表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

ある男の昔語り

設定が生えた男の昔語り

 俺は裕福な家に生まれた。


 父親は成功した実業家、母親は女優。


 金持ちの家に生まれ俺は何不自由ない生活を過ごした、と思われるかもしれない。


 習い事、家庭教師、色々と俺に親は期待した。


 俺は親の期待に応えるため優秀であり続けた。


 自分の時間なんてものはなかった。


 ただひたすらに親の期待に応えるために頑張り続けた。


 成績は常にトップクラスであり続けた。


 運動も頑張った。影で努力し、できないこともできるようになった。


 俺は女優の母親に似て顔がイケメンと言われるぐらい整っていた。


 そして俺はそれを利用し、模範的な外面を身に着けた。


 弱きを助け、強きを挫き、誰にでも優しく、居るだけでその場の雰囲気をリードできるようなリーダーに。


 俺は顔もよく、成績もよく、運動もでき、性格も良く見せていたから女にモテた。


 しかし、寄ってくる女はみな俺を見ていない。


 俺の顔、俺のステータスだけしかみていない。


 金持ちの子、成績のいい子、運動ができる子、性格のいい子。


 そんな俺のステータスしか見ていない。


 男には嫌われた。


 モテるのが気に食わなかったらしい。


 俺はどうでもよかった。親さえ繋ぎ止めればよかったから。


 ある意味必死になれた時期は良かったのかもしれない。


 そんな俺の気持ちをあざ笑うかのように父親は浮気をした。


 両親に喧嘩が絶えなくなった。


 母親は俺に依存した。


 あんな父親にはなるなと愚痴を言い続けるようになった。


 それでも外面を大事にしたせいか、離婚することはなかった。


 お互いに浮気をしていた。


 俺の家は金持ちだが崩壊していた。


 俺は崩壊した家で模範的にピエロを演じ続けた。


 学校でもピエロを演じ続けた。


 ただそれだけが俺にできることだったから。


 俺には相談できるようなやつはいなかった。


 俺には誰もが打算的にしか見えなかった。


 教師だろうが同級生だろうが。


 俺に近づくやつは同じような顔にしか見えなかった。俺から離れるやつも同じ顔にしか見えなかった。


 俺は常に模範的であり続けた。


 そして俺は何もかもが嫌だった。


 そんなときだ、異世界に召喚されたのは。


 俺は最初、夢としか思えなかった。


 だってそうだろ?


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 夢だったと思うのも仕方ない。


 だが、現実だった。


 俺は高揚した。


 ここから俺の人生が新しく始められると思った。


 でも、現実はここでも俺に優しくなかった。


 俺は勇者として祭り上げられ、魔王を倒す使命を与えられた。


 誰もが俺に期待し、誰もが俺にすり寄ってくる。


 誰も俺を見ていない。


 勇者としての俺しか見ていない。


 俺はあざ笑った。異世界に来たと言っても、所詮こんなものかと。


 だが前世ほどしがらみがない世界は俺にとって快適だった。


 どんどん強くなる自分を見るのはそれはそれで楽しかった。


 しかし俺は誰も信用していない。


 勇者として価値がなくなったら誰も俺を認めないだろう。


 そんなときだ。


 俺に同年代で俺の教育係がついたのは。


 そいつは地味だった。


 そいつは強かった。


 俺は初めて圧倒的に負けるという経験をした。


 俺は悔しいという気持ちを初めて抱いた。


 俺は何度も何度もそいつと戦った。


 そして挑むたびに負けた。


 そいつとの闘いは学ぶことが多かった。


 色々試行錯誤をした。


 楽しかった。


 俺は昔からなんでも頑張ればできたから、できないという経験はなかった。


 そいつも俺との闘いで徐々に強くなった。


 できないことが少しずつできるようになっていった。


 俺たちは互いに高めあっていた。


 楽しかった。


 ある日そいつに幼馴染の女がくっついてきた。


 俺は女をバカにしたような発言をうっかりしてしまった。


 俺にとって女はステータスしかみないやつらしか見ていなかったから。


 そいつは怒って俺と喧嘩をした。


 俺はうらやましかった。


 大事な人、大事なものなんて俺には偽りであって、何もなかったから。


 初めて喧嘩なんてものをした。


 俺は誰にでも優しく誰にでも理想なやつを演じていたから、喧嘩なんてものをしたことがなかった。


 ぼこぼこにされた、でも相手もぼこぼこにしてやった。


 楽しかった。


 俺にこんなに感情というものがあったのかと感動もした。


 俺はそいつと仲良くしたいと思った。


 だがそいつは言った。


「仲良くしようなんて思って仲良くなるなんて本当の友達じゃないだろ?」


 そいつはそう言って笑った。


 俺も笑った。


 そうして俺と俺氏は親友になった。






 聖「やっぱり勇者はホモですよ。俺君を見る目がおかしい」


 幼「俺君の貞操は私が守る!」


 勇「おーい! なんでちょっと昔を思い出しただけでそんなことになるんだよ! おかしいだろ!」


 聖「ホモの思考だな。近寄らないでください」


 幼「俺君に近づかないで。ホモが移ったら困る!」


 二人は俺に対してしっしと手をやっている。


 勇「俺はホモじゃねー!!!」


 こんな毎日だが俺は楽しいと思ってしまっている。


 こんな奴ら相手だけどな。

いい話かなー('ω')

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ