【三人娘】大体の子供はトラブルメーカー【再び】
少しずつ、ブックマークが増えて来て、嬉しく思っています。
引き続き楽しんで読んでもらえる様に頑張ります。
【王都レシアス西区】
ガンッ…ガッ…ガンッガンッ
鈍い何かを叩きつける音、そこには二人の少年が、木製の剣で打ち合いをしていた。
一人は銀色に金色の混じった短髪で、蒼と碧のオッドアイ、目付きは、切れ長のアーモンド型の少年、ルーク。
もう一人は、ルークの兄で、シャギーカットされた銀髪、碧色の丸目だが凛とした顔立ちをしている少年カイン。
先に打ち付けていたのはカインで、ルークは右手の木剣のみで防いでいた。
「打ち方止め、ルーク交代だ。次は俺が受けよう、ルーク好きに打て、何をしても良いぞ。俺を下がらせたら、何でもは、無理だが出来る範囲でお願いを聞いてやろう」
声をかけたのは、二人の父親で、ラーゼリア領主グランツ・フォン・ラーゼリア。
その父に対しルークは、目を輝かせて、
「本当ですか、父様、では行きます」
「ルークほどほどにな」
と先程まで打っていたカインが苦笑しながら告げた。
そこにランニングから戻った次男ルシアンが
「何?父様とルークが打ち合いするの?」
「あぁ、どっちが勝つと思うルシアン?」
「内容は?」
「何でもありのルークが打ち」
「えげつねぇ、父様今までルークと打った事があったっけ?」
「無いよね」
「俺はルークね」
「賭けに成らないじゃないか」
「何気にカイン兄様も酷いな」
そんな会話の中、親子対決は始まった。
ルークは上下左右に斬閃を放つ、グランツは二刀流の左のみで受け流す。
ここだけ見れば、グランツが優勢に見えた。
次の瞬間、グランツは我が目を疑った。
ルークの斬閃が無い所から、刃が打ち付けられたのだ、殺気の無いフェイントの様な、しかし確実に狙って放たれた一撃、グランツは思わず両剣で受け止めた……はずだった。
止めたのは左手の剣のみ、グランツの右後ろ首に木剣が突き立てられていた。
「参った、降参だ」
結果はルークの勝ちだった。
見ていたカインとルシアンは、
「「やっぱりルークの剣術えげつねぇ」」
二人して同じ言葉を出していたのであった。
「何をしたんだルーク?正直解らなかった」
グランツは、息子に素直に聞いた。
「簡単に言うと、錬金術で木剣の形を変えました。振る時と突きの最中に、少し長さを変えてタイミングをずらして、あとは見えない位置に隠しながらここぞの一撃です。」
因みに、ルークが着けている手袋内部に、錬金陣を仕込んであるため、某錬金術師の様に指パッチンで火をつけるといった事も出来る。
これが本日の訓練の様子だったりする。
その日の夜、貴族パーティーの日がやってきた。
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招待状に記載された迎賓館は、ロココ様式の、高水準に達した職人の技による、華やかなインテリアで彩られた、正に貴族の空間とも言える場所であった。
「父様、今回の集いは、何をするのですか?」
「ルーク、簡単に言うと、今回は子供同士の挨拶みたいな物だ」
「あぁ、つまりは子供を使った権力者の自慢や繋がりの確保ですね」
「時折私は、お前が本当に自分の子供か疑いたくなるよ。……普通そんな事を5歳の子供が考える事がおかしいのだから」
「心配しなくても、私は父様の子供ですよ、お母様とアイネ様の魔導具でも、きちんと証明されたでしょう?」
「まぁ、凡人から天才が産まれる事があるから、気にはしない事にしているが、変なことに頭を突っ込むなよ」
グランツは、ルークの頭を困り顔で撫でると、知己の貴族に呼ばれた為、ルークと向かった。
そこに居たのは、王都と帝国の中間位置にある領ブランの伯爵ザルツ・オムロン・ブランの姿だった。
「やぁ、グランツ子爵、調子は如何かな?」
「これは、ザルツ伯爵様、お体に変わり無さそうで安心いたしました。こちらは、息子のルークです」
「お初にお目にかかります、ザルツ・オムロン・ブラン伯爵様、私はラーゼリア領、領主グランツ・フォン・ラーゼリアが三男、ルーク・フォン・ラーゼリアと申します。若輩の身なれども、以後お見知りおきお願いいたします」
片膝をつき頭を下げたまま、挨拶を行うと、
「おぉ、グランツ、これはなんとも賢い子ではないか、確か5歳と聞いていたが、家の馬鹿息子と取り替えたいくらいだな」
「ザグレブ様とですか?」
「あれに様は要らん、去年は連れて来なかったが、今年は仕方無く連れておるが、あそこに居るわ」
ザルツ伯爵が見ている視線の先には、肥満体型の子供が、数人の取り巻きを引き連れ、テーブルの一角を占拠していた。
「あれは、死んだ爺様の悪い所を煮詰めた様な愚息だ、女癖、暴力沙汰、恐喝まがいに成りそうな事を平気でしているからのう」
とザルツ様が言った矢先、グラスが割れる音がした。
ザグレブが三人の女の子達に詰め寄って、憤慨している姿があり、ここまで声が聞こえてきた。
「いい加減に止めてください、私達は貴方に興味無ありませんの」
「お前達は、誰に向かってそんな事を言っている。俺様は伯爵家時期当主、ザグレブ・オムロン・ブランだぞ、俺様の女になれと言ったらなればいいんだよ」
ザグレブは、次期当主候補の為、ある程度、甘やかされて育ったようだった。
「………伯爵様不味くないですか?」
「あぁ、不味いな」
グランツがザルツ伯爵に言ったと同時に、
━━パンッ……乾いた音が鳴る。
ザグレブが、女の子の一人を殴ろうとした為、ルークはその手を受け止めた。
「貴様、何をするのだ、今からこの女達を、しつけてやろうとしているのが分からんか」
「お声をかけるのであれば、お相手の顔くらい分かった上で、かけた方がよろしいですよ、貴族として振る舞うのでしたら」
「何だと」
「上位の貴族様と話しをする際、格下の者はどうするか、解りますか?」
「貴様は馬鹿にしてんのか?『目上の方から声をかけてもらうまで待つか』、『品物を献上する際の話す機会を使う』当たり前の事を聞くな」
「ではザグレブ様、こちらの方々がどちら様かご理解出来ていますか?」
「どこぞの子爵か男爵家の女達だろう、伯爵家は俺の所を含めて3家しか来て居ないからな、侯爵家は居ないから、この場で一番偉いのは、伯爵家の人間だ」
堂々と宣言したザグレブに対し、周囲の反応は凍り付いていた。
皆、騒ぎの中心に居る女の子達の正体に、気が付いたからだ。
本来ならば、来る筈がない爵位の人間が来ているという事に。
エルザ、ソフィア、リーフィアの3王女がそこに居た。




