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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-5 ダンジョン都市ノヴォルスク
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前世の呪詛の応用

 この世界に来て、俺は未だ前世で使っていた物と同じ呼び名である『呪術』の使用をしていなかった。


 理由は幾つかあるが、主な理由としては、前世を思い出したくないと言う、我が儘があったのだが、そうも言ってられなくなった。


 この世界における、闇の魔術の上位属性は呪いだ。


 呪いは、(マジナイ)(ノロイ)と分けられるが、良い方向へ向ける(マジナイ)と悪い方向へ向ける(ノロイ)。俺は昔から、ノロイの方が圧倒的に得意だった。


 この世界における呪い(ノロイ)に分類される物は、ゲームなどで良く見る能力低下などのデバフや、バッドステータスに当たるのだが、他にもう1つ『憑依』が含まれる。


 俺の前世での得意分野は、相手に式神を憑依させ死に至らしめる『呪殺』や、自身に降ろした低級神や式神を使役する『神降ろし』の二つを良く使っていた。


 1つ目の『呪殺』には、呪い返しを受けると俺に返ってくるデメリットが、2つ目の『神降ろし』には、俺の身体にかかる負担がどれ程か分からない事と、代償がどうなるか分からない為、今まで使わなかった物だ。


 今『神降ろし』で使える低級神は、契約していないので、神降ろしは不可能。


 つまり『呪殺』を仕掛ける事になる。


 ブラッドタウルスに向け、呪殺が可能か『解析』を使用していたが、ようやく判明した。


 呪いに対する耐性は、鎧の装備品を含めて殆ど無く、反射も持っていない様だ。


 ブラッドタウルスは、徐々に攻撃スピードが速くなってきた為、避けにくい攻撃も入れてきだした。


 流石に一撃でも貰えばひとたまりも無いだろう。


 呪符を素早く用意して、俺は親指に小さな傷を作りながら、攻撃を避けようやく口元に到着した。


 血を呪符に塗り付けブラッドタウルスの口にねじ込み呪詛を唱える。


「『蠱毒』で作った取って置きだ。喰らいやがれ!!」


 妖しく光る呪符は、赤黒く光始めると、蠢く様に何が口腔内に飲み込まれて行った。


 ブラッドタウルスは、そのまま倒れて行き痙攣を始めると、身体中の肉に何かが這いずる様な動きが始まった。


 もう、こうなってしまえば、ブラッドタウルスも生きてはいないだろう。


 数多の毒魔蟲を、最後の一匹になるまで壺に閉じ込めて作り出した『蠱毒』は、最も作りやすい式神や呪いの触媒になる。


 ダンジョンが吸収してしまう前に、どうにかブラッドタウルスは討伐出来た。


 グレゴリーの死体は、処分するのに簡単な、フローズンネグレリアの潜む湖に投げ込んだ。


 とりあえず、これでなんとかなったと思いたいが、問題は山積みだった。


 タルタロスの指輪に保護した子供達をどうするのかと言う問題。


 まだ捕まっている違法奴隷の子供達の救出と、繋がりのある貴族の証拠の発見。


 今回の依頼の成功の有無。


 最後のはどうにでもなるが、他の2つに関しては、早急に解決する必要がある。


 俺は、カミナ達と合流してダンジョンを後にした。


 一応だが、グレゴリーの使っていた武器と頭髪を切ってあるので、問題は無いだろう。


 ブラッドタウルスを喰らい尽くした『蠱毒』の魔蟲は、初めは黒曜石の様な黒い掌サイズだったものが、今回の餌で俺の身長と同じくらいの大きさになっていた。


 名前は見た目から『黒曜』と名付けていた。


 黒曜に関しては、苦手意識が無い者なら問題ないと思い、普段は表に出しているが、この大きさになったので、専用の場所を用意しないといけなくなりそうだ。


 未だ幼体だが、それなりの餌を喰わせているので、羽化を楽しみにしている物の1つである。


 転移が終わると、そこにはベクターとジンが立っていた。


「奴はどうなった?」


「しっかりと吸収される前に倒してきましたよ」


 ブラッドタウルスの骨を一式取り出すと、周りからは、驚きの声とグレゴリーに対する罵声が響き始めた。


 騒ぎが大きくなり、止めに入ろうとしている受付の人も、あたふたし始める。


「━━静まれぃ!!」


 流石にそろそろ止めないと、不味い事になりそうだ。止めに入ろうと声を出そうとした瞬間、後ろから大きな声が響き渡った。


 そこには、白銀の鎧を一式着た屈強な兵士達と、二人の男性が立っていた。


 1人は、青と白銀の巨大な大剣を背負った40~50歳くらいの、青みがかった瞳と銀髪を持つ男性。


 もう1人は、ジンや、ベクターと同じ瞳と髪の色をした筋骨隆々な同じくらいの歳だと思われる男性だった。


「ジン・フォルティス、ベクター・フォルティス。貴様らに命じた調査は、済んだようだな?……む?」


 銀髪の男性が、そう尋ねながら歩いてくる。

 そのままベクター達の前に行くのかと思いきや、俺の顔を見て頷き、こちらに歩いてきた。


「君はルーク男爵だな? 私の名はベリアル・グラーフ・バルバドス伯爵だ。此度の助太刀感謝する」


 バルバドス伯爵は、そう言ってもう1人の男性と、ベクター達の前に出た。


「グレゴリーの自白は、聞き取れました。後は救出と証拠を集めるだけでございます」


「そうか、ベクター達には苦労をかけさせたな」


「親父…病み上がりなら無理するなよ」


「お前達に、心配されるなんざ、俺も老いたわけだ」


「全く、情けないぞサーモス。少し見ないうちに弱くなったんじゃ無かろうな?」


 もう1人の正体は、ベクターとジン、そしてグレゴリーの父親で、一月前に新なダンジョン『極寒の坩堝』での調査で倒れたサーモス・フォン・フォルティス子爵その人だった。



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