6話 エピローグ
初の勇者視点
俺は元勇者。
親友である俺氏の結婚式に元聖女と共にやってきたんだ。
あいつも幼馴染との結婚で幸せなんだろうな。
親友として二人を祝ってやろう。
と、そう思っていたんだが……。
勇「なんで妹ちゃんも幼馴染と同じ服着てるんだ?」
なぜか俺氏の両隣に幼馴染姉妹が同じ服を着ていた。
俺氏はなんだか疲れたような顔をしている。
幼馴染ちゃんが娘ちゃんを抱いているが、幼馴染ちゃんの外見の容姿があまりにも幼いため、子供が赤ん坊を抱いているようで微笑ましい。
妹ちゃんは逆に大人びている外見で背も高いので、俺氏と並んでいるとまるで妹ちゃんと俺氏が結婚するみたいに見える。
幼馴染ちゃんと並ぶと姉と妹の立場が逆にしか見えない。
なんだか幼馴染姉妹の目が鋭くなってきたのでこれ以上考えるのは危険だと、元勇者としての勘が警告を出しているので俺は考えるのをやめた。
妹「ふふふ。なんででしょうね? と言いたいところですが、私も姉さんと同じく、お兄さんと結婚するからです」
勇聖「「はぁっ!?」」
俺と元聖女は驚いた。
勇「ちょっと待った。そんな話聞いてないぞ? 俺氏どういうことだ?」
聖「そうだそうだ! 俺君には説明の義務があると思います!」
俺と元聖女がまくしたてる。
俺「ああ……。なんだかそういうことに……なったんだ。それ以上はもう聞かないでほしい」
俺氏はとても……そう、とても疲れきった声で言った。
俺氏……いったい何があったんだ?
しかし、俺氏の様子からこれ以上聞けなさそうだ。
聖「妹ぉ! あなたが俺君の弱みでも握って脅迫でもしたんでしょ! いつかあなたはやると思ってましたよ!」
元聖女が妹に詰め寄っている。
妹「まったく心外ですよ。元聖女じゃあるまいし、そんなことやりませんよ。これは姉さんも了承済みです」
妹ちゃんが答える。
聖「誰がやりますか! いや、やらないですよ? 弱みとか握ってないからやらないですよ?」
元聖女の目が泳いでいる。
コイツ……弱み握ったらやってたかもしれん。
なんといっても聖女だからな。
ほんと、なんでこいつが聖女に選ばれたのか不思議でしょうがない。絶対間違っていると思う。
幼「ほんとだよ。私が許可した。もちろん私が正妻」
幼女な幼馴染ちゃんが言う。
もはや完全にロリだ。
聖「バカな!? 幼馴染ちゃんが独占しないだと!? じゃ、じゃあ私も」
俺幼妹勇「「ないから」」
全員でハモる。
聖「全員が即否定!? って元勇者までなんで否定するんですか!」
元聖女は悔しさのあまりにゲシゲシと地団駄を踏んでいる。
だって、聖女だしな…。それにしても地団駄を本当に踏む奴って初めて見たよ。
聖「くっそー。この機に乗じて私もリア充になる野望が……」
やっぱりそんな理由か。
外見でいえば美少女と言ってもいいんだが、なんでこんなに残念なんだろう。
まぁ、聖女だし考えても仕方ないな。
そんなことを考えていると妹ちゃんが元聖女の元へ寄って囁いた。
妹「残念でしたね。負・け・イ・ヌ・さん」
聖「ムッキィー!!!」
元聖女が逆上した。駄々っ子パンチで妹ちゃんに襲い掛かる。
俺「あー。済まないが抑えてくれ。これから結婚式があるから服を汚したくない。あと妹ちゃんも煽らない」
俺氏が妹ちゃんをかばって元聖女の駄々っ子パンチを防ぐ。
聖「俺君……。ヒドイです><」
妹「はい。わかりました。お兄さん」
元聖女があざとい泣きまねをし、妹ちゃんは返事の後、俺氏に見えないように舌を出している。
元聖女はどうでもいいとして、妹ちゃんは元聖女を嫌っているようだな。
妹ちゃんは元聖女以外にあんな態度はとらない。
聖女だし仕方ないか。
幼「遊んでないで。もう時間だし行くよ。元勇者は娘を預かって」
そう幼女は言うと俺に娘ちゃんを預けてきた。
聖「ちょっと。なんで私じゃなく元勇者のほうに預けるんですか。私おかしいと思います」
元聖女がなにやら抗議している。
俺もおまえはおかしいと思う。
それに聖女だし信用がなくても仕方ないじゃないか。
さっきからこればっかり言っている気がする。
それはそうと娘ちゃんは可愛いなぁ。
俺の生きていた日本と違ってこの世界では一夫多妻もその逆も認められている。
魔物がいるこの世界じゃ死亡率高いし、そうなるのも生き残るためには仕方ないだろうな。
この世界の結婚式は教会で司教が実際に祝福を結婚するカップルにかけるらしい。
元聖女もできるらしいが、どうみても呪いにしかならないようなので以前に禁止されたそうだ。
あいつが選ばれたの絶対何かの間違いだろう。
結婚式には教会でカップルはドレスを着て式が終わった後、お披露目して、ブーケを投げるらしい。
なにその日本と同じ習慣と思ったが、俺氏に聞いたところ、この世界には以前にも地球からの転生者や召喚されたやつがいて地球の文化が流出したらしい。
道理でところどころこの世界に以前の世界と同じようなところが見受けられるはずだ。
そして俺の知識チートの野望は始まる前に終了しました。お疲れ様です。
それはそれとして、教会の外には俺氏の知り合いや近所の人とかが来て集まっている。
俺氏を祝福する人が多くて親友として嬉しい。
人が集まっているせいかみんながやがやしている。
「ついに俺君も結婚かー」
「なんでも幼女と結婚するそうな」
「あれ? 俺は背の高い美人と結婚するって聞いたぞ」
「子供ができたから結婚するらしい」
「姉妹と結婚するそうだぜ」
「俺君もやるもんだな」
みんな好き勝手言っている。
教会から祝福の光が放たれ、俺氏たちが教会から出てきた。
俺氏は幼馴染ちゃんと妹ちゃんの両方と手をつないでいる。
「おい、出てきたぞ。幼女と美人と手をつないでいるな」
「あんな幼女と結婚するとか信じられん」
「いや、幼女が姉のほうで背の高いほうが妹だ」
「「マジで!?」」
「しかも幼女の方はすでに子供を産んでいるらしい」
「「マジで!?」」
「あんな幼女に手を出すとはイエスロリータノータッチの精神がないのか」
「なんてやつだ。おにちくだおにちく」
聖「そうだそうだ。おにちくしょーだー」
「姉妹丼とかうらやましすぎだろ。まったくけしからん」
みんな好き勝手言ってざわざわしているが、なんか今変なのが混ざっていたような気がする。
妹「ブーケを投げますよー」
そう言って妹ちゃんがブーケを投げた。
女性陣が黄色い声を上げ、ブーケに向かって殺到する。
だが、見覚えのある姿が群集を蹴散らしてブーケを奪い取る。
聖「獲ったどー!」
元聖女のまわりからは人が一定の距離を取っていた。みんな引いているらしい。
必死過ぎる。なんでアイツは若返ったのにあんなに必死なんだろうか。自覚症状があるんだろうか?
それにしたってアレは恥ずかしい。
俺とアレは他人だから。無関係だからね? 俺は知り合いと思われないようこそこそと隠れることにした。
聖「俺くーん。私がとったからねー」
俺氏……強く生きろ。
これが公開処刑というやつか。
俺氏たちはアレと知り合いなんだとみんなに見られて、恥ずかしそうにしていた。
なんといっても聖女だし。
こうして俺氏の結婚式は騒がしくも終わったのであった。
聖女だし。




