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鑑定スキルを極めたら、受付嬢が魔王だった件  作者: キミマロ
第一章 魔王さま、現る!!
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第一話 あの子の秘密

 ――鑑定スキルを極めれば、他人のどんな秘密でもわかる!

 こんな都市伝説を信じて、来る日も来る日も鑑定すること約三年。

 努力の甲斐あって、とうとう俺は鑑定スキルを極めた。

 思えば本当に長かったなぁ。

 来る日も来る日も、薬草をスキルで選別する日々。

 それを乗り越えて、どうにかこうにか極めたのだが……。


「これは……知りたくなかったぜ……」


 冒険者ギルドの受付カウンター。

 そこで俺は、呆然自失として立ち尽くしていた。

 世の中、やっちゃいけないことってあるもんだなぁ……。

 興味本位で使った鑑定スキルが、まさかこんな結果を招くとは。

 もしかしてあれか?

 女の子の秘密を探ろうとしたから、女神様でも怒らせちゃったのか?

 いやあ、それにしたってこれはないだろ……!

 いくら何でも罰が重すぎる。

 覗きをしたら死刑宣告されたぐらいのもんだぞ!


「どうかなされました?」

「いや、何でもない! 何でもないでございます!」

「ございます? どうして敬語なんですか?」

「あっ、それはその!」


 慌てて言いつくろおうとして、言葉を詰まらせる。

 そりゃあ、このステータスを見れば敬語になるよ。

 俺程度の冒険者なら、十人まとめてデコピンで吹っ飛ばせるぐらいなんだから。

 というか、そもそも――


 名前:アルト・ロゼリア・エルダーク三世

 年齢:147

 職業:魔王

 体力:450

 魔力:870

 攻撃:245

 防御:450

 敏捷:550

 幸運:80

 スキル:闇魔法・死霊魔法・吸命法・変化・王者の威光

 備考:人化中・ステータス偽装中


 魔王様だもんな、うん。

 職業欄にこれでもかって書いてあるもんな……。

 どうしよう、これバレたら殺されるのか?

 つーかむしろ、何で魔王がこんな場所にいるんだよ?

 普通、魔王って言うのは人里離れた僻地の城でふんぞり返ってるもんだろ!

 無駄に煌びやかな玉座の上で、思いっきり背筋を反らせてさ!

 それが何でまた、こんな田舎のギルドにいるんだ……。

 場違いなんてもんじゃねーぞ!


「やべえよやべえよ……」

「あ、あの! ほんとに大丈夫ですか!?」

「大丈夫じゃない。全然、大丈夫じゃない」

「ええっ!?」

「と、とりあえずお腹の具合が悪いからもう帰るよ。おっと!?」


 頭がぼんやりとしていたのだろう。

 俺はうっかりと足を滑らせ、その場ですっころんでしまった。

 いてて……膝すりむいちゃったよ。

 仕方なく袖をちぎって包帯の代わりにしようとすると、ここで――。


「これ使ってください!」

「え?」


 戸惑う俺をよそに、近づいてくる受付嬢さん。

 彼女は自らのハンカチをくるくると俺の足に巻き始めた。

 あんた……魔王じゃないのか?

 そう思って彼女の顔を見ると、とても心配そうで優しさに満ちていた。

 魔王というよりは、天使のようである。

 これはもしかして、鑑定が間違っていたのか?

 いや、極めたスキルに誤りがあるはずはない。

 スキルとは、それすなわち神の力なのだから。


「あっ……」


 もしかして、意外と魔王っていい奴なのか?

 考えてみれば、実際に魔王にあった人間なんてほとんどいない。

 魔王の人物像なんて、あくまで伝説とかから推測しているにすぎないのだ。

 魔王が悪じゃない可能性だって、あるかもしれない。

 こうして俺があれこれ考えあぐねているうちに、処置が終わる。


「これで大丈夫です!」

「ありがとう……ございます」

「いいんですよ。明日、洗って返してくれれば」


 白い歯を見せて、にこやかに笑う受付嬢さん。

 これは、ほ、惚れる……!

 たまらず顔を赤くした俺は、とっさに彼女から視線をそらした。

 こんなとこ見られたら、恥ずかしいからな。

 そしてそのまま、ゆっくりと立ち上がる。


「じゃ、じゃあ。また明日」

「はい!」


 笑顔の受付嬢さんに見送られ、俺はギルドを後にした。

 結局、良かったような悪かったような。

 彼女が魔王であることに注意する必要はあるだろうが、うーん。

 もう少し様子を見てからでもいいかもしれない。

 そもそも、俺は鑑定眼を極めただけで他の能力は普通だしな。

 魔王に対して何かできるのかと言われると、ぶっちゃけほとんどない。


「むっ!」


 歩いているうちに、ハンカチが緩んで落ちた。

 ありゃりゃ、縛り方がずいぶん緩かったみたいだな。

 すぐさま屈んでハンカチを拾い上げると、再び縛ろうとする。

 だがここで……気づいた。

 ハンカチの裏に、何やら文字が書かれていることに。


『見たことは忘れろ。言えば殺す』

「ひょわ……!!」


 仰々しい筆致で描かれた恐ろしい文言。

 思わず変な声が出た。

 ついでに、大小いろんなものも出た。

 なんってこったい、やっぱり魔王は魔王だったのか!

 俺、死んだかもしれんな……。

 ひとまず帰路に就いた俺は、そのあとめちゃくちゃセンタクした――。


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