改名しましょう
元ってつけるのが面倒になりました
元聖女に呼び出され、元勇者と幼馴染ちゃんは元聖女のところへ向かっていた。
幼「何の話だろうね?」
勇「さぁな、あいつのことだからろくでもないことだと思うが」
幼「それでもちゃんと行くんだね」
勇「行かないと押しかけてきそうだしな」
集合場所で元聖女が腕を組んで待っていた。
聖「よくぞ集まった。わが精鋭たちよ!」
勇「さぁ、帰るか」
幼「そうだね」
元勇者と幼馴染ちゃんは踵を返して帰ろうとする。
聖「ちょ、ちょっと待ってください! ちゃんと呼び出した用件はありますから!」
慌てて元聖女は二人を呼び止めている。
勇「ちゃんとした用件なんだろうな?」
幼「帰って俺君とイチャイチャしたいんだけど」
聖「勿論ちゃんとした用件ですよ。ズバリ私たちの名前のことです」
勇「どういうことだ?」
聖「元聖女、元勇者って身元がすぐにバレちゃうじゃないですか。それに呼びにくいですし。そういうことで改名をしようと思います」
幼「私は?」
聖「幼馴染ちゃんもこの際、一緒に新しく名前を変えましょう。呼び名としても入力するのも結構面倒なんですよ?」
勇「後のやつは誰の都合なんだよ」
幼「俺君は変えないの?」
聖「残念ながら俺君は私たちみたいに若返って姿が変わっていないので変更はなしです。それに今更名前を付けたら違和感があるでしょ?」
勇「俺たちだって名前付くのは違和感があるんだが。まぁ、元といつまでもつけてたらバレるから仕方ないか」
幼「俺君とお揃いが良かったのに。残念」
聖「そんなわけで私たちだけ改名して、その後、俺君へお披露目しましょう」
勇「素直に納得はできないが、名前を考えるのは面白そうだな」
幼「俺君に呼ばせたい名前かぁ……」
聖「勇者はゴンザレスとかどうですか? 違和感なくてぴったりだと思いますよ」
勇「どこからその名前が出たんだよ。嫌だよそんな名前」
幼「ああああとかは? みんなよく付けてるよ?」
勇「確かにつけてるけどさ! 流石にその名前はダメだろ!」
聖「じゃあ、コナンとかロトとかアベルとかアルスとか」
勇「いい名前だけどな。それ普通に使ってもいい名前なのか?」
幼「文句ばかり言ってる」
聖「そうだそうだ。文句言うなら自分の考えも言いなさい」
勇「うーん。そう言われてもなー。あ、セツナとかゼロとかはどうだ?」
元聖女と幼馴染ちゃんは二人してジト目で元勇者を見る。
聖「それで本当にいいんですか? 後で黒歴史になること間違いなしですよ」
幼「似合わない」
勇「くっ。言われてみると、そうなりそうな気がしてきた。無難な名前にするしかないか」
聖「ヤマダタロウとか?」
勇「それファンタジーの世界じゃ違和感アリアリじゃねーか!」
聖「一応違和感がなくなるような名前の候補があるので後で伝えましょう」
勇「ほう、そうなのか。今まで出した候補を考えるとろくでもなさそうだが、まぁ、いいさ」
幼「じゃあ、私は俺君にマイスイートハニーと呼ばれたい! ほかにもアレとかコレとか…それで私はダーリンとか旦那様とか呼んで…えへへ…」
顔を赤くして幼馴染ちゃんが言う。
その言葉を聞き、元勇者と元聖女は顔を見合わせ苦笑いをする。
勇「それって俺氏以外の奴も呼ぶんだぜ。マイスイートハニー」
聖「そうですよ。俺君だけに呼んでもらえるように俺君に頼む方がいいですよ。マイスイートハニー」
二人の言葉を聞き、熱が冷めた幼馴染ちゃん。
幼「そうすることにするよ」
勇「その方がいいぜ。マイスイートハニー」
聖「それがいいですよ。マイスイートハニー」
幼「もう! それ以上言わないでよ!」
勇「わかったぜ。マイスイートハニー」
聖「了解しましたよ。マイスイートハニー」
幼「ぶーぶー」
二人のからかいに頬を膨らませブーイングする幼馴染ちゃん。
幼女のブーイングは可愛らしい。しかし、この幼女は一児の母である。
聖「ふたりとも良い名前が思い浮かばなかったみたいなので腹案を出しますね」
勇「おう、バッチコイ」
幼「まともな奴なのかな?」
聖「まぁ、普通ですね。私たちの頭文字を訓読みしただけです。勇者はユウ、幼馴染ちゃんはヨウ、そして私は聖女のセイです」
勇「意外にまともだな」
幼「元聖女にしてはまとも」
聖「これで漢字にすれば表示上は今までどおりでイケます! 違和感なしです! 呼び方も省略できます!」
勇「そんな理由かよ!」
聖「漢字3文字が漢字1文字に省略できるんですよ!」
幼「やっぱり元聖女の考えることだったよ」
聖「幼馴染ちゃんに至っては6文字が1文字に! これはめんどくさくない!」
勇「そういう力説はどうでもいいから。でもまぁ、理由はともかく名前としてはまともだから採用するか」
幼「私は幼だったね」
聖「そうそう、幼ちゃんがやったように最初にルビを打っておけば読む方も大丈夫」
勇「というかそういうのって、あらすじにでも最初から書いておけばいいんじゃないか?」
聖「それじゃネタバレするじゃないですか! これだから勇者野郎は」
勇「おい、呼び方戻ってるぞ」
幼「次回の前書きにでもちょこっと書いておけば大丈夫でしょ」
聖「流石幼ちゃん。どこぞの馬の骨とは違いますね」
勇「せっかく名前つけたんだから名前で呼べよ。呼ばないんだったら、名前を付けた意味ないだろ!」
聖「文句ばかりですね。脳筋野郎は。それはそうとこの呼び方で気が付いたことがありませんか?」
幼「ん? 何かあるの?」
聖「並べるとわかりますね。ユー、セイ、ヨー」
勇「わからん」
聖「英語にしますか。you say yo!」
幼「ラップっぽい?」
聖「ビンゴ! でまぁ、これで俺君へのお披露目の時に……ごにょごにょごにょごにょ」
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幼馴染の実家で俺君と妹が娘ちゃんをあやしていた。
幼「ただいまー。元勇者と元聖女も来たよ。それで俺君にお知らせがあるよ」
俺「おかえり。お知らせってなんだ?」
元勇者、元聖女、幼馴染が家の中に入ってきて横に並ぶ。
勇「ヘイユー! 俺は勇者のユー。ミーでもユー。ヒップの勇! イェア!」
聖「セイヨー! 私は聖女のセイ! エブリワンセイ! ビューティフルセイ! イェイ!」
幼「ヘイヨー! 私は幼女のyo! yo! yo! yo! チェケラ!」
俺君は呆れている。
俺「…………おまえら何か悪いものでも食ったのか?」
妹「娘ちゃんはああいう大人になっちゃダメですよー」
娘「アー」
私はラップと聞いてもサランラップしか知りません。