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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-7不思議な細工師
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フェーヴ山道

 魔術陣から現れたグリフォンは、その羽を広げ2度程羽ばたく。


「……随分と久方ぶりの呼び出しだなフォロン・ドナートよ?」

「済まないラファール。フェーヴ山道まで急ぎたいんだ!!」

「ヤレヤレ、たまに喚ばれたらこれだ。先ず状況の説明をせよ、戯け者めが……それにしても面白い者が居るなぁ、小僧。名は?」


 グリフォンは、フォロンさんに小言を言いながらも猛禽類の瞳で俺を見つめながら名を聞いてきた。


 上半身はと鷲、下半身は獅子の体躯を持つ知性の獣と称されるグリフォンは、契約を行うのも難しいとされる神獣の系譜であり、礼節を知らねば殺される事もあるとも言い伝えられている。


 しかし、目の前のグリフォンは些か変わっていた。


 色が普通のグリフォンとは全く異なる黒色の体毛と血のように赤黒い瞳を持っている個体だ。


「私の名はルーク・フォン・ラーゼリアと申します。近い内にラーゼリアの部分はアマルガムに変わりますが」

「そうか、ではルーク、この阿呆の変わりに、説明を頼めるか?」

「あら? ラーファルは相変わらず鳥目なのね?私の姿が見えないのかしら? あぁ、鳥頭だから仕方がないのかしらね?」

「フン、相も変わらず喧しい娘だ。それと余の名はラファールだ。ルークもそう呼べ」


 何が起きているのか、もう訳が分からない。


 フォロンさんが喚んだのはグリフォンで、セレーナ様も知っているけど、何故か煽ってるし礼節の欠片もないがその対応に気にもしない様子だしどうなってるの?


「埒が明かんな、フォロン額を貸せ」


 ラファールはフォロンさんの額に、頭を付け合わせると、直ぐに離した。


「くだらんな。フォロン・ドナートよ。余を喚んだのは間違いでは無いが、この様な些末な用事に呼び出された余の気持ちが理解出来るか?……仕方無い、今回だけだ。わかったな主よ?」

「ありがとう。ラファール」

「フン、礼なら馬肉を喰わせよ。3頭程で良いぞ」

「あら、なら丁度良いわ。今、フェーヴ山道で増えてる魔物と魔獣って馬系譜とかのだから好きなだけ食べて頂戴」

「暫く見ぬうちに図太い神経も大木の様になったか、哀れな」


 会話が終わったのか、フォロンさんはラファールの背に乗る。

 セレーナ様は面白い事が無くなったと言わんばかりに屋敷に戻っていく様だ。


「ルーク、余の背に乗るが良い。フェーヴ山道でのコヤツの護衛を任せたいのだ。余は小回りが効かぬ故な、降りた際の周辺警戒を頼みたい。コヤツは集中力は凄いが周りを見んからな」

「分かりました。渚は後で喚ぶね」

「はい、ルーク様。お待ちしております」


 側に控えていた渚に声を掛け、フォロンさんと共にラファールの背に乗り、フェーヴ山道へ向かうことになった。

 まさか中腹部に到着早々、思わぬ展開が待ち受けているとは、この時の俺は思っていなかった。


 山道の中腹部付近には、おびただしい血溜まりと三人の人影があり、対峙する様に大きな黒い塊が三ヶ所で蠢いているのが確認出来た。


「━━いた。ラファールあそこに降りてくれ!!」

「喧しい、言われずとも降りるわ」


 その言葉の通り三人の人影を目指しラファールは降り立った。


「「━━━━━!?」」

「━━━━!!」


 近付くにつれ声が聞こえてきたが、どうやらラファールを敵と思っている二人を、一人が違うと止めている様だった。


「助けに来たよ!! ラヴィニア、アルマ!!」


 その声が聞こえたのか、攻撃魔術を放とうとしていた二人は直ぐに魔術陣を消し、へたりこむ様に座ってしまう。


 ラファールから降りたフォロンさんは、二人に駆け寄ると、二人の頭を抱き締める。

 一人は、お店で見た青い短髪の女性アルマさんもう一人は、薄い桃色の髪をお団子の様に纏めた切れ長のアーモンドアイを持つ女性だった。


 ここからでも二人とも顔を紅く染めているのが確認出来る。


「なんぞ、ルーク。来たのか?」

「やっぱりカミナだった。どうしてあの二人と居たの?」

「成り行きと言うか、偶然と言うかな。この一帯の討伐をしている所に入って来たのだ。そこを保護していた」

「そうか、『招来』《渚》」

「先程ぶりですねカミナ?」

「とっとと片付けるか。渚は右を、ルークは左だ」


 もう一人はやはりカミナであったが、話を聞けば、どうやら討伐中に二人を保護していたようで、残りを三人で片付ける方向になっていた。


「カミナ、さては遊んでいましたね?」

「はてさて、なんの事だ?」

「貴女ならこの様な群れ直ぐに片付いたでしょう?」


 確かにカミナなら、群れの塊をこんなに残すことは無いだろう。


「ルークの土産物になりそうな物を捜していたのだがな」

「土産物って馬の魔獣か?」

「あぁバイコーン、ナイトメア、どうもつまらん物ばかりだった。やはり竜馬(ドラグホース)の原種が欲しいな。若しくは上位種だな」


 カミナはそう言うと、武器を構えながら三方向から来る群れを見ていた。


 いざ討伐に向かおうとしたその時、背後から放たれた魔力に、普段なら驚く表情を見せないカミナが目を丸く見開いた。


「ルーク、それと取り巻きの者も退いておれ。余の主が、主足る由縁が見られるぞ」


 ラファールの言葉が聞こえたのと、ほぼ同時に此方に向かっていた気配の半数以上が消え失せた。


 振り返ると、そこに居たのは青黒い魔力に全身を包むフォロンさんがいたのだが、攻撃魔術陣を展開し無詠唱で行使している姿は、同じ人には見えなかった。


「……『抗えぬ破壊の渦(ジャガーノート)!!』」


 呟きにもとれる程の小さな声で放たれた言葉は、魔術名だと思うが魔術陣は無く、変わりに残っていた敵勢力の反応は一部を除いて消失した結果が残った。


「ラヴィニア、君の街での疑いはこれで晴れるよ。もしかしたら感謝されるかも知れないね。アルマもラヴィニアを信じてくれてありがとう」


 声は確かにフォロンさんの物だが、明らかに異質な魔力はそのまま存在していた。


「フォロンさん?」

「ルーク君は二人を頼むよ、この魔物達が増えた原因を捕らえて来るからさ。償いは必要だよね」


 そう言うと、背中から魔力の翼を生やし、目では追えないほどのスピードを出して飛び立つ。


「やはり主の戦う姿は素晴らしい。これこそ魔王の系譜に名を連ねし者の魔力よ」


 ラファールの言葉に、俺は耳を疑うのだった。

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