聖女に彼氏?
みんなが聖女に幸せになって欲しいというから男を紹介してみました
幼「元聖女に男性を紹介しようかと思ってる」
突然幼馴染ちゃんが宣言した。
聖「マジですか!? あ、幼馴染様! 履物が汚れていらっしゃいます。この私めが磨きましょう。きゅっきゅっとな」
即座に反応した元聖女がどこからか取り出した布で幼馴染の履物を磨いている。
勇「うわぁ、プライドを投げ捨ててやがる」
聖「そこっ! うるさいですよ! プライドを捨てるぐらいで男ができるならいくらでも捨てましょう!」
勇「いや、この姿見たらどんな男でも引くと思うぞ」
聖「ええい、幼馴染様の気が変わったらどうする!」
俺「いや、元聖女さん、そんなことしなくても幼馴染には紹介させますから」
俺君が元聖女の姿に引きながら言った。
思わず敬語を使って話しているのがその証拠だ。
聖「あ、俺君、いやこれは違うんですよ。そう、これは趣味なんです」
勇「俺君の前だからって猫をかぶりやがって。あとおまえは他人の履物を磨くのが趣味なのか。初めて聞いたぞ」
聖「そこはさっきからやかましい! 黙ってなさい!」
元聖女は元勇者を威嚇している。
勇「へいへい、怖い怖い。ヒステリーを起こすのは勘弁な」
聖「気を取り直してっと。ささっ幼馴染様、紹介して頂けるお方はどんな人なのでしょうか? 年上? 年下? 可愛い系? クール系? ワイルド系? うっはー夢がどこまでもひろがりんぐ♪」
勇「自分に都合のいい想像をしているな。現実を思い知るといい」
幼「その前に元聖女の希望を聞いてみるんだよ」
聖「わっほーい! いいのですか!? いいんですね?」
幼「聞くだけならね。とりあえず言ってみて」
幼馴染ちゃんのその言葉にガッツポーズをする元聖女。
聖「よっしゃ! なんぼでもいいまっせ! そうですねー。まずイケメンがいいですねー」
勇「いきなり顔かよっ!」
幼「俺君は顔は地味だけど性格行動がイケメンだよ」
聖「あとそうですねー。経済力がある人がいいですねー」
勇「金! 金! 金! 聖職者として恥ずかしくないのか!」
幼「俺君と私ですっごく稼いでるよ」
聖「この世の中強くないと生きていけませんからね。強くて私を守ってくれる人がいいなー」
勇「おまえなら相手を守って敵を倒せるよな」
幼「俺君は強くて私を守ってくれる」
聖「性格が悪い人は嫌ですねー」
勇「おまえよりはみんな性格はいいだろうさ」
幼「俺君は性格もイケメン」
聖「やっぱり私のことをわかってくれる人がいいですねー」
勇「おまえのことを理解したら、みんな離れていくんだろ」
幼「俺君と私は分かりあっている仲」
俺「非常に俺の居心地が悪いんだが……」
ぼそりと俺君が発言をする。
聖「ちょっと! さっきから勇者野郎はちゃちゃいれて、幼馴染ちゃんは俺君の自慢ばかりじゃないですか!」
幼「新婚だし仕方ないでしょ。『ねんがんの 俺君をてにいれたぞ!』って気分なんだ」
聖「『ゆずってくれ たのむ!!』」
幼「だが断る」
聖「ずるいです。こうなったら『殺してでも うばいとる』を選択するしか」
勇「俺氏は物じゃないんだから無理だろ」
聖「そこは『な なにをする きさまらー』じゃないですか。まったくこれだから勇者野郎は」
勇「それネタ知らないとわからないだろ」
幼「盛り上がってるところ悪いけど。紹介はもういいの?」
即座に元聖女が反応してジャンピング土下座をする。
聖「いいえ! 幼馴染様、何卒よろしくお願い致しますでございます!」
勇「敬語がおかしなことになってるぞ」
幼「元聖女の要望をみんな叶えているよ」
聖「マジすか!?」
その言葉を聞き、喜びの舞を踊りだす元聖女。
幼「そこにいるよ」
幼馴染ちゃんは元勇者の方を指を差す。
元勇者はそれを見て左右をキョロキョロと見ている。
元聖女はまぶたをゴシゴシとして何回も見る。
聖「いやですねぇ。幼馴染ちゃん、そっちには勇者野郎しかいないじゃないですかー。はっもしや姿が見えない人とか!?」
幼「いや、元勇者のことだけど」
勇聖「「はぁっ!?」」
元勇者と元聖女は息を揃えて驚く。
聖「何を言っているんですか。勇者野郎とかありえないですよー」
勇「まったくだ。誰が元聖女と何かに……」
俺「幼馴染、流石にその組み合わせはないんじゃないか?」
幼「条件」
聖「条件?」
幼「イケメン」
聖「ぐ」
幼「高レベルで稼げるため経済力あり」
聖「ぐぐ」
幼「魔王を倒せるぐらいの強さ」
聖「ぐぬぬ」
幼「どんな言葉にもつっこみを入れる性格の良さ」
聖「えー?」
幼「そして仲間だからよく元聖女のことを分かっている」
聖「……」
勇「おい…。なんとか言えよ」
聖「…………絶望した!」
元聖女が絶叫する。
聖「私の理想が勇者野郎だなんて! 私は私自身に絶望した!」
元聖女がおかしなことになっている。
勇「……なぁ、俺はこんなときどんな顔をすればいいんだ? 泣けばいいのか? 怒ればいいのか?」
幼「………笑えばいいと思うよ」
勇「あっはっは! 笑えるわけないだろっ!」
俺「まぁまぁ興奮するのもわかるが、元勇者、ちょっとは落ち着け」
幼「それに前に元勇者が言っていた。癒し系の女の子が好みだと」
そう言って元聖女を指さす。
幼「回復魔法を使って癒してくれる」
勇「癒しの意味がまったくちっがーう! ただの回復魔法じゃないか!」
幼「美少女とブスのどっちがいい?」
勇「その質問の仕方は間違ってるだろ!」
幼「スタイルのいい子とそうでない子どっちがいい?」
勇「もはや答えが一択しかないような質問じゃないか! それ逆のほうを答えたら特殊な性癖の人だよ!」
幼「もう条件はぴったりマッチングしてるよ」
勇「条件だけはなっ!」
元勇者はツッコミ疲れたのか、ぜえぜえしている。
元聖女は目が虚ろになって何かをぶつぶつ言っている。
俺「なぁ、幼馴染、流石にこれは無理があったんじゃないか?」
幼「おかしいなぁ、二人とも素直じゃないんだから」
勇聖「「そういう問題じゃない!」」
幼「あ、復活した」
ご覧の通りのありさまだよ