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幽閉された式神使いの異世界ライフ  作者: ハクビシン
2章-5 ダンジョン都市ノヴォルスク
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ザラさんの火傷跡

 顔が見えたのは、一瞬だったが、その瞬間ザラさんはフードを抑え、何かに脅えていた。


「その火傷跡は?」


「お前さんは怖がらねぇんだな?」


「ビックリはしましたが、それほどでもないでしょう?何故治療しないんですか?」


「呪いだよ、治療しても一時的にしか消えやがらねぇし、下手に治療したら他の場所まで跡が広がりやがる」


 俺の尋ねに対しゲルバスさんが答えてくれた。

 俺は火傷跡に、鑑定と解析を同時に使い、原因を探した。


【名前】ザラ・バスティス


【状態】《寄生》【対象名】ブラッドアメーバ


 と出ていた。


「何をして、この火傷をしましたか?」


「半年前に、火山地帯の近くの村に、呪い蜥蜴(カースリザード)が出現したらしいんだがな、その時に、受けた攻撃があの火傷跡になっているらしい」


「そうよ、村まで逃げた蜥蜴を倒しに向かったら、逃げ遅れた子供が居てねぇ、その攻撃を受けたら……ね」


 ブラッドアメーバは、腐食した肉や、ゾンビなどに寄生している、アメーバの一種だ。

 通常は生き物の血、もしくは外部からの魔力を吸収する性質を持つ。


 寄生を行い増殖するので、口腔内部にいることが多く、呪い蜥蜴が時折吐く息吹き(ブレス)に混じる事もある。


「もしかしたら治療出来ますよ?」


「本当かい、ルーク君? 治療して治るのなら、俺の宝でも何でもくれてやる」


 カイゼルの言葉を聞いた、他の冒険者達は興味本位で『なら俺もだ』と、どんどん品物が増えていった。


 俺は、ザラさんの顔に寄生しているアメーバに対象を変えて、『アポート』を唱える。


 顔に火傷の様に寄生しているアメーバは、徐々に姿を消していく。


 俺の前にある机には、赤く濁ったアメーバが、肉眼でも見える程の塊になっていた。


 それと同時に『復元(レスト)』を剥いでいった部分にかけていく。

 ザラさんの顔に残る火傷跡の様な傷が消えていき、周りの肌と同じ色に変わっていく。


 周りの人達は驚いていたが、この程度なら特に問題はない。


 そのまま最後の一塊を取り出し終えると、周りの人達から、一気に喝采の声が掛かる。


「「「「おおっ!!」」」」


 塊となったアメーバは、凍結させた為、既に死骸になっているので、そのまま俺の異空間収納に入れた。

 このアメーバは、錬金術の素材になるからな。


 その間、ザラさんは顔を触り確認をした。

 そして、恐る恐る鏡を覗くと、彼女は涙を浮かべた。


 そこには、火傷跡の様に腫れ浅黒かった跡はなく、彼女本来の肌が戻っていた。


「良かったな、ザラ?」

「…ううっ……カイゼル…私…」


 ザラさんの肩を優しく引き寄せ、カイゼルさんは抱き締めた。


「ルーク君、君は何をしたのかな?今までこのフィオが何度か試した『復元(レスト)』も効果が無いから、諦めていたのに……」


「私も詳しく聞きたいです。今の魔術は回復魔術でも無いですし、見たことも無いです」


 詰め寄って来るカイゼルさんと、フィオさんに説明を求められる。


 俺は『鑑定』と『解析』を同時に使用したことで、呪いではなく正体がアメーバであった事。

 その除去に『アポート』を使用した事を説明した。


「しかし、アメーバか……俺達には全く分からんかったな」


「あぁ、しかも『アポート』なんて聞いたこともねぇ魔術だが、使い方を工夫すればゴーレムなんかのコアとか抜けるんじゃねぇか?」


「確かに、小さなゴーレム位ならコアの位置さえ掴めれば、抜けそうですよね」


 ゲルバスさん、マルバスさん、フィオさんの三人は、俺の魔術に対して考察している様だ。


 ザラさんとカイゼルさんは、一度ギルドで借りている部屋に戻って行った。

 何やら御礼の品を持ってくるらしい。


 5分くらいして、二人は鞄を二つ持って降りてきた。


「坊や本当にありがとう、これは私からの御礼よ」


「こっちは、俺が集めているコレクションが入ってるどれでも持っていってくれ」


 ザラさんの鞄から取り出されたのは、古い魔導書でタイトルは『霊鳥の書』と書いてある。


 カイゼルさん鞄からは、大小様々な卵が出てきた。


「カイゼルさん、この卵は魔獣の卵ですか?」


「そうだが、ただの魔獣じゃない、これはダンジョンの宝箱から手に入れた物だ。何が産まれてくるかは孵化させないとわからないが、おそらく通常個体よりは強い魔獣が産まれると思う」


 卵を『鑑定』と『解析』を使用して見るが、全部《魔獣の卵》としか表示されなかった。


 ザラさんの魔導書を、異空間収納に入れて、卵をよく見る。


 どれも形がバラバラであったが、1つの卵に目がいった。


 大きさは約30センチ、刺々しい見た目をした白い卵だった。


「その卵はドロップした卵の中でも、唯一最下層から持って帰ったやつだな。それが良いか?」


「貴重な物じゃ?」


「ザラの顔が治った事に比べれば、大した価値じゃねぇよ。俺にとっては、このチームとザラが最高の宝だからな、死んでもやれねぇよ」


 そう言って、カイゼルさんは他の卵を鞄に入れて、棘付き卵を俺の前に置いた。


 他の冒険者達は、テーブルに置いた魔導具やお金等を、そのままにして置いていく。


「さぁ、ザラの顔も治った。俺達もSランクの冒険者パーティーになった。後は結婚だな?」


 ゲルバスさんがそう言うと、ギルドが慌ただしくなる。


「そうだな……ザラ、俺の妻になってください!!」


「……フィオ…どうしたら……」


「……お兄ちゃん、雰囲気とか場所を選びなさいよ。人の居ない綺麗な景色とか、色々あるでしょ?」


「えっ、ここぞの時に告白しろって行ったのフィオだよな?」


「そうだけど、今じゃ無いでしょ?義姉(おねえ)ちゃんも狼狽えないで、何時もの様に落ち着いて?」


 その光景をみて俺は、『あぁ、この二人兄妹だったんだな』と思いながら、貰った卵にやたら反応を示す連絡用式神(トトル)を呼び出すと、不思議な行動を取るのであった。

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