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鑑定スキルを極めたら、受付嬢が魔王だった件  作者: キミマロ
第二章 家を取り戻せ!
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第一話 お金がない!

 魔神の出現からはや一週間。

 騒動を引き起こしてしまった俺たちであったが、何とか刑罰だけは免れることができた。

 ギルド職員であるアルトさんと、その意を忖度して動いた聖少女十字団のおかげだ。

 特に、聖少女十字団は本当に凄い。

 普通、あれだけのことやったら何かしらの罪状でしょっ引かれるものなんだけどな。

 それを無罪にしてのけるとは、やはりあの団体、かなりの大物が何人か噛んでいるようだ。

 とはいっても――。


「ううっ、私の土地が……!」

 

 大きく『差し押さえ』と書かれた立て札。

 それを見たサーシャさんは、今にも泣きだしそうな顔をした。

 今回の事件の賠償金、しめて百万ゴールド。

 それだけの大金を払うには、サーシャさんの家があった土地を売り払うしかなかったのだ。


「この土地、手に入れるの大変だったんだぞ! まだランクの低かった私が、苦労して金を溜めて……!」

「まあまあ、落ち着きや。家がなくなるぐらいよくあることやって。私も、かれこれ五回ぐらい破産したことあるし」


 よしよしと頭をなでて、サーシャさんを慰めるリーツさん。

 いやいや、そうはいっても普通はこんなこと滅多にないから。

 五回も破産するって、逆に才能あるレベルだろ。

 俺が心の中でツッコミを入れていると、サーシャさんがぼそりと言う。


「……そもそも、リーツが失敗しなければこんなことにはならなかったんだぞ」

「なんや、私のせいって言うんか? それなら、私らに相談を持ち掛けてきたリュカが根本的に悪いんちゃうの?」

「え、俺のせい? それを言うなら、アルトさんが殺すとか物騒なこと言わなければ……」

「しょうがないじゃないですか! いきなり女の子の秘密を見ようとしたリュカさんが悪いんです!!」

「だからって、魔王が殺すとかいうと――」


 ああだこうだと言い争うことしばし。

 皆が疲れたところで、ようやくこの不毛な争いは収まった。

 誰が原因であろうと、状況が変わるわけではないからだ。


「……ここで文句を言い合っても、無駄な力を使うだけやね」

「そうですね。これからのことを考えないと」


 今の俺たちは一文無し。

 その上、サーシャさんの家という拠点まで失っている。

 安定した身分があるアルトさんはともかく、俺たち三人はこのままでは非常にマズイ。

 すぐに動き出さないと、今日の宿代すらないんだからな!


「ひとまず、ギルドで討伐依頼でも受けるか。こういう時は、バッサバッサとやるに限る!」

「その思考はわからへんけど、行動には賛成や。とにもかくにも、まずは飯代ぐらい確保せんと」

「ですね。まさか、賠償金でへそくりまで根こそぎ持っていかれるとは思いませんでしたよ……」


 ギルドに向かって歩き出す俺たち。

 だがここで、アルトさんが急に申し訳なさそうな顔をした。

 何だろう?

 ちょっと嫌な予感がしてきたぞ……!


「えーっと、そのですね。今ギルドへ行かれても、依頼はほとんどありませんよ」

「はい?」


 俺たち三人の声が揃った。

 基本的に、そんなことあり得ないからである。

 一匹見たら、三十匹はいると思え。

 こんな格言があるほど、魔物というのは繁殖力が強く狩っても狩りつくせないような存在なのだ。


「街の周辺にいた魔物たちなんですけどね。どうやら、魔神や私の発した魔力に恐れをなしたようで……みんな遠くに逃げちゃったようなんですよ」

「……マジなん?」

「マジです。そのせいで今朝、剛腕のガドスさんがドブ掃除の依頼を受けていかれましたから」

「あのガドスさんが!?」


 剛腕のガドスと言えば、ギルドでも有名なトップ冒険者である。

 まさに宵越しの金は持たないを地で行く人物で、派手な遊びぶりでも知られていた。

 そんな伊達で生きてるような人物が、ドブ掃除をしなきゃいけなくなるとは……。

 魔物の枯渇は相当に深刻な状態らしい。


「ううむ、厄介だな。今すぐ魔物の首を切りたいというのに!」

「や、そこの問題やない。収入を得られる手段がない方が問題や!」

「そうですよ! 今日のご飯とかどうするんですか!」


 繰り返して言うが、今の俺たちには本当に金がない。

 ギルドで依頼がこなせないとなると、明日生きていくのも大変だぞ。

 かといって、他の仕事をすぐに始められるわけでもないし……。

 今の時代、働かせてくださいと言ってすぐに働かせてくれる職場なんてありゃしない。

 ひとまず、どこかから生活資金を調達するしかないなぁ……。


「……何で、私の方を見るんです!?」

「アルトは、ギルドの職員食堂があるから飢えることはないんよね?」

「え、ええまあ……」

「給料もちゃんと定期的に出るのだろう? 手取りで二千ゴールドほど」

「そ、そうですけど……。だ、ダメですよ! お給料出ても、お金貸したりはしませんからね!」

「そんなこと言わんといて―な! 私ら仲間やろ? な? なな?」

「そこはダメですって! だいたい、お金貸したらカジノ行くでしょ!」


 アルトさんがそう言い返すと、リーツさんはウッと胸を抑えるポーズをした。

 ……あんた、ほんとにカジノいく気だったんかい!! 

 相変わらずのブレなさに、一緒になってお金を借りようとしていたサーシャさんまでもが頭を抱える。


「お前というやつは……」

「だって、生き甲斐やもの!」

「……こいつはひとまず置いておくとして。とにかく、金がないのは事実だ。何とかならないのか?」

「そうですねぇ……。何とか、いい仕事がないか探してみましょう!」


 任せてくださいとばかりに、胸を張るアルトさん。

 仮にもギルド職員の言葉である、それなりに期待が持てそうだ。

 こうして数時間後、アルトさんを除いた俺たち三人は――。


「いやー、おったまげたべ! まさか、Sランクの人が泊まりで収穫手伝ってくれるなんてよぉ!」

「ははは……いろいろとありまして」

「宿は納屋だけどもええべか? もともと鶏小屋だったから、ちっとばかし匂うけんども」


 とある田舎の村で、農家の手伝いを始めるのだった――!

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