表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-8 無名の地
141/457

その小さな瞳が映すものは

「この子達が息子のライガスと娘のフィーナよ、ルーク君もよく顔を見せてあげて」


 ファーラ様の自己紹介が終わると、プレア様がそう言って、同じベビーベッドに二人を寝かせた。


「あぁ、プレアとファーラの子供を同じ様な扱い方をしているのに驚いたのか?」

「いえ、小さな子を見るのが初めてで、どうすれば良いのかわからないんです」


 確かに、本妻と側室の子供を同じ扱いにしているのには驚きはしたが、もとの世界と違う事象や行事にはもう慣れたつもりだ。


「はははっ!!そうか、君は大人でも驚く様な事を考えたり行動する事があるからね、1度は神の使いかと思うこともあったが、やはり人の子だね」

「アナタ、少しからかいすぎですよ」

「すまないな、ルーク君。まだ習っていないとは思うが、このウルムンド王国での側室は、他のアマツクニや海洋国家ネレイオスの様に使用人の定義ではないのだよ。家族の1人としての扱いになるのでな、様々な本を読んでいるだろうからつい知っていると思っていたが、よく考えてみれば再来月からドラムシアスの学院生なのだったな。忘れておったわ」


 そう、もうすぐドラムシアスの入学式がある。


 俺は特待生ではないが、王家からの報酬の1つで学費を免除されていた。


 本来なら、お母様の親友であるアイネ子爵が発展させた学園都市の方に入学する予定だったが、なんの因果かエルザ達を助け出し叙爵されて、あれよあれよと様々なトラブルに巻き込まれた。


 結果的には、王都の学院に入れたし、年相応の婚約者達もいる。


 前世よりはかなりマシだろうけど、やはり心のどこかでは満足感が無いのか満たされた気がしない。


 無名の地についての調査も、平行してゴームとベリトのデュラハン・ロード二人に任せており、もう少しすれば戻ってくると連絡も受けて居た。


 学院入学前に陞爵されて、そのまま開拓と学業の両立をするためにも、知識や身体の基礎能力を高めなければいけない。


 カミナが言うには、「この世界で着いているルークの能力ランクは、あくまで現段階の到達している成長ランクだ。怠れば下がるし、鍛え続ければ維持や向上される……とはいえ、お前の身体は普通ではないからな、その常識もどうなるかわからん。能力の減衰は今の所見られんが、研鑽せねばならんだろうな」

 とのことだった。


 そんな事よりも、今は目の前の子供達だ。


 小さな瞳が物珍しいのか、俺の顔を捉えて離さない。


 ただじっと見ているだけでは、無いようだったが突然。


「おぎゃあああああ!!」


 フィーナが泣き出した。ライガスもつられて泣きそうになっている。


 俺はレシアス様に渡さなかったもう一体の同型機械人形(オートマタ)を素早く取り出して、魔力を流した。


 魔術陣が機械人形から放たれると、ベッドの上で展開していく。


 様々な形を描き、魔術陣から現れる様々な光の型がベッドメリーの様に回転しながら動きだす。


「「う~、あ~」」


 ライガスもフィーナも、暫くの間その線を目で追う様に動かして居たが、やがてスヤスヤと眠りに落ちた。


「ほう、触る物ではなく魔術の応用で遊ぶのか。しかも魔力密度を厚くして形を残した物だが触れても怪我もないな」

「確かアマツクニの方でこういった型の玩具を扱っていましたね」

「はい、これは魔石に蓄積した魔力を、各々の属性色に変色して型を生み出して遊ぶ魔導具です。使用者の適正魔術に応じて出せる色が異なりますが、大半の人ならオール・マジックを持っているので、全色出せると思います」


 そう言って俺は、機械人形の魔力を止めた。


「これは売り物かい?」

「いえ、これは失敗作なんですよ。ジークリッド様に渡したのと同型機体の別オプションになるんですが、初め造る時に本来ならオルゴールの音が子守唄を流す様にしていたのに、魔石に必要な魔力が確保出来なくて流れないんですよね」


 魔石が持つ元々の魔力以上の魔力を貯めると、暴走する事がある為、開拓用の魔導具に使う魔石の中でも、ランクのそこそこ高い物を選んだがそれでも出力が足りず、完成したものは自分の魔力を圧縮して創った最高品に近い魔石を使うことになってしまった。


 この機体の魔石は、竜蟲の魔石であったが、恐らく魔術陣や命令式を複雑化させ過ぎたのと、ベッドメリーの充電魔力の魔石に兼用した事が原因の1つだと推測される。


「これは暴走の危険性は無いのかい?」

「はい、暴走はしませんが、先程も言った通り改良が必要です」

「そのままでも使えるのなら、譲って貰えないか?」

「えっ!?」

「いやぁ、最近夜泣きでプレア達も余り眠れないみたいでね、さっき貰ったのと合わせて使えば、使用人の特にアナハイムの負担も減るからどうだろうか?」

「そういうことなら、構いませんよ」


 そのまま2体の機能説明を行い、暫く雑談を行った所で、エルザがやって来て軽く話した後そのまま交代する形で俺は王都の屋敷に戻った。


 こうして、俺は狼型の機械人形を祝いの品物として献上したのだが、アナハイムさんから後日「お陰様で久々によく眠れました」とお礼の品物が帰って来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ