プロローグ1~死亡原因は神のミスだった?~
物語の始まりです。
日本の地図上に存在する、人も立ち入らぬ深い山奥。
その自然が取り巻く環境に対して、不自然に存在する廃坑の様な出入口。
その中を、重苦しい空気が辺りを包み込む。
岩肌が剥き出した状態の地下深く、冷たい檻の中に男は居た。
頬は痩せ、瞳には精気を感じられない。
やがて朽ち果てるのも時間の問題であろう男は、声無き声で呟いた。
「……カ…ミ……ナ」
その一言と共に、男は意識を失った。
男の名は、大神 刀夜
代々、狗神や管狐等の憑き物を使役する一族の一人である。
そして、一族に伝わる式神の中で、特に最悪な式神を身体に宿した為、幽閉された者でもあった。
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目の前が急に明るくなった。
眩しさに目を開けると、無機質な部屋の中で、二人の男女が立っていた。
「助かったみたいですね」
「そのようじゃな」
そう言って、此方にやって来た二人は、どこか人ではない雰囲気がした。
老人の姿をした和服の男性と、20歳くらいと思われるキトンの様な服の女性は、その場に座ると一言。
「まずは、此度の件、誠に申し訳ない事をした」
男性がそう言って頭を下げた。
「大変なご迷惑をおかけしました」
女性は涙目で土下座だった。
「すみません、まず状況がわからないのですが、私が今居るこの場はどこですか?」
「ここは、神界に有る儂の部屋で、お主は死んだからここに来た。」
「なるほど…なんとなく理解出来ましたが、こちらの女性は何故、土下座をされているのですか?」
「コヤツが此度の原因、《オルムス・エウリシア》異世界ベルフォートの神じゃ、因みに儂は月読尊じゃよ、あぁ言葉は崩して構わんよ」
「わかった、ところで原因ってなんだ?家が元々普通じゃ無いから、原因がわからん」
「式神に使われた《カミナ》と呼んでた犬が原因だったのじゃ、詳しい説明はオルムスがする」
顔を上げてから、オルムスは正座のまま説明を始めた。
「カミナは、元々が神獣フェンリルの子供でした。私が時空間断層の修復中をしている際に、管理していたカミナが地球への繋がりに落ち、そのまま刀夜さんに拾われたのです」
「つまり、俺の儀式に使われたのはカミナだったと」
「はい、神獣のフェンリルも儀式で神性が反転し、魔獣に近い物になりました。しかしカミナは刀夜さんと共にありたいと願い魂に食い込んだのです」
刀夜にとってカミナは相棒であった。
白い体躯に、灰色の尾を持つ、おそらく中型犬サイズ位になりそうな子犬。
子供の頃に拾い、18歳まで共に過ごした相棒が自分の儀式で殺された。
その事実が、深い哀しみになり自分を許せなくなった。
「刀夜、名を呼べ、もう泣くな」
その時、不意に声が聞こえた。
プロローグはもう少し続きます。