婚約者達とのデート ソフィア篇
リーフィアとのデートを終えた後、彼女から貰ったソフィアのメモを見る。
綺麗な文字で書いている内容は一言。
『貴方の側に』
そう記されているだけだった。
一度宿屋に戻り、手掛かりが無いか確認しようと借りた部屋に戻ると、何か違和感を感じた。
部屋の内装には変化が無い。
『探索』の魔術を使用しても、特に反応が無いのだが……何かが引っかかる。
ベッド周りやクローゼットを調べても、何も無い。
そして、窓を閉めようと振り向いた瞬間。
背筋が凍り付く様な寒気がして、違和感の正体に気がついた。
――――何故、窓が閉まっているのか?
部屋から出る時に窓を開けていたのだが、いつの間にか閉まっている。
ここは3階の角部屋であり、入り口も1つしかない。
窓からの侵入は出来なくはないが、表通りから目立つ事になる。
『貴方の側に』
この言葉の通りであるなら、恐らく彼女はこの部屋に居る筈だ。
冷静に考えた結果、1つの結論に至る。
「ソフィア、何時から影の中に入って居たの?」
俺の影に問い掛けるが返事は無い……しかし、尻尾は掴めた。
別の影に移動しようとした魔力に対象を合わせ、影の中に手を入れると指先に何かが触れる。
そのまま触れたものを掴み影の中に潜り込むと、そこには目を丸くして驚くソフィアの姿があった。
「ソフィア、見つけた」
「見つかってしまいましたねぇ」
悪戯が見つかり、舌を少し出して笑う彼女に呆れつつ、影から出る。
「ルーク君、今日のデートはお家デートですよ」
「それはどうして?」
「朝からエルザちゃん、お昼前までリーフィアちゃんとデートしていたから疲れたでしょう?」
確かに時計を見れば、丁度お昼の時間になった頃だった。何も食べずに動くのは少しキツイ。
「ソフィアは外に出てデートしなくても良いの?」
「私はこのままでもデートだと思ってますもの……ルーク君が欲しいなら写し絵を撮りに行きますか?」
出たくないという訳では無いらしく、服装は外に出ても大丈夫な様に白いコートを着ている。
「そうだね、ソフィアとの写し絵は欲しいから、俺からの我が儘……聞いてくれるかな?」
「ふふふっ、良いですよぉ。その代わり、今日のデート残りはお家でゆっくりデートしましょうねぇ……」
微笑む彼女に安堵すると同時に、先程とは違う寒気がしていたが気にせず写し絵のお爺さんの天幕に行く事になり、『転移』での移動を行った。
天幕に入ると、お爺さんがやって来て手招きをしている。
「先程の写し絵が出来ておるよ」
そう言われて封筒を2つ差し出してきたので、そのまま受け取り中身を確認。
どれも良く撮れており二人とも手を繋いだり寄り添う姿が写されている。ペンダントに加工するのにも丁度良さそうな物も何枚かあった。
「良いものは有ったかね?」
「これを全部貰えますか?」
「ふむ。それでは料金を貰うとしようかね」
「料金なら今回の分も含めてこれで」
5枚づつ入っている封筒と、ソフィアとの写し絵の代金を合わせて、金貨1枚を渡した。
お爺さんは少し驚いて返そうとしていたが、そのままソフィアの元に走り並ぶと、お爺さんはやれやれと言った表情でキャメラを構えて撮影が開始する。
「ソフィア、この後アクセサリー店に行かないか?」
5枚取り終えて天幕を出た所で俺は誘うように切り出した。
「構いませんよ、ルーク君の行きたいところはそこが最後ですか?」
「そうだね、ソフィアにプレゼントをしたいから行きたいだけなんだけど、どうだろうか?」
「相変わらずマメですねぇ、では参りましょうか?」
ソフィアの返答は、少しだけ嬉しそうな声色で返ってきた。
歩きながらアクセサリー店に到着すると、丁度お昼休み中なのか、何時ものお姉さんは居らず違う店員さんが売り子をしているようだ。
色々なアクセサリーが置いてある中で、ソフィアは何かを探している様だが、見当たらないのだろう。そのまま俺の方へと戻って来る。
「めぼしい物はありませんでしたねぇ」
「そうか、それじゃ仕方がないね……所で、何が欲しかったの?」
「普段使いの出来る魔結晶のブローチが在ればと思ったのですけど、ありませんでした」
ソフィアが見ていた魔結晶が使われているアクセサリーコーナーを見れば、確かに売っていた様だが売り切れのタグが掛かっていた。
「店長お帰りなさい」
「あぁ、戻った……どうしたん?」
どうしようかと思っていると、店の方に何時ものお姉さんがやって様で俺達に話し掛けてきた。
「じつは……」
お姉さんに経緯を話して見ると、お姉ちゃんは難しい顔をして考え込んで店の奥に入っていく。
「少年、君は錬金術使えるよな?」
「……使えますけど?」
「こいつを加工出来るか?」
店の奥から戻ったお姉さんの両手には、大人の頭程の魔結晶が掴まれていた。
「アタシが使いたいのは、この中心に光る深紅の塊だ。それの周辺にある透明な魔結晶はランクは高いが殆ど削り出す形に成るから、余程高い錬成レベルを持ってないと、ただの粉にしか成りゃしない」
かなり高いランクの魔結晶なのは、今『鑑定』と『解析』のダブルチェックをしているから分かる。その正体は『魔竜の心核』と呼ばれる錬金術のレベルが7の者でも扱い方を知らなければ到底扱いすら出来ない代物だ。
「それがどう繋がるんですか?」
「アタシのレベルだと、分離は出来ても再構築が出来ないんだ。でも君なら出来るでしょ?」
「どうしてそう思うんですか?」
「一言で言うなら勘だね……だから君に内核を取り出してもらう。そのお礼として外殻をあげるというのはどうだろうか?」
普通なら専門業者に頼む品だ。子供の俺に頼む様な物ではない。
それを勘で任せようと言うんだから、大した人だ。
「一応扱えるとは思いますけど、とは言え『魔竜の心核』何て初めて見ましたけどね」
「アタシのレベルだと7には成らない6って所だからね、中身を割らないようにしとくれよ?」
話を聞きながら、外殻の様に纏う魔結晶をノミの様な魔導用工具で剥がしていく。
その間ソフィアは、俺の顔をじっと見つめては、時々視線を反らすといった動作を繰り返していた。
思ったよりか硬く内核の取り出しに苦労したが、何とか40分程度で取り出す事に成功したので俺はそのまま手元に適当な長さのミスリルチェーンを取り出すと再構築と錬成を行う。
ミスリルチェーンは、そのまま3個ブローチの土台に姿を変えて目の前に転がった。




