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鑑定スキルを極めたら、受付嬢が魔王だった件  作者: キミマロ
第一章 魔王さま、現る!!
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第十六話 教団

「なんで男の俺が……まぁ、仕方ない面もあるんだけどさぁ」


 魔王の入居している石造アパート。

 その脇の路地で、俺はやれやれとため息をついた。

 パンツを入手したいなら、どう考えてもサーシャさんやリーツさんが盗み出す方が簡単である。

 勢いに押されてしまったが、俺のやるべき仕事ではない。

 ……もっとも、俺に貴重な材料の入手や魔法陣の作成が出来るわけじゃないけどさ。

 今頃二人とも、それぞれの仕事で大忙しのはずだ。


「おっ……来たな」


 建物の入り口から、魔王が出てきた。

 これからギルドに出勤する……にしては、やけに早い時刻だな。

 どこかで朝食を食べてから、出かけていくのだろうか?

 俺が不思議に思っていると、彼女はどこからかバケツとモップを取り出した。

 そしてアパートの前に水をまき、石畳の歩道をキレイに掃除していく。


「えらく模範的な感じだな」


 人間社会に溶け込もうとしているのだろうか?

 ずいぶんと魔王らしからぬ行動である。

 俺がちょっと感心していると、ここで近所の奥様方が通りがかった。

 魔王はすかさず箒を動かす手を止めると、軽く会釈をする。


「おはようございます!」

「おはよう! アルトちゃん、今日も偉いわねぇ」

「お掃除は基本ですから。やっぱり、キレイなところに住まないと人間やる気が出ませんよ」


 人間って、あんた魔王やないかい。

 俺はすぐさまツッコミを入れたくなったが、どうにか堪えた。

 その後も魔王は、奥様方と和やかな談笑を続ける。


「あら、もうこんな時間」

「旦那の弁当作らなきゃ!」

「ではまた。皆さん、お気をつけて!」

「アルトちゃんもまたね!」


 十数分後。

 ようやく奥様方の長話が終わった。

 彼女たちを見送った魔王は、再び周囲の掃除へと取り掛かる。

 こうして周囲をすっかりキレイにしたところで、ようやくモップとバケツを倉庫にしまった。

 この魔王、なかなかどうして凝り性のようだ。

 磨き上げられた石畳が、ピカピカと光を反射している。


「さて、そろそろ行かないと」


 いったん部屋に戻った魔王は、荷物をまとめて外に出てきた。

 今度こそ、ギルドに出勤するつもりのようだ。

 彼女がその場から立ち去ったことを確認すると、俺は路地を出てアパートの玄関へと向かう。


「あとは、ここを開けて中に入れば……いや、待てよ」


 玄関の扉に手をかけたところで、はたと気づく。

 相手はただの女の子ではない、あの魔王だ。

 部屋にどんな仕掛けがしてあっても不思議ではない。

 迂闊に侵入するのは危険だな、もう少し様子を見てからの方がいいか。

 サーシャさんの素材集めも、少し時間がかかるって言ってたしな。


「魔王の様子、しばらく観察してみるか。弱点とか分かったら儲けだしな」


 鑑定スキルと言えど、万能というわけではない。

 細かくてスキルに記載されていない弱点なども、きっとあることだろう。

 最終手段にしても、できれば使うに越したことはないし。

 

「そうと決まれば……まずはギルドだな」


 こうして俺は、魔王の職場であるギルドへと向かうのだった――。


 ――〇●〇――


「この魔王、魔王のくせにお手本みたいな生活してやがる……!」


 あれから二日。

 魔王の張り込みを続けていた俺だったが、弱点らしきものは特に見つかっていなかった。

 それどころか、魔王は魔族とは思えないほど規則正しい生活を送っていた。

 朝早くに起床し、家の前をせっせとお掃除。

 仕事が始まる二十分前にはギルドへ到着し、テキパキと仕事をこなして終業とともに帰る。

 夕飯はしっかりと自炊をして、そのあとは軽い運動。

 流した汗を風呂でさっぱりさせると、少し読書をして床に就く。

 ある意味、理想的すぎる生活習慣だ。


「そんなにまでして、人間に溶け込みたいのか? うーん、ここまで来ると素の性格なのかもな……」


 いずれにしても、重要なのは魔王のパンツを入手することである。

 しかし、二日間のストーカー……ごほん、張り込みにおいてもいい方法は見つけられなかった。

 できれば、魔王の家に侵入することなくことを済ませたいのだが……。


「風呂は自宅にあるみたいだし、他に下着を脱ぐことなんてなさそうだよなぁ……」


 額を手で押さえ、考えを巡らせる俺。

 するとここで――思わぬ人物が話しかけてきた。


「どうしたのかね?」

「あなたは……ピエールさん?」


 白銀の鎧をきらめかせながら、俺の顔を覗き込むイケメン。

 我らがギルドのナンバー2にして、鑑定で魔王への片思いが発覚した騎士のピエールさんである。

 こんな大物が、俺みたいな木っ端冒険者に何のようだろうか?

 俺は慌てて、崩れてしまっていた姿勢を正した。


「えっと、別に何でもないですけど……」

「何でもなくはないだろう。さっきから、ひどく思い悩んだ様子であちらを見ていたぞ」


 そう言うと、ピエールさんはカウンターに立つ魔王の方を見やった。

 いっけね、バレちゃってたか……。

 この人、魔王のこと好きだからちょっとまずいことになるかも。

 俺が狙ってる魔王に手を出すな!とか言われたら面倒だな。


「すいません、ピエールさんの邪魔をする気じゃ――」

「素晴らしい!」

「へッ?」

「君も彼女の魅力に気付いたのだね?」

「ええ、ま、まあ……」


 ただならぬ勢いのピエールさんに押されて、思わずうなずく。

 すると彼は、感極まったように天を仰いだ。

 なんだ、何でこの人はこんなに感動してんだ!?

 俺が戸惑っていると、ピエールさんは俺の手を取って固く握りしめてくる。


「同志よ、会えてうれしいぞ!」

「同志?」

「そうとも! 共にアルト様を愛する者として、仲よくしようではないか!」


 片思いって、そういうこと!?

 何か、恋愛とかそう言うのを飛び越えて、魔王を崇拝しちゃってるだろこれ!

 俺はすかさず、席を立ってピエールさんから距離をとろうとした。

 すると彼はその驚異的な身体能力を活かし、先回りをしてくる。


「どこに行くのかね!」

「いや、その……散歩?」

「ならば、我が教団の本部に来ないか? 君に見せたいものがある!」

「教団!?」


 どんだけだよ!!

 あんたらが崇拝してるのって、魔王だからな?

 魔王を崇拝する教団って、もはや邪教としか言えねえぞ!!

 俺は大いに呆れたものの、ピエールさんに半ば強制的に連行されるのだった――!


ピエールさん、まさかの再登場です!

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