婚約者達とのデート リーフィア篇 リーフィア視点
待ち合わせの時間までもう少し。
手早く手鏡で髪を直し、服の乱れを整える。
(彼はどの様な言葉をくれるのかしら?)
心に思うことは、彼の髪と対に成るようにエリーゼに作って貰った髪染めで色を変えた髪。
彼は気付いてくれるかな? と淡い期待をしながら彼を待つ。
「リーフィア、ゴメン待たせたかな?」
彼の優しい声が、後ろから聞こえてきた。
「そうですわね、時間丁度に着いたのは良いですけれど、もう少し早く来て欲しかったですわ」
私は緊張を見せないように、いつもの話し方を思い出しながら、右手を差し出した。
すると彼は、いつもの通りに手を取るのかと思えば、いきなり片膝を地に付けて手の甲にキスをして、私の顔を見上げる。
「我が儘と思われるかも知れませんけど、少しでも長く一緒に居たい気持ちを分かって下さいませ」
いきなりの行動に、私は顔が熱くなるのを感じて顔を見られないように、何かを言われる前に言葉を紡いだ。
「いつもの髪も好きだけど、金髪のリーフィアもその服も素敵だよ、俺の銀髪に対に成るよう合わせたの?」
「もう、余り言わないでくださいな‼️ こちらですわ(本当に意地悪な人ですわ……でも気付いてくれましたわ)」
それでも彼は、私の姿を見ながら欲しい言葉を言ってくれる。
そこからは、彼を先導する様に案内をして、冷静になろうとして進んでいましたが、途中でお爺さん二人が壊れた馬車から、新しい馬車に荷物を移していました。
デート中とはいえ、見て見ぬふりは出来ません。
「ルーク様」
「分かったよ、少し待ってて」
私の言葉を遮るように答えた彼は、お爺さん達に身体強化の魔術を施し、あっという間に積み荷が新しい馬車に積み込まれていきました。
……まさか向かう予定の店の馬車とは思いませんでしたけど。
お爺さん達が行った後にやって来たロズウェル商会のレビンさんという方に促されてノヴォルスクのロズウェル商会本店に到着し、中で寛げる場所に案内されました。
ここでルーク様の学院で必要になる物(他の貴族家の生徒から舐められない様にする為の見栄ですけれども)を買い揃えるつもりでしたが、馬車の謝礼に商品を4つ貰える事になりました。
私はルーク様の側に居ただけでしたので、そのまま彼の貰える個数に回してもらい、お茶を飲みながら終わるのを待っていましたが、内心次の場所の事で頭が一杯になっていました。
…………他の婚約者候補達と渡すプレゼントとは別に用意したプレゼント渡すために。
他にも色々な物を買っているようでしたが、そのまま会計を済ませたルーク様を誘い、そのままジヴェルニー湖へ向かいました。
ジヴェルニー湖に到着して感じたことは、今まで見たことがない程の魔力を含んだ湖である事と人工的な美しさと自然の力を調和した景観の素晴らしさでした。
その景観の美しさの中で精霊の幼体がふわふわと漂う姿を見ていると、緊張が解れていました。
暫く遊歩道を歩いて、手頃なベンチに座ると私は少しだけ勇気を出して彼の腕に抱き着きついた。
心臓がドキドキと速く打っているのを感じながら、誕生日を知らなかったことと、プレゼントを用意した事を告げて彼に渡しました。
『異空間収納』自体は異端ではないが、彼ほどの容量と展開の珍しい物である為、余り人目に付かない方が良いと考えて用意した黒皮の腰に巻けるポーチ。
彼が自分で作る物には劣るのは分かっているけど、どうしても渡したかった。
作らせたなんて言ったけど、本当はドーハに教えてもらいながら自分で作ったプレゼントを彼が気に入ってくれるのかと、期待と不安をしながら言葉を待つ。
「そうか、リーフィアありがとう。大事に使わせてもらうよ」
彼はそう言ってから私の額と頬にキスをしてきました。
その瞬間、頭の中が真っ白になり体が熱くなり、ふわふわとした感覚に体と心が包まれる。その感覚は不思議といつもより幸せを感じました。
その後は、彼のエスコートでアマツクニで新たな商売として始めた新しい写し絵を行っている広場に二人で撮りに行き、メアさんのペンダントを売っていたお店にも寄りました。
私達は、デート以外の物も自身の月々に貰えるお小遣いで購入する事を、勉強の一環として教えられてきました。
冒険者だったお父様達の方針でもありましたが、『売買された物が様々な箇所に住む人々の手により作られている事などを知る事で、本当に必要な物をその場所に届ける事が可能になるという意味もある』とお母様から言われ、お金の回り方の勉強以外の側面を学びなさいという意味を知りました。
でも彼は、デートの時に必ず1つはプレゼントを買う事を当然の行為として行います。
私達も嬉しいですが、私達の場合はお小遣いで貰ったお金。
それに対して、彼は自身の商品や魔物・魔獣の討伐で得たお金。
当選の事ながら、得た状況が違う物を私達に使うのはどうかと思いましたが、彼は気にしていない様でした。
今回も、エルザとソフィアに似合うペンダントが有ったので、買おうとした矢先に支払いが終えていました。
ペンダントを買って貰った後、最初に合流したジヴェルニー湖とは違う人工の湖が見える時計台へ戻り、デートの時間は終わりを向かえます。
寂しい気持ちは有りましたが、沙耶さんに迎えを頼んでいたので、これ以上は長引かせれません。
沙耶さんの空から登場と、彼のスキルによる沙耶さんが湖に墜落という面白い出来事で私のデートは終わりましたが、とても良いデートでした。
「リーフィアちゃん楽しかったみたいだね?」
「……そうですわね、沙耶さんは大丈夫ですの?」
「私は大丈夫だよ、流石に湖に落とされるとは思わなかったけど……あれ、わざとだね」
その言葉に、少しだけドキリとした。
「どうしてそう思われるのか聞いてもよろしいですか?」
「普段なら降りた所で拳骨か、おやつ抜きで済ますのに、今日は私を笑いものにしたいが為に湖に墜落させた感じがするんだもの」
「そうなんですの?」
「たぶんね……もう、甘いものでも食べて帰ろうか、リーフィアちゃん」
「ふふふっ、そうですわね。そうしましょうか」
少しだけ、勘違いしても良いですわよね?
そんな気持ちを胸に抱き、沙耶さんとケーキを食べに近くの店に入って行くのでした。




