5話 結婚式の前に 5
妹のラストターン!
妹「確認します。姉さん」
幼「なに? 今いいところなんだから、邪魔しないで欲しい」
姉さんはお兄さんとイチャイチャしているところに声をかけられて不満そうだ。
しかし、そんなのは私にとっては関係ない。というか後にしろ。
妹「姉さんが私に本当に相談したかったことってこれだけじゃないですよね?」
幼「…………そう、気が付いてくれたんだ。それじゃあ、続きを始めようか」
姉さんはそう言うとお兄さんから離れて、元の位置へ戻る。
俺「え? だって相談って出産できないことを俺に言えなかったことじゃないの? もう解決したはずじゃないの?」
お兄さんは不思議そうな顔をしている。
妹「それは…」
私がそのことを言おうとしたが…。
娘「それではこれより審理を再開いたします」
姉さんが腹話術でまだ何か話して遮られました。……もう、ほんとなんなんでしょ、これ。
まぁ、いい、ここから仕切り直しです。
妹「お兄さんは考えませんでしたか? もしも、お兄さんがさっきの姉さんの秘密を暴いたとしても、結果は変わらなかったと」
俺「ん? いや、考えてはいなかったな。でも言われてみると確かに同じ結果になっただろうな」
妹「そう、私以外でも良かったはずなのです。勇者は男なので生理などの話をするのは駄目ですが、あのビッチ聖女にやってもらっても同じ結果になったはずなんです」
俺「ビッチ聖女って…。いや、確かに聖女でも想像してみると結果としてそうなるのかもしれないな」
妹「それなのに姉さんは私に頼んできた。これはつまり!」
私はバンッと机を手で叩いて指を突き付ける。
妹「姉さんが! 私に! 別のことで頼みたいことがあったということなのです!!!」
俺「あああ!!!」
お兄さんは驚くが、態勢を整える。
俺「し、しかし、頼みたい内容は幼馴染に聞かなければわからないのじゃないか?」
その言葉を聞き、私は首を横に振る。
妹「いいえ、それはすでにわかっています。そしてはそれは誰でもわかるんです」
俺「ええ!?」
妹「よく考えてみてください。さっきの相談、まだ根本的には解決はしていないのです!」
俺「根本的には?」
妹「そう、お兄さんに子供が生まれなくてもいいって言ってもらえたとしても、姉さんの目的は、”お兄さんの家族を増やすこと”です。その達成のためには兄さんの子供が産まれることが必要なんです」
俺「俺の家族を増やすこと……そうなのか? 幼馴染?」
幼「妹の言う通り、あんたの家族を増やすことこそ、私がずっと目的にしていることだよ」
俺「もう十分だっていうのにな」
妹「だから今のままではそれができない。そこで姉さんは考えたのです」
ここで姉さんが考えたこととは……?
姉さんがまた子供が産めるようになること、他の誰かがお兄さんの子供を産むこと、それ以外の理由。
もう決まっていますね。
私は机をバンっと叩き指を突き付ける!
妹「そう、他の誰かにお兄さんの子供を産んでもらえばいい!!!」
俺「な、な、な、なんだってええええええええええええええええ!!!!!」
お兄さんがどこぞの青いとんがり頭のように驚く。
妹「姉さんがまた子供を産めるようになるのがベストですが、あくまですぐにできることではありません。それよりも他の女性にお兄さんの子供を産ませるほうが現実的です」
俺「そ、そんな…。そんなことをいったい誰に……」
誰? そんなの決まっているでしょう!
妹「……姉さんが今回、依頼したのは誰でしたか?」
俺「ああ!?」
妹「そう! 姉さんが依頼したのは…………私です!」
俺「な、な、な」
私は溜めて、指を勢いよく突き付けて叫ぶ!
妹「つまり! 今回姉さんの本当に相談したかったこととは! 私にお兄さんの子供を産んで欲しいということだったんですよ!!!」
俺「ぎゃあああああああああああああ!!!」
…………これで本来の依頼の内容がアキラカになった。
はずだったのに……。
俺「異議あり!!」
お、お兄さん!?
俺「確かに意味は通じるかもしれない。しかし! 妹ちゃんに幼馴染が依頼したからと言って本当に妹ちゃんに俺の子供を産んで欲しいということにはならない!」
妹「くっ」
言われてみると、確かにそうなってしまう。
俺「これだと妹ちゃんが言った誰でもわかることにはならない! そう、幼馴染以外の人に子供を産んで欲しいということにはならないんだよ!」
妹「ぐっ」
お兄さん…私の言ったことを逆手に取るとは…。
俺「幼馴染が他の女性に俺の子供を産んでもいいと思うはずがない!」
ああ、そうか。お兄さんはそう思っているんですね。
いいでしょう。その思い込み。壊してあげましょう……。
妹「……いいえ。姉さんはちゃんと誰でもわかるように証拠まで残しています」
俺「なんだって!?」
そう、証拠もあるのです。他ならぬ私にお兄さんの産んでもいいという証拠が。
それは……。
俺「そ、それならその証拠とやらを見せてもらおうか!」
その証拠とは?
- くらえっ! -
俺「手紙?」
妹「これは以前、魔王討伐の際、お兄さんへ送った手紙です」
俺「相変わらず内容がぶっとんでるが、今頃これに何かがあるのか?」
私は手紙をつんつんしながら言う。
妹「ここをよく見てください。ちゃんと書かれています。『娘を私の代わりにファ〇クしていいぞ。できないなら代わりに妹をフ〇ックしていいぞ』と」
俺「ああああ! だがっ! それは以前の手紙で状況が違う! 無効だ!」
妹「……確かに無効かもしれません。しかし、アキラカにわかることがあります」
俺「わかること?」
私は机をバンっと叩き指を突き付ける!
妹「姉さんが私ならお兄さんの子供を産んでも良いと思っていたということです!」
俺「ああああ!」
妹「さらに! お兄さんは状況が違うと言いましたが、実は姉さんにとっては同じなのです!」
俺「なんだって!?」
妹「よく考えてください。姉さんにとっては死ぬことと子供が産めない今の状況! 姉さんの”お兄さんの家族を増やす”という目的の前ではまったく同じなのです!」
俺「ぐぐっ!」
妹「だから! この手紙で! 姉さんが私にお兄さんの子供を産んで欲しいと依頼したということが証明されたのです!」
俺「バカなぁっっっっ! しっしかし! 君は! 妹ちゃんはそんなことが認められるというのか!?」
そう、この話には私の気持ちが考慮されていない。
私が断ればあっさりなくなってしまう話だ。
でももう覚悟は決めている。後は前に進むだけだ。
妹「…………問題はないのです」
俺「え?」
最後です! 私は机を叩き、溜めてからおもいっきり叫ぶ!
妹「だって私は昔から! お兄さんのことが好きだったんですから!!!」
俺「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
お兄さんは驚きのあまり口を大きく開けてひっくり返ってしまった。
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娘「それでは判決を言い渡します」
『結 婚』
姉さんが腹話術で遊んでいる。
じと目をしながら私は姉さんに問いかけた。
妹「これでよかったんですか? 姉さん」
幼「ああ、妹は見事私の期待に応えてくれた。信じてたよ」
妹「まったく、私が断ったらどうしてたんですか」
幼「そんなことはないと思っていたよ。だって知っていたからね」
そう、私は昔からお兄さんが好きだった。
しかし、姉さんがいたからその想いは封印し諦めることにしていたのだ。
だけど、今になってもお兄さんと比較してしまい、特定の人を好きになることができなかった。
まったくこの姉は質が悪い。
でも、まぁ、許すとしましょう。だって、お兄さんに想いを伝えられましたから。
幼「あ、でも正妻は私だから妹はその次ね」
妹「はいはい。わかってますよ。……さてと」
私は寝ている娘ちゃんを起こさないように子供用のベッドへ運ぶ。
そして、その後、ひっくり返っているお兄さんを姉さんと二人で片腕ずつ取って寝室へ引きずっていく。
お兄さんは途中で気が付く。
俺「あ、あれ? なんで? どこへ行くの?」
妹「寝室ですよ」
俺「ああ、もう寝るのか、ありがとう。もう自分で歩けるよ」
妹「何を言っているんですか? まだ結婚式の打ち合わせをしていないじゃないですか」
俺「え? でも寝室へ行くんじゃ?」
妹「だから3人とも納得のいくように結婚式の打ち合わせをするんですよ」
私と姉さんはとてもいい笑顔をお兄さんに向ける。
お兄さんは引きつった笑いを浮かべている。
寝室の扉が静かに閉じられた。
3人で結婚式の打ち合わせをした結果、お兄さんに快く納得をしてもらえた。
二人で頑張って説得した甲斐があったというものです。
お兄さんがひどく疲れた顔をしていた? いいえ私にはそんな風には見えませんでしたね。
これで娘ちゃんとずっと一緒にいられますね。
めでたしめでたし。
次回エピローグ
やっと解決しました!
うーん。なかなか思うようには話の展開が行かなかったですね。
果たして皆さんにとって説得力があったでしょうか。