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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-5 ダンジョン都市ノヴォルスク
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砕氷の古代湖

 酒場を出た俺は、酒場の前にある店でアクセサリーを見ているメアの後ろに立った。


 店主のお姉さんが、目線で確認してきたので、頷いて返事を返すと、1つの品物を目で指した。


 値段も、子供のお小遣いで買える値段や大人でも高額な物もあるが、安い物でもしっかりとした作りをしている。


 メアが見ていたのは小さな花の形をした、薄紫のクリスタルペンダントだった。


 特に何の効果も無い物だが、確かにメアの首元に添えれば、彼女の容姿に良く合う。


 俺が頷くと、お姉さんはペンダントをケースから外し、近くの作業台に向かう。


「あっ…」


 小さく呟く彼女の声は、少し残念そうな声を出したが、別の商品を見ている俺を見た途端に、目を丸くして驚いていた。


「……ルーク!? いつの間に?」


「ただいまメア、どうかしたの?」


「ううん、何でもない。お話終わったの?」


 俺が来たことに安堵する表情を浮かべた。


「お待たせ致しました。欲しい商品はありますか?」


「他は何があるの?」


 彫金は俺も出来るが、やはり男のデザイン性と女性のデザイン性は微妙に違う


「このケース内のペンダント以外だと、ネックレス、他は指輪・腕輪(ブレスレット)足輪(アンクレット)ね、見てみる?」


「そうですね、ブレスレットと指輪を見せてもらえますか?」


「ありがとうございます。それではどうぞ」


 そういってお姉さんは、トランクケースを棚の上に置くと同時に、チェーンの金具の調整を終えたペンダントを渡してきた。


 俺はそれを受け取り、値段の銀貨6枚より多めの大銀貨を1枚と銀貨3枚渡した。


 お姉さんは、軽く頷きながら商品のトランクを開けていく。


 一時間程見て回り、デザインの参考になる指輪と腕輪、ロケットペンダントを買った。


 1つ辺り、銀貨2枚前後の物だが、細かい細工には、かなりの技術がいる物ばかりで、個人的にも良い買い物になる店だった。


 そのまま俺達は、当初の目的である『砕氷の古代湖 10階層』を目指す事にして、受付に向かう。


「じゃあ、少し遅くなったけどゴーレムの操作を始めようか?」


「うん、おねがいします」


「ならば、1階のフロアはメアに任せて2階にからは、一気に飛ばすぞ」


 カミナを先頭に、受付を済ませ扉をくぐり抜ける。


 前回のダンジョンとはまるで違う事に、俺は驚く。


 扉をくぐり抜け、小部屋の転移陣を起動した先には、青い氷の壁と積雪の大地、灰色の空が存在していた。


「これは凄いな、カミナ」


「はしゃぐな、この空も氷もダンジョンの一部だ。一度広い場所に出るぞ、この辺に敵は居ない様だからな」


 カミナは壁を蹴りながら駆け上がる。


 俺とメアはその様子を見ながら、カミナのいる場所へと急いだ。


 歩き難い雪道は、足腰の強化に良さそうだと思いながら到着すると、カミナは何かの魔物か魔獣を倒して得たアイテムを選別していた。


「来たか、この辺なら邪魔も入らん、メアの特訓をすれば良い」


 そう言うと、カミナは何かの瓶を取り出し周囲に振り蒔いた。

 暫くすると『索敵』に反応があり、徐々にこちらへ近づいて来ている様だ。


 辛うじて来る方向を絞り、マリオネットゴーレムを展開、メアの魔力と髪の毛を登録してから指輪を装着させた。


 左右の指に装着した指輪からは、10本の魔力糸がゴーレムに繋がる。


「魔力操作をしながら、指を動かしてみて」


「……こう?」


 メアは魔力を込めながら、指を動かし反応を見ると、少しだけ腕が上がる。


 そのまま動かしていると、ゴーレムが立ち上がり、少しずつ動きがスムーズになっていた。


 メアの表情を見ると、楽しそうに動かしている。


「そろそろ来るぞ、その人形で暫く遊ぶのか?」


「ちょっとした近接用の武器みたいな物だからね」


 カミナの言葉に俺はそう返すと、ザラさん達から貰った卵に魔力を補充しながら、『霊鳥の書』を読む事にした。


 最初は霊鳥の育成や種類の記載されている書物かと思ったのだが、どうやら違うみたいだ。


 各々の属性別に書いてあり、その名前が記載されている所を開くと、中には魔術陣が描いてある。


 しかし、その魔術式がおかしい所しかなく、そのまま発動しても、何の効果も無い物だった。


 全部で60ページある内、魔術陣の図形が7枚、残りは全て構成するためのヒントの様な物ばかりで答えがわからない。


 試しに魔方陣を展開し、重ねて見るが共通する物は、攻撃用の魔術式である事を除けば、全て意味を成さない文章になっていた。


 例えるなら、日本語の中に、関係の無いスワヒリ語やロシア語の単語を、更にごちゃ混ぜにして書いているような文章になっているのである。


 これは解析が厄介な魔導書の様だ。


 そうこうしていると索敵の範囲内に変化があり、何体かの敵性反応が駆けて来ている。


 やって来たのは、【氷堆丘猿(ドラムリンモンキー)】と言うこの都市では知らない者がいないとされる猿型の魔獣だ。


 頭が良く群れて活動するが、ボスを倒すことで統制を失う為、単体や少人数では厳しい猿で、少なくとも2パーティーは欲しい相手である。


 そんな相手に対して、メアは落ち着いて指を動かす。


 マリオネットゴーレムは、指の動きに従い武器を構えると、敵に向かうように動き始めた。


 向こうも戦闘体制に成ったようで、そろそろ始まる様だ。


 最初に動きを見せたのは、氷堆丘猿の方だった。


 三体の猿は、メアに対して一斉に襲いかかる。


 しかし、ゴーレムを動かし薙ぎ払う形で距離を離した。


 そのままゴーレムを使い追い討ちを行うと、一体は右腕の剣で絶命、もう一体は左腕の鎌で裂かれた。


 しかし氷堆丘猿も犠牲にした仲間を使い学習している様だ。


 僅かなズレに身体を捩じ込んで、メアに再び襲いかかる。


 メアは慌てること無く身体を捻り、身を反らす様に躱すと、指輪とマリオネットゴーレムに繋がった魔力糸を使い、氷堆丘猿を縛り上げるとそのまま一気にゴーレムを動かし、その反動で魔力糸による切断を行った。


 実戦に勝る経験は無いと言うが、メアは確実に動きが良くなっている様だ。


 集まってきた氷堆丘猿達も、動きを学習して対応している様だが、メアの成長の方が早い。


 もともと糸使いのスキルが高いので、応用出来そうと思っていたが、予想外に使いこなしているので、メアに関してはもう大丈夫だろう。


 俺は再び『霊鳥の書』の術式解析を始めるのだった。


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