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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-5 ダンジョン都市ノヴォルスク
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氷堆丘猿達のボス

 俺は『霊鳥の書』の魔術式を解析していく中でほんの少しだけ引っ掛かりを感じ始めた。


 この書に記載されている文字が4種類ある事が分かったのだが、各々が独立している訳でもなく、答えがない。


 一般的な『魔術文字』と妖精族の使う『妖精文字』、旧き者達(エルダー)を冠するエルフなどが用いる『ルーン文字』に、数字が使われているのだが、紙に書き起こしていくと違和感しか無いのだ。


 妖精文字だけで構成すると、最後の言葉が足りない。


 ルーン文字の場合、初動の言葉が足りない。


 一般的な魔術文字と数字の場合は、式自体が成り立たない。


 正しく無いもの状態になっていた。


 一番厄介な物は、最後のページに記載されている魔術陣だ。


 明らかに、完成された物なのだが、これに関しては防御装置の役割を担っている魔術文字が記載されている。


「これはまた、難しい術式だな……カミナは分かる?」


「……知らん、自分で考えろ」


 カミナはチラッと本を見た後、そう答えてメアの方に向いた。


 強い反応は、まだ遠くに居るみたいだから、暫くは大丈夫だろう。


 メアは踊る様にゴーレムを操り、時には魔力糸で氷堆丘猿(ドラムリンモンキー)を切り裂いていた。


 球体間接の部分も今の所は問題なく動いている様だ。


「「「「━━eek eek!!」」」」


 猿達が叫び始めると、呼応する様に強い反応が近づいて来た。


 他の氷堆丘猿と比べると身体の大きさが3倍程の巨大猿が遠くから、駆けて来ているのが見える。


「メア、ボス猿が近づいてるけどやってみる?」


「このゴーレムで……対処出来る?」


「装備と装甲なら問題ないよ。後はメアの腕次第かな?」


「やってみて良い? このゴーレム面白いわ。最初は少し難しいけど、慣れると手足みたいに動かせるから、思った通りの動きが出来るのね」


 会話をしながら、ボス猿も問題がなければ、メアの訓練用の相手にする事にした。


 周囲にいた猿達を、大半片付けた所で、群れのボスが到着した。


 巨大な(ビッグ)氷堆丘猿(ドラムリンモンキー)とでも呼べば良いのか、かなりの迫力がある。


 色は通常の氷堆丘猿と同じ、白い毛で覆われているが、内包する魔力は幾分か多い位だ。


 静かにこちらを見ると、牙を見せながら威嚇をしている。


 メアは少しだけ後ろに下がると、左腕を動かしゴーレムを操り始めた。


 ボス猿はゴーレムを脅威と捉えているが、メアの糸にも注意をしている様で、中々動かない。


 先に仕掛けたのは、メアの操るゴーレムだった。


 左腕の鎌を射出して、魔力糸で絡め捕ろうと動かした様だが、ボス猿も近くの氷塊を使いそれを防ぐと、そのまま氷塊を投げつける。


 メアもボス猿の動きを追いながら、飛ばした左腕を巻き上げ、飛んできた氷塊を右腕の剣で切り返し防ぐ。


 しかし、群れでの戦闘を得意とする魔獣だ。他の氷堆丘猿も、隙をみて攻撃に参加していた。


 地面の雪を巻き上げて走るボス猿の動きを追えば、他の氷堆丘猿達が攻撃に移り、見失えばボス猿の攻撃が飛んでくる。


 表層の敵としては、中々に手強い相手になるな。


 メアは防戦一方になっている様だが、魔術陣を展開し始めた所を見ると、魔術で一掃するのだろう。(それにしては、攻撃用の魔術では無さそうだな?)


「いい加減にしなさいな、ワタシを怒らせるとどうなるか教えて差し上げます。『宵闇の雷炎(ト二トルス・フェゴ)』」


 メアの口調が変わり、ゴーレムの影で見えなかったが、姿を見た途端に俺は絶句していた。

 その姿は、大人の女性に変貌していた。


 そして、何かの複合魔術を放とうとしているのだが、闇と炎そして雷の多重複合魔術だった。


 その魔術は、魔術陣の3つを三角の形で繋ぎ、その周囲を更に魔術式で囲う形をしていた。


 俺の使う複合魔術は魔術陣を直列に重ねる現代方式での方法と創造のスキルで造り出すかのどっちかだった。


 平面に並べて繋ぐ方式は、古代魔術の術式であり、起動するのも難しい物であった為、長い時間をかけて今の方式になったと言われている。


 今まで使っていなかったので、ついその存在を忘れていた。


 しかし平面式の場合にしても、陣と陣の繋ぎ方や配置方法が違うだけで、効果も発動も違ってくる。


 こういった魔術は創造で作ろうにも、どういった効果なのかと範囲、想像が出来ないと同じ物は出来ないので、出来ればオリジナルを覚えたい。


 平面展開の魔術陣を見たおかげで、霊鳥の書に書いてある文字を分解していき、妖精文字とルーン文字、現代魔術文字の各々を同じ文字に変換すると全ての意味が繋がった。


 妖精文字は魔術陣の位置を示し、ルーン文字は繋ぐ形を表し、俺達が使う魔術文字は真の魔術名を表していた。


全ての色を持つもの(ニルヴァーナ)


 かなりの汎用性の高い古代魔術が手に入った瞬間だった。


 その一方で、メアの放った魔術は、周辺の魔獣達を殲滅し、地形の一部が変形していた。


「魔素が濃いから夜ではないが、吸血鬼の血が強くなったようだな。お前の周りには面白い者が集まる様だ」


「ならカミナもそうなるね、しかしメアもえらい美女になるんだな」


「まぁ、あれは強制的に成長した姿だからな」


 二人してメアを見ていると、ドロップアイテムを拾いながら、微笑み手を振る美女がそこには居たのだった。

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