こる騒動に誰一人として、想像出来た者は居なかった。




