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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-8 無名の地
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ファナン

 運び出された塊を、異空間収納に入れ込み確認すると。

【荊花女王の魔核(SSSランク)×1】

 と異空間収納の内部表示に加えられていた。


「マジか!?」

「この手の輩は魔核を壊すか抜く方が楽なことが多々ある。残り2つは奴の擬似餌に仕込んでいる様だが、本体の魔核を抜いたんだ、最早斬ることも燃やす事も容易に出来るぞ」


 そう言ってカミナは散椿(チリツバキ)を抜き無造作に壁を斬りつける━━そこには外の風景が見えていた。


「ルーク、魔核の確保だ。胸部と下腹部の魔核を抜きに行くぞ」


 その言葉に従い外に出ると、荊花女王の体躯は仰向けに倒れており、活動する魔力が足りないのか枯れ始めていた。

 カミナは貴重部位を切り分けては魔法鞄(マジックバッグ)に入れて走る為、俺はそんなカミナの後ろを追うので精一杯だ。

 そして目的の部位にたどり着いた時に、カミナは散椿を突き刺して切り分けた。

 その内部は空洞に成っており、中央に魔核と吸収途中の魔石が散らばっている。


「これはかなりの量の魔石も採れそうだな」

「いや、使えるのは精々が魔核とそこの管の中にある魔石だけだろう。他のは溶けて使い物にならん」


 カミナの指差した先は、魔石が溜め込まれた管が魔核に繋がっている場所であった。


「中々の長い年月をこの場で過ごしたのだろうがな、魔核を3つも持つほどに成長出来ても、知恵が回らなければ恐れる物ではない。ルーク、後は回収だけだから私は帰るぞ」


 カミナはそう言って俺の影に潜り込み、俺は回収に走る。

 結果として魔核のSSSランクの物が2つ魔核のSSランクが1つ、Bランクの魔石が20個程入手する事が出来たが、どうやらこの個体は、自生していた魔物であり魔素による生成をされたものではなかったらしい。


「お疲れ~、いやぁ仕事が一段落ついて良かった良かった~」


 回収を終えてから暫くした頃、先程の騎士の姿をした天使が話しかけてきた。


「どもども~、私ぃ、名前を言ってなかったよね~ファナンで~す。よ・ろ・し・く・ねルーク君?」

「はぁ、どうも、ルーク・フォン・アマルガムです」


 ファナンと名乗った天使は、少し気の抜けた喋り方をする人だった。


「いやぁ~、ちょ~久しぶりに、仕事に出たらさぁ~、自生の強化個体の荊花女王がいるんだからびっくり、しかもデュラハン・ロードと進化直前の不死者の戦士(リビングソルジャー)が戦ってるわで驚きが2倍だねって感じだよ~。まぁ、一番の驚きは()()()()()()()()()()()()()()()()だね」


 そう言ってベリトの方へ向いていた。


「お前、本当にファナンなのか?」

「そ~ですよ? アエリナ嬢を安全な場所まで護衛して、隊長達の所に戻る途中で一回死にかけて、結局間に合わなかった、どっかの隊長さん達から押し付けられた元領主さんですが?」


 その言葉でベリトとアエリナさんの顔が、明らかに背けられているなと内心思ってしまうほどの衝撃だった。


「あれ? でも貴女の姿、天使……よね? 元は人間だったし、そもそもペッタン娘だったじゃない?」

「そこはまぁ、ぶっちゃけて言えば、気合いと根性……もとい人工生命体(ホムンクルス)の身体を、この天使の身体を使って完成。更に禁術で私の魂を移した訳ですよ…知的好奇心って怖いですよね~アハハ」


 以外と苦労人なのかと思えば、かなりマッドな人の様だなと、最初の喋り方から予測出来ない人のように思えた。


「あ~っと、ルーク君はそのまま真っ直ぐこの森を抜けて行くんなら、『幽結晶の森』には近付かないで下さいね~、一応警告みたいなものなんで…まぁ、入り口に巨大な紫水晶がゴロゴロしてるんで~それじゃまったね~」


 かなり軽い感じの警告をして、ファナンさんは飛び立って行った。


「ベリトとアエリナさんに確認ですけど」

「言わなくても分かるわ、あの娘の見た目は私達の知っている姿じゃ無かったけど、間違いなくファナンだわ」

「まさか、彼女までこの時代で再び出会えるとは思いませんでしたが」

「さっき領主を押し付けられたとか言ってたけど?」

「「…………」」


 ふと思う事を尋ねたが、二人共どうにも反応が悪い事をした子供の様になっている。

 更に問おうかと口を開きかけた時、ベリトが話し出した。


「実は……」


 その口から語られた内容は、確かに押し付けられたと言われても仕方がなかった。

 元々ベリト達は騎士団を組んで居た訳ではなく、仲の良かったゴームとノルドの三人で始めた傭兵が、いつしか慕われ規模が大きくなり維持が難しくなった所で、当時のリヒト王に騎士団として雇われたそうだ。

 その時に補佐官をしていたのがファナンで、人工生命体の錬成を研究していた錬金術師でもあった。

 暫くの年月を経て、当時の騎士団に対して1つの都市を領地として任せられたのだが、貴族の生まれであり管理できる能力が有るファナンと貴族の生まれではないが、纏め上げたベリトの二人どちらかを領主として登録する必要があったらしい。

 そこで、現場に出ても活躍する程能力が高くないファナンが、領主として登録されたのだが最初は本人がそれを拒否。

 結果として、人工生命体の研究を領主の仕事兼任で出来る施設の建造をベリトが認める形で領主になった。

 領主になった後も研究を進め、人工生命体も、様々なバリエーションで戦闘に参加できる様になったらしいが、寿命の問題等の改善を行う事に、その生涯を捧げて居たらしい。

 所が、邪教のせいで戦火が拡がり騎士団の都市にも魔の手が迫った結果が俺の知る今に繋がるようだ。


「とは言うものの、まさか本当に天使を人工生命体に使うとはな」

「確かにその可能性は当時から言っていたわね」


 少しだけ人工生命体の事は気になるが、俺はエルザの所に向かう為、話もそこそこに切り上げて急ぐ事にしたのだった。

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