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鑑定スキルを極めたら、受付嬢が魔王だった件  作者: キミマロ
第一章 魔王さま、現る!!
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第三話 戦う理由

 おっぱいには、実は三つの分類がある。

 一つは天然もの。

 これは言うまでもなく、自然に育った天からの授かりものだ。

 古より多くの男たちが追い求めてきたロマンの塊である。

 中でも巨乳と呼ばれる大きなサイズのものは、希少性が極めて高い羨望の的。

 多くのマイスターたちがこれを巡って熾烈な争いを繰り広げたという。


 二つ目は偽物。

 これは天然の巨乳に近づけるべく、あらゆる手段でかさましを施したおっぱいである。

 もっとも一般的なかさましの手法が、下着を用いての寄せ上げおよび胸パッド。

 これによって形作られた偽りの谷間は、数多くのマイスターを泣かせてきた。

 最近ではスライムの死骸を利用した精巧――いや、悪質極まりないパッドまで出回っている。

 まったく、嫌な世の中になってしまったものだ。

 幸い、俺は鑑定スキルのおかげで騙されることはないのだが。


 そして三つめが……天然と偽物の中間、養殖もの。

 これは、魔法によって強制的に発育させたおっぱいである。

 見た目は天然ものの巨乳とほぼ同じで、見分けることは非常に困難。

 数は少ないが、だまされる確率は極めて高い危険な代物だ。

 ただし、歴戦のマイスターによると触り心地がわずかに異なるらしい。

 もともと小さいものを無理に成長させた影響で、ほんの少しだが柔らかいという。

 

「まさか……サーシャさんの爆乳が養殖ものだったなんて」


 部屋のドアを閉めた俺は、すぐさまサーシャさんの胸元を見ていった。

 たちまち、彼女の顔にさあッと赤みが差す。


「ぐぐぐ……! まさか貴様にばれる日がくるとは。いったいどこで知った?」

「それはあとで言いますよ」

「くっ! で、何がしたいんだ? こうして連れ込んだからには、やはり身体か? 欲望をぶつけて、私の身体を真っ白にでもする気か!? 言っておくがこういうことは初めてだから――」

「ちょ、ちょっとちょっと!!」

 

 何やらすごい勢いで語りだしたサーシャさん。

 身をよじらせて、明らかに危ない世界に飛んで行ってしまっている。

 俺は慌てて彼女の話を遮ると、どうにか落ち着かせるべくその肩に手をかける。


「しっかりしてくださいって!」

「あわっ! こら、舌を噛むっ!」


 ぶんぶんと上半身を揺さぶられ、どうにかこちらの世界に戻ってきたサーシャさん。

 彼女はふうっと大きなため息をつくと、懐へと手を伸ばした。

 そして巾着袋を取り出すと、入っていた金貨の枚数を確認する。


「ここに金貨十枚ならある。手を打たないか?」

「や、そういうのじゃないです!!」

「じゃあなんだ? もしかして、私の持っている剣コレクションが欲しいのか? いくら何でも、あれはさすがに渡せんぞ。どれも売れば二度と手に入らんものだからな」

「恐喝から離れて! そんなことしませんから!」


 そう言ってなお、サーシャさんの視線は冷たかった。

 彼女は訝しげに眉を寄せると、こちらに向かって身を乗り出してくる。


「では、いったい何が目的だ? 私の最高機密を調べ上げたんだ、何か考えがあってのことだろう?」


 いや……別に調べようとしたわけじゃないんですけど。

 たまたまステータス画面の備考欄に「巨乳(養殖)」とか出てただけだ。

 むしろ、俺だって知らないで済むなら知らずにいたかったぜ……。

 幾度となく妄想したおっぱいが、養殖だったなんて。

 マイスターとしては恥ずかしいことこの上ない。


「えーっと、その……どこから言えばいいのかなぁ」


 これまでの経緯を、できるだけ短くまとめて話す。

 するとサーシャさんの顔が、次第に真剣なものとなっていった。

 よかった、信じてもらえたみたいだ。

 まあ、状況証拠もあったことだし当然と言えば当然か。


「……それで、私に助けを求めたというわけか」

「はい。魔王に対抗できるのなんて、うちのギルドじゃサーシャさんぐらいです!」


 そう言うと、俺は精いっぱいの上目遣いで彼女を見た。

 実際、うちのギルドで一番強いのは間違いなく彼女だ。

 百剣のサーシャ。

 ありとあらゆる魔剣を自在に操るとされるその実力は、伊達ではない。

 

「ぐ、捨てられた子犬みたいな顔しおって……!」

「お願いします、サーシャ様! 胸の件は心に秘めときますから! 俺自身も忘れますから!」

「ええい、わかった! 手伝うからその顔をやめい!」

「おお!!」


 半ばあきらめたような顔をしながらも、うなずいてくれるサーシャさん。

 良かった、これで一安心だ。

 さすがに俺一人じゃ、魔王を相手にどうしようもなかったしな。

 サーシャさんならほかの高ランク冒険者にもコネがあるだろうし、仲間も集めやすくなる。


「しかし、お前……意外といい奴なんだな。ただの変態かと思ったが、見直したぞ」

「え?」

「私がお前の立場だったら、今頃は街を見捨てて逃げていたぞ。人を頼ったとはいえ、皆のため戦おうなんてなかなかできることじゃない」


 そう言うと、サーシャさんは妙にすがすがしい笑顔でこちらを見てきた。

 別に俺としては、そんな褒められるような選択をしたつもりはないんだけどな。

 ただ単純に――。


「や、だって。魔王を相手に、どこに逃げるっていうんです?」

「む?」

「ショウの超冒険って物語、読んだことありません? あれは創作ですけど、魔王と言ったら『魔界に青空を!』って地上をぶっ飛ばしたりする輩ですよ。そんなの相手に、逃げるも何もありゃしませんって」

「それはつまり……あれか。愛する街を守るために立ち上がったとかではなくて、単に意味がないから逃げないということか?」

「そりゃそうですよ。逃げて身を守れるなら今すぐ逃げます!!」


 俺がそう言い切ると、サーシャさんの動きが止まった。

 そして、顔が見る見るうちに赤く染まっていく。

 これは……怒りだ。

 火山が、火山が爆発するぞ……!!

 俺は慌てて言いつくろおうとするが、間に合わない。


「この馬鹿!! 私のほっこりした心を返せえええぇ!!!!」


 渾身の右ストレート。

 魔王にも通用しそうなそれに、俺の身体は宙を舞うのだった――。


日間ランキングに載ることが出来ました!

これからも、応援よろしくお願いします。

続きが読みたい、先が気になるという方はぜひぜひ感想・ブクマ・評価をくださると嬉しいです!

作者のやる気が大いに上がります!


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