表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鑑定スキルを極めたら、受付嬢が魔王だった件  作者: キミマロ
第一章 魔王さま、現る!!
15/33

第十五話 最後の手段!

「何とか無事に帰ってきたが……散々だったな」


 翌日の昼、冒険者ギルドにて。

 魔王のドラゴンゾンビに乗せられて、俺たちは無事に街まで帰ってきていた。

 けれども、三人そろって表情は昏い。

 頼みの綱であった聖剣は魔王の手に渡り、さらに敵側の戦力としてカオスインフィニットスーパードラゴンが増えてしまったのだから。


「しかしまぁ、生きてただけマシやね。儲けものや」

「俺たちの誇りと尊厳が、大いに失われた気がしますけどね……」

「ふん、お前は良いだろう。私たちとそういう関係であることを誤解されて、損することなどあるまい」

「いや……ピラミッドの上で岩やら縄やら使ってする関係は、さすがにアカンでしょ」


 そう言うと、俺は改めて深い深いため息をついた。

 これからどうしたものか……。

 いっそ、すべてを放り出して逃げてしまおうかとも思ったが、今となってはそれも難しい。

 魔王と俺は、同じパーティに所属しているのだから。

 迂闊に逃げ出そうとすれば、すぐにバレてしまう。


「……こうなったら、最後の手段やな」

「何かあるんですか?」


 俺はすぐさま、リーツさんに向かって身を乗り出した。

 彼女はもったいぶるように一呼吸すると、俺たちの顔を見据えながらゆっくりと語りだす。


「聖剣のあった古代遺跡に、召喚魔法陣が仕掛けてあったやろ?」

「タイタンが現れたやつか?」

「そうや。あれ見て思い出したんやけどな、古代遺跡の防衛機構には侵入者の強さに応じて守護者を召喚する魔法陣とかあるんよ」

「もしかして、その魔法陣を使えば……魔王より強い何かを呼び出せるってことですか?」


 俺が尋ねると、リーツさんはこくんっとうなずいた。

 すごい、それが本当だとしたら魔王を倒せるんじゃないのか!?

 俺とサーシャさんが目を輝かせると、リーツさんは待て待てとジェスチャーをする。


「十分な材料と私の腕があれば、遺跡の魔法陣を改良して魔王より強い何かを呼び出すことは可能や。ただなぁ、この魔法は制御に難があってな。呼び出した相手が、素直に従ってくれるかどうかわからへんのや」


 魔王より強い何者かが、万が一にも暴れだしてしまったら。

 俺たちには全く手に負えない事態となってしまう。

 魔王と何者かをぶつけて、疲弊したところを一気に突くという手もあるのだろうが……。

 とてもハイリスクだ。


「まさに最終手段って感じですね」

「せやろ? 私もたいがいギャンブラーやけど、これはほんまに賭けやと思うわ」

「しかし、何も備えがないよりはマシだな。リーツ、魔法陣の準備にはどれぐらいかかる?」

「材料さえあれば、半日もあればできるで。ただ、その材料ってのがなかなかに厄介や」

「というと?」

「貴重な秘薬やら魔石が必要や。市場で金積んでも、なかなか揃えられんレベルの」


 リーツさんがそう言うと、サーシャさんは任せておけとばかりに胸を張った。

 魔王には劣るものの、タイタンを瞬殺するほどの実力者である。

 だいたいのものはどうにかする自信があるのだろう。


「大丈夫だ、それなら私が集める」

「さすがはサーシャ、頼もしいわぁ。けど、必要なもんはそれだけやないで」

「何ですか? まさか、生贄とか言わないでくださいよ?」


 俺がそう言うと、リーツさんはとんでもないとばかりに首を横に振った。

 では、いったい何が必要なのだろうか?

 貴重な秘薬でも魔石でもないとすると……魔王の身体の一部とか?

 俺があれこれ考えを巡らせていると、リーツさんが何故だか恥ずかしそうな顔をして言う。


「あらかじめ断っておくとやね。今から言うことは、うちの性癖とかとは断じて関係ない。純粋に、魔法陣のために必要とするものや」

「……何なのだ、いったい」

「それはやね……。魔王の気や魔力が多く宿った形代や。普段使っとるものなら、割と何でも構わへんけど…………」


 よほど抵抗があるのか、リーツさんは再び言葉を詰まらせた。

 彼女は深く息を吸い込むと、意を決したように目を見開き――。


「下着が欲しい。できれば、ブラやなくてパンツ」

「ぶっ!?」


 し、下着って!

 それもわざわざ、パンツを指定してくるとは。

 魔法的に必要なものなのだろうけど、たまらず噴き出してしまった。

 まさかこの状況で、パンツって!

 真剣な雰囲気とのギャップが大きくて、俺もサーシャさんも笑いをこらえるのに必死になる。


「せやから言ったやろ! 純粋に魔法のために必要なんやって!」

「いや、それはわかるのだがな」

「ええ、わかるんですけど……」

「あーもう……! とにかくやな、それがないと術の精度が大幅に落ちてしまうんや。なんとしてでも確保せなならん!」

「わ、わかった。だが、そうは言ってもな……」


 遠目でカウンターの方をうかがうサーシャさん。

 兼業冒険者である魔王は、今はギルドの受付嬢として働いていた。

 彼女が俺たちのパーティで仕事をするのは、本業である受付嬢業務がお休みの時に限る。

 機会は限られているし、その上、下着なんて仲間であろうと見せるものではない。

 そんな中でパンツを盗み出すのは、かなり大変そうだ。


「難しいやろな。けど、やるしかないで」

「リュカ、お前の鑑定で何とかならないのか? もしくはエロパワーで」

「鑑定でどうしろってんですか。というか、エロパワーって何!?」

「そりゃお前、女の秘密見たさに鑑定を極めるやつはエロいだろ」

「せやせや。エロ魔神やな」


 待って、二人の間での俺のイメージってどうなってるの!?

 そりゃまあ、特にサーシャさんには最初割とひどいこともしたけどさ。

 さすがにエロ魔神なんてのは、ちょっと聞き捨てならないぞ!

 だいたい、俺たち仲間だろ!?


「仲間だからこそだな」

「正当な評価やろ。それに、今回に関しては間違いなく役に立つで。その変な情熱」


 そう言うと、リーツさんはズイっと俺の方に身を乗り出してきた。

 そして肩に手をかけると、真面目で真剣な表情をして言う。


「エロは世界を救うや! そのパワーで魔王のパンツ、何としてでもつかみ取ってきてや! 頼む!!」


 手を合わせて、頭を下げるリーツさん。

 こうして俺は、魔王のパンツを手に入れるべく行動を開始することとなるのだった。

 まったく、どうしてこうなった――!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ